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数年に渡り、メジャーを目指してきた右腕にとって、心躍るマウンドになるはずだった。公式戦ではないオープン戦だからこそ、楽しめたかもしれない。しかし、登板後は慌ただしく、バタバタしたな……という記憶が大半を占めた。メッツ、千賀滉大投手(30)が対外試合初先発となる3月5日(日本時間6日)、カージナルス戦に登板したときのことだ。
「うわー、と(笑)。投げ終わった後にそういえばあの打者、すごいんだなっていう感じだった。打者との対戦を楽しむとか、球種を自分で考えながら組み立てる、とかそういうことじゃなくて。とにかくそこだけで焦っちゃって」
「そこ」とは、今季から適応されるピッチクロックのこと。走者なしで15秒、走者ありで20秒。捕手からボールを受け取ってから、カウントダウンが始まり制限時間以内に投球モーションに入らなければいけない。
3番にはメジャー通算299本塁打のノーラン・アレナド内野手(31)が入り、4番には昨季のナ・リーグMVP、ポール・ゴールドシュミット内野手(35)だ。
投球前は「すごいバッター、名だたる打者も3、4番にいましたし、すごい楽しみにマウンドに上がった。めちゃくちゃ(対戦を)楽しみたかった」と心待ちにしていた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の米国代表でも主軸を担う右の強打者。メジャーの一線級で戦うスラッガーとの対決に童心にかえって、夢中になれる心が千賀の原動力にもなっている。
WBCの前回大会、2017年の準決勝では、2番手としてマウンドにあがった。当時の心境は「今まで沸いたことのない感情が出てきた。すごく興奮しました。野球って、すごいエンジョイしてやるものだ、って再確認できた」。メジャーを強く志すきっかけとなり、野球人生のターニングポイントになった瞬間だった。並み居るツワモノがそろう厳しい世界に飛び込む覚悟も固めた。
次回のオープン戦登板は、予定通りなら3月11日(日本時間12日)、敵地でのアストロズ戦だ。昨季のワールドシリーズ制覇チーム。WBCで一時離脱する選手もいるが、千賀の力試しとなり、純粋に強打者との対決を楽しむ時間になるはずだ。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツには2007年4月入社。阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。
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