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ビジョンに映し出される広島・野村祐輔の紹介
レギュラーシーズンも大詰め。この時期になると、選手の去就に関するニュースが出始めています。27日には野村祐輔が、今季限りでの現役引退を発表しました。
新井貴浩監督はレギュラーシーズン最終戦の登板を公言し、試合後には引退セレモニーが行われることが決まっています。リーグ3連覇の中心選手がまた1人、ユニフォームを脱ぐことになるわけですが、今回はプロ13年間でNPB記録も打ち立てた技巧派右腕の野球人生を振り返ってみましょう。
野村祐輔の名前が最初に脚光を浴びたのは広陵高校時代。小林誠司(巨人)とバッテリーを組み、3年春のセンバツでエースとしてベスト8進出に貢献し、迎えた夏の甲子園でした。準決勝で春夏連覇のかかった常葉学園菊川高校に勝利して迎えた決勝戦、相手は「がばい旋風」を巻き起こした公立高校の佐賀北高校。
7回を終了して4-0とリードし、広陵高校として初となる夏の甲子園優勝が目前に迫った8回、2本の安打と2つの四球で1点を返された後、逆転満塁本塁打を打たれて惜しくも準優勝に終わりました。
この試合では、押し出し四球の打席での審判の判定に対して、広陵高校の中井哲之監督が批判の発言をして、高野連から厳重注意を受ける出来事もあるなど、記憶に残る一戦となりました。
高校卒業後、進学した明治大学では1年秋に東京六大学リーグ史上5人目となるシーズン防御率0.00を記録して、最優秀防御率のタイトルを獲得するなど、エースとして活躍。4年秋には同史上7人目の通算30勝、300奪三振を達成しました。
東海大学の菅野智之(巨人)、東洋大学の藤岡貴裕(元千葉ロッテなど)とともに「大学ビッグ3」と呼ばれた2011年ドラフトでは1巡目指名でカープに入団。
ルーキーイヤーから一軍で先発ローテーションの一角を担い、27試合に登板して、9勝11敗と負け越しましたが、セ・リーグでは1966年の堀内恒夫(巨人)以来となる新人として防御率1点台(1.98)をマークして、平成生まれ初となる新人王に輝きました。
プロ2年目の2012年には12勝を挙げて自身初の2ケタ勝利を記録し、覚醒したのが2016年。前年のオフに前田健太のメジャー移籍が決まり、右のエースとして期待されたシーズンでした。
5月25日から7月22日まで、8試合登板で8連勝をマークするなど、キャリアハイの16勝を挙げて最多勝、さらに3敗のみと抜群の安定感で最高勝率(.842)と投手2冠に輝き、チームを25年ぶりのリーグ優勝の立役者となりました。
その後は2ケタ勝利こそありませんでしたが、抜群の制球力と安定感のある投球で先発ローテーションの一角として活躍。デビューから今季までの通算210試合は全て先発としての登板で、2021年にプロ初登板から、188試合連続先発登板のNPB新記録を樹立して以来、投げるたびに記録更新を続けていました。
近年は右鎖骨下静脈血栓除去術を受けるなど、故障にも悩まされて一軍での登板が減っていましたが、ファームでは若手投手にアドバイスをするなど、投手最年長としてチームに貢献していました。
入団時の野村謙二郎監督が同姓ということもあり「ノムスケ」という愛称で呼ばれるなど、ファンにも人気の高い選手だっただけに、35歳での引退は早過ぎると惜しむ声も多く聞かれます。
「カープで13年間プレーできたことを誇りに思います」と、球団を通じてコメントした『ミスター先発』の現役最後となる勇姿は、10月5日の東京ヤクルト戦。もちろん、先発として登板する右腕の投球を、しっかりとこの目に焼き付けておきましょう。
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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