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坂倉将吾
後半戦に入り、ようやく帰ってきた。新加入選手でもなく、2軍から昇格した若手でもない。前半戦の打率.203と苦しんだ、坂倉将吾の打撃だ。
7月26日ヤクルト戦の後半戦初戦を3安打猛打賞で好発進すると、2戦目の28日もマルチ安打。2戦連続マルチ安打は5月18、19日以来2度目だった。29日には1カ月ぶりの5号ソロを含む、今季初の3戦連続マルチ安打となった。
まだ後半戦は始まったばかりで3試合を消化しただけだ。時期尚早という声も聞かれるが、何より欲しかった“結果”が付いてきたことが大きい。
前半戦終盤は捉えた当たりが野手の正面を突くこともあった。感覚が戻って来ても、結果が付いて来ないと乗っていけない重さを感じていた。前半戦終盤、そう感じていた。
「(現状を変えるためには)結果じゃないですか。1試合複数安打とか。1日1本じゃ…」
21年にはリーグ2位の打率を残した実績のある打撃が今季ここまで振るわないのは、取り組んできた打撃改造がハマらなかったことが理由だった。
オフからキャンプを通して、投球の軌道にバットスイングを合わせる打撃を突き詰めてきた。開幕前まで感覚は良かったが、シーズンに入ってより意識が強くなったことがマイナスに作用した。
「やろうとしたことが染みつきすぎて良くない方向に行っていた。早くラインに乗せようと意識しすぎた。トップをつくってから一気に(バットを振り)出していかないといけなのが、(バットスイングが投球軌道に)なぞるようになっていた」。
新たな打法を習得しようとする意識の強さが、スイングの鋭さを軽減させた。強く振り切れずに凡打を重ねる日々。打席に向かうと、目に入る自身の打撃成績も気になった。
「ずっとどうしようと思っていた。打席に立ったら振るのが怖いし、振っても結果が出ない。見て行こうかなとか。イップスになりそうだった」
そんな中でも新井監督からはスタメンで起用され、打席を与えられた。「暗くやってもしょうがない」と、前を向くことだけは忘れなかった。
「自分が冒険すると決めて、冒険したのに結末がこうなってしまった。でも、やってきたことも、この先に生きると思う」
1軍に定着し始めた3、4年目の感覚を思い出しながら、思い切って打法を変えた。当時と今では積んだ経験も、身に付けた技術も違う。徐々に打撃の感覚が上がっていくのが分かった。
成績が振るわない中で監督推薦によって出場した球宴も大きなきっかけとなった。人見知りするタイプだが「侍(ジャパン)に選ばれたことで今年は前回よりもいろいろ話せる人が多くなりました。左バッターの人とたくさん話をさせてもらったし、収穫は多かった」と笑顔でチームに帰ってきた。セ・リーグで首位打者争いする巨人丸やパ・リーグで3冠王も狙えるソフトバンク近藤などそうそうたるスラッガー相手に“聞き魔”と化した。
7月20日の球宴2戦目では球宴57年ぶり、セ・リーグ初の満塁ホームランという、思わぬ記録もつくった。そして迎えた後半戦最初のカードで結果がついてきた。感覚だけでなく、もう数字も気にしない。「数字は落ちるところまで落ちたので、自分がどうバッティングしていくか。ここから上げられる数字は限度があるので、数字よりも来年、再来年、自分がどういうバッターで、どういうバッティングをしないといけないのか。そういうものを探したい」。
首脳陣が前半戦、坂倉に打席を与えてきたのは、後半戦や来季以降への投資の意味合いが強かった。思ったよりも時間と打席数を要したが、苦しみ、悩み、そしてはい上がった。坂倉にとって、本当の戦いはここからだ。
文:前原淳
前原淳
カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun
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