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サイクル ロードレース コラム 2021年6月25日

プリモシュ・ログリッチ物語《栄光の欠片》| 再びスタートラインへ

ツール・ド・フランス by 宮本 あさか
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再びスタートラインへ

再びスタートラインへ

掴みかけた栄光は、わずかばかりの欠片を残してその男の手からこぼれ落ちたーー。あの衝撃的な敗戦の記憶を背負い、失った栄光を取り戻す戦いに再び挑む、プリモシュ・ログリッチという一人の男の物語。全6話。

最終話:再びスタートラインへ



決して悲劇の敗者のままではいなかった。ジュニア時代にはスキージャンプで団体世界王者にまで上り詰めながら、「自分は個人王者にはなれないのだ」と悟り、悩み、21歳で思い切って新しい世界に飛び込んだプリモシュ・ログリッチに、立ち止まっている暇などなかった。



リエージュ〜バストーニュ〜リエージを制覇したログリッチ「信じることを絶対に止めてはだめなんだ。最後の数メートルまで、最後の数センチまで、全力を尽くさなきゃならない」

リエージュ〜バストーニュ〜リエージを制覇したログリッチ「信じることを絶対に止めてはだめなんだ。最後の数メートルまで、最後の数センチまで、全力を尽くさなきゃならない」



敗北からわずか2週間後。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで、ログリッチは自身初めてのモニュメントタイトルを獲得した。



ツール・ド・フランス最終日前夜に逆転優勝をさらわれてからちょうど50日目に、ログリッチのもとに美しき栄光の日が訪れた。「頂点に立っていることが信じられないような気分だよ」

ツール・ド・フランス最終日前夜に逆転優勝をさらわれてからちょうど50日目に、ログリッチのもとに美しき栄光の日が訪れた。「頂点に立っていることが信じられないような気分だよ」



そこからブエルタ・ア・エスパーニャまで足を伸ばすと……やはり驚異的なチーム力を武器に、大会2連覇を果たした。年末にはUCIランキング年間1位と年間最優秀自転車選手賞ヴェロ・ドールに輝き、人々はその不屈の意思に、感嘆の声を贈った。



笑顔でブエルタ・ア・エスパーニャ優勝を喜ぶログリッチ

笑顔でブエルタ・ア・エスパーニャ優勝を喜ぶログリッチ



「今シーズンを成功させるためにたくさんの犠牲を払ってきたから、最後まで最高の結果を追い求めたかった。チーム一丸となって努力してきたんだ。僕らみんな敗北後に落ち込んでなんかいなかった」(ログリッチ、ヴェロドール受賞インタビューより)



今年のジロ・デ・イタリアで復活を果たした2019年ツール覇者エガン・ベルナル

今年のジロ・デ・イタリアで総合優勝。復活を果たした2019年ツール覇者エガン・ベルナル



昨ツールでログリッチに立ちはだかった(立ちはだかれなかった)ライバルたちもまた、それぞれに、新たな栄光へ向かって再スタートを切った。志半ばでフランスを離れたエガン・ベルナルは、今年のジロ・デ・イタリアで涙の初区間勝利とマリア・ローザを獲得。「ゲームへの復帰」を高らかに宣言した。今年はフランス一周をスキップし、秋のブエルタ・ア・エスパーニャで「3大ツール全制覇」を目指す。



2018年ツール覇者ゲラント・トーマス

2018年ツール覇者ゲラント・トーマス



昨ツール直前、イネオス・グレナディアーズのトリプルエースから外されたゲラント・トーマスは、この夏は元ジロ覇者リチャル・カラパス&テイオ・ゲイガンハート、さらには昨ツール総合3位リッチー・ポートと新たなカルテットを組む。



新天地で5勝クラブ入りを目指すクリス・フルーム

新天地で5勝クラブ入りを目指すクリス・フルーム



また2010年から過ごしてきた英国チームを離れたクリス・フルームは、イスラエル・スタートアップネーションの一員として、3年ぶりにツールに帰ってくる。



圧倒的な力を誇示し続けるポガチャル。今年もツール総合優勝の最有力候補だ。

圧倒的な力を誇示し続けるポガチャル。今年もツール総合優勝の最有力候補だ。



シャンゼリゼでの戴冠翌日に22歳になったタデイ・ポガチャルは、今年も伸びやかに才能の証明を繰り返している。出場したステージレース4戦中3戦で総合優勝を果たし(残り1つは総合3位)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュではあっさりモニュメントをつかみ取ってしまった。





ちなみに2021シーズン、開幕からツール前哨戦終了までの4ヶ月、ワールドツアー大会のステージレース全9大会の栄光は、ただ1つの例外を除いて、イネオス、ポガチャル、ログリッチの3者で独占してきた。ポガチャルは総合2勝。イネオス・グレナディアーズは異なる5人で5勝を得た。もちろんツールに乗り込むトーマス、ポート、カラパスも、それぞれに1勝ずつ。また1つの例外とはパリ〜ニースで、ログリッチが最終日の2度の落車で失ったが……やはり3週間後のバスク一周総合優勝で素早く失敗を成功体験で上書きしている。



息を呑むほど美しい夕暮れのシャンゼリゼは、誰を王者として迎え入れるのか。今年も世界中が注目する最高に熱く、最高にドラマチックな戦いが、幕を開ける。

息を呑むほど美しい夕暮れのシャンゼリゼは、誰を王者として迎え入れるのか。今年も世界中が注目する最高に熱く、最高にドラマチックな戦いが、幕を開ける。



6月26日、土曜日。フランスのブルターニュで今年10番目のワールドツアー大会が幕を明ける。ある者はマイヨ・ジョーヌを守るために、またある者はマイヨ・ジョーヌを取り戻すために、そしてログリッチはあの日失ったマイヨ・ジョーヌを追い求めて……ツール・ド・フランスのスタートラインに並ぶ。



(おわり)

文:宮本あさか

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宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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