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大谷翔平
いよいよMLB2022年シーズンが幕を開ける。長期にわたる労使の睨み合いで、一時は162試合開催が絶望視されていたことを思うと感に堪えない。一方、新しい労使協定により、運営フォーマットやルールは少なからず変わる。主なものをまとめてみた。
プレーオフ拡大
これまで各リーグ2枠だったワイルドカードが3枠になり、ポストシーズン進出は各リーグ5球団から6球団に増える。地区優勝3球団のうち、勝率上位2球団はファーストステージは免除される。残りの1球団とワイルドカード3球団の計4球団が3試合制(2勝で勝ち抜け)で戦い、勝ち残った2球団がシードの地区優勝2球団と3戦先勝の地区シリーズで相まみえる。そこから先は、4戦先勝のリーグ優勝決定シリーズ、そしてワールドシリーズだ。
これにより、全30球団の40%に当たる12球団がポストシーズンに進出できることになる。ありがたみは少々減るが、これでも出場率は北米4大スポーツの中ではもっとも低い。また、従来より多くの球団にチャンスが生まれることにより、夏場のフラッグディールで、高給のベテラン選手をあっさり放出する「白旗」球団が減る効果も期待されている。
過密日程
今季の開幕予定は当初現地3月31日だったが、長引いた労使対立により4月7日となった。一方、本来の1球団162試合が維持されるため、閉幕は3日ほど後ろ倒しされるも従来以上に過密なスケジュールとなった。その結果、30ものダブルヘッダーが現時点で計画されているだけでなく、他にもルール上の変更が発生している。
今季も延長戦はタイブレーク
過密日程&ダブルヘッダーで増す選手への負担軽減策ということで、今季も延長戦に入ると、「ゴーストランナー」(幽霊走者の意、言い得て妙だ )を置いて無死二塁から攻撃を始めることになる。あくまで過密日程への対策が建前なので今季限りということになっているが、これで3年連続の採用だ。来季以降も存続する可能性はあるのではないか。選手も観る方も人間。一度楽な思い?をすると後戻りできないと思う。それにメジャーの場合、判で押したように「まず送りバントから」とならないので、見ていてスリルもある。純粋主義者は眉をひそめるが、個人的には割とこのルールを支持している。
4月は登録枠2人増で28人
過密日程というか、通常より短いスプリングトレーニング期間で開幕することへの対応がこれだ。5月1日までは登録枠が2人分増え28人となる。十分な調整期間を選手が確保できていない(かもしれない)ことや、例年であればやや緩めの編成となっている4月の日程(春先は地域によっては荒天が多い)が、今季は結構ギッシリのためだ。フィリーズなどは、開幕からいきなり13連戦を戦う。
ナ・リーグもDH制採用
ある意味では、今季からのルールチェンジでもっとも大きなものがこれだ。随分前からナ・リーグでのDH制(ユニバーサルDHという、「普遍的な」DHという意味)は議論されて来たが、遂に正式に導入された。世界の最高峰のMLBで投手が打席に入ることが消えることは、将来、NPBのセ・リーグにも影響を与える可能性は高いのではないか。
大谷翔平ルール
昨年の球宴同様に、打席に入る投手は降板後もDHとして出場を続けることができるというものだ。正に「ショーヘイ・ルール」。ルールまで変えさせた大谷翔平の実力と人気には脱帽だが、特定の選手の存在を念頭に、その選手と所属球団の利益に繋がるルール改正が決まったことには驚きを禁じ得ない。
審判によるリプレーアナウンス
ビデオ検証の対象となったプレーに関しては、審判が場内放送で観客に説明する。ある意味当然で、今までなかったのが不思議。
使用球の加湿器保管は全球場で
これまでは、高地にあり空気が薄く打球がよく飛ぶクアーズ・フィールドなど、一部の球場のみで行われていたが、これが全球場に拡大される。使用球の飛びやすさという競技環境をなるべく合わせる、という意味では良いことだと思う。フロリダなど暑く湿度の高い地域の球場では、逆に除湿が行われる。
ヘルメットへの広告解禁
今年のポストシーズンから、まずはヘルメットに広告が入るという。来季からはユニフォームへ、サプライヤーのナイキのロゴ(2020年から)以外にも広告パッチが登場するようだ。総論としては、これも時代の流れと許容するしかないと思うが、ヤンキースやドジャースなどの伝統球団のユニに広告がこれ以上入ることは、冒涜にすら思えてしまう。50年後には、レーサーのスーツのように、「びっしりスポンサー広告が入っていないと格好悪いんだよね」となっているのだろう。
電子機器でのサイン伝達
PitchComと呼ばれる電子デバイスを使って捕手から投手にサインを送ることが可能となる(義務ではない)。投手は音声(言語)で信号を受けるという。主眼はサイン盗み対策のようだが、簡潔なサイン確認による投球インターバルの短縮も期待したい。もっともこれでサイン盗みが根絶できるかは疑問。ヨコシマな輩は今度は盗聴やハッキングに精を出す?
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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