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海の見える激坂のてっぺんで、クリス・フルームが力強く右手を突き上げた。7月のフランスで取れなかった区間勝利を、8月末のスペインで勝ち取った。7日連続でマイヨ・ロホの表彰台に上がり、待望の休息日を、嬉しい赤いジャージで過ごすことになった。
「とても素晴らしい気分だ。大会1週目の終わりをマイヨ・ロホで迎えることが出来たし、あらゆる総合ライバルたちにかなりのタイム差をつけることができたからね」(フルーム、公式記者会見より)
なんともブエルタらしいコースが準備されていた。ステージカテゴリーは「平坦」。しかし「頂上フィニッシュ」という注意書きが添えられている。すなわち長い平地の果てに、全長4kmのとてつもない激坂が待っていた。スプリンター向きであるはずはなく、パンチャーにとっては少々上りが長すぎて、つまりは総合を争うヒルクライマーたちの戦場となるに違いなかった。それでも20kmほどの熾烈なアタック合戦を制して、10選手が前方へと飛び出していった。
メインプロトンの制御権を握ったのは、めずらしくチームスカイではなかった。キャノンデール・ドラパックプロサイクリングチームが隊列を組み上げると、厳しいタイム差コントロールに着手した。たいくつな平地パートでも、決して逃げ集団に3分以上の差を与えず、精力的に牽引を続けた。
黄緑色のジャージが前線を彩ったのは、悲しい理由があった。前夜、キャノンデールに所属する全選手に、チーム存続の危機が告げられた。来季からの協力が予定されていたスポンサーが、投資の中止を決めたせいだった。2018年以降も契約の残るすべての選手には、新たな移籍先を見つける自由が与えられた。今ジロで区間勝利を挙げたピエール・ローランは2018年末まで同チームと契約が残っていたし、7月のツールで総合2位に入ったリゴベルト・ウランは、ほんの2週間前に3年の契約更新にサインをしたばかりだというのに……。
「昨日の夜は寝付けなかった。選手だけではなく、チームのスタッフたちも、もしかしたら職を失うことになるのかもしれないと考えると……。今朝チームバスで、みんなの意見は一致した。僕らがすべきことは、今まで以上に団結して走ること。だから区間のスタート直後から、勝利を目指して戦った」(マイケル・ウッズ、フィニッシュ後インタビューより)
キャノンデールの奮闘のせいで、先頭集団は思うようにリードが奪えなかった。だから平坦ゾーンが終わると同時に、マルク・ソレルとトビアス・ルドビクソンが思い切って再アタックを打った。フィニッシュ手前42kmに聳え立つ2級峠で、逃げの仲間たちを捨てると、自らのチャンスを追い求めた。しかし、明日のない者たちの捨て身の行軍に、最後まで抵抗し続けることなど不可能だった。フィニッシュまで25kmで1分差、10kmで30秒差へと縮まり……残り6kmで、ついに逃げには終止符が打たれた。
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