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【ツール・デ・フランドル/プレビュー】記念すべき100回大会の主役となるのはベテラン勢か、勢いに乗る若手勢か!?
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか石畳の激坂に、春先の悪天候。黄色地に黒い獅子が描れたフランドル旗と、大量のビールを手に、沿道を埋め尽くす世界で一番熱狂的なファンたち。「十字架の道行」と呼ばれるほどの苦難を乗り越えて、栄光をつかめるのは真の強者だけ。
そんなフランドルの誇りが、2016年4月3日に、100回大会を迎える。J SPORTSではその記念すべき大会を生中継する。1913年にわずか37人のフランドル選手でひっそりと開催されたロンド・ヴァン・ヴラーンデレン、つまりツール・デ・フランドルは、21世紀の今では、自転車界の遺産のひとつに数えられるまでになった。5大モニュメントクラシックの中では末っ子で(最年長は1892年生まれのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ)、開催回数も一番少ない(最多は今年で114回目を迎えるパリ〜ルーベ)。ただし、第1次世界大戦で4年間の中断を余儀なくされた以外は、第2次世界大戦中も戦火に負けず走り続けた唯一のモニュメントでもある。つまり1919年から97年間、一度も休むことなく、ツール・デ・フランドルのプロトンは観客の心を振るわせ続けている。
100回の熱き戦いの歴史のうち、近年の10回以上で主人公を演じてきたのがトム・ボーネンであり、その最大のライバルのファビアン・カンチェラーラである。前者は生粋のフランドルっ子で、プロ入り初年度の2002年から、13年連続でフランドル一周を戦ってきた。優勝は3回。昨春は怪我のせいで、プロ人生で初めてロンドをTV観戦するはめになった。やはり怪我で昨季不在だった「スパルタクス」は、2003年からフランドル詣でに乗り出した。やはり優勝3回。2016年大会に向かう35歳の両チャンピオンは、きっと同じ目標を抱いているはずだ。それは記念すべき100回大会で自身4度目の優勝を果たし、1位タイから抜け出すこと(現在は3勝で6選手が並んでいる)。フランドル史上最強の男として、頂点に君臨すること。
しかし両者の現在の状況は、微妙に異なる。今年限りの引退を決めているカンチェラーラは、勝利への燃えるような意欲と、そのへんの若造には負けないほどの脚力をいまだに保っている。「ミニ・ロンド」と呼ばれるE3ハーレルベークでは、メカトラで遅れをとりながらも、恐るべき追走で4位に食い込んだ。ヘント〜ウェヴェルヘムでは苦手なスプリント勝負に持ち込まれ、結局は先頭集団最下位の4位に沈んだが……、「レース中の最も重要な瞬間には、常に前線で戦えた」とモニュメント本番に向けて納得の仕上がりである。
一方のボーネンにとっては、難しい春が続いている。所属チームのエティックス・クイックステップは、プロトン一のクラシックスペシャリスト揃いのはずなのだけれど、今季はまるで成績が伴わない。そのチームからは、例年のように、絶対的リーダーの座を任せてもらえなくなった。たとえばヘントのようなスプリンター向きレースでは、21歳の若きフェルナンド・ガビリアに優勝争いが託された。だからボーネンも、石畳の激坂で、慣れないアシスト作業を行った。そのせいか、勝者ペーター・サガンやカンチェラーラの加速に、反応することもできぬまま。さらにはチームマネージャーのルフェヴェルに、「ボーネンはもはや激坂をこなす力がない。幸いにもルーベには坂がない」と言われてしまう始末だ。
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