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野球 コラム 2021年10月8日

メジャー最多の107勝も、スターに乏しく「中の上」のベテラン中心、緩〜い強豪ジャイアンツに注目せよ!

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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ブランドン・ベルト

ブランドン・ベルト

MLBポストシーズンが始まった。これから約1ケ月、睡眠不足の日々を送ることになる。
今回も見所は多々あるが、個人的にはサンフランシスコ・ジャイアンツの動向に注目している。

今季開幕前ナ・リーグ西地区は、2020年ワールドチャンピオンのドジャースと、オフにダルビッシュ有獲得をはじめ積極補強を展開したパドレスの一騎打ちになると見られていた。一方ジャイアンツは、昨季まで4年連続の負け越しで、下馬評は必ずしも芳しくなかった。ところがフタを開けてみると、戦力的には遥かに優るドジャースを制し、地区優勝を果たした。しかも、全球団中トップで球団史上最多の107勝も挙げている(ドジャースは106勝)。

ジャイアンツの強みは、ホームランパワーと強力なブルペンだ。241本塁打はリーグ最多で、チーム内最多こそブランドン・ベルトの「わずか」29本だが(残念ながら彼は左手親指の骨折でプレーオフには出場できない)、10人が2桁本塁打を放っており、打線のどこからでも一発が出る。また、リリーフ陣は防御率、WHIPとも全球団トップだ。

しかし、それでも絶対的な強豪というイメージはやや希薄だ。このことは、MVPやサイ・ヤング賞受賞者がずらりと並ぶスター集団ドジャースとの対比において興味深い。今季のジャイアンツのロースター構成は、「中の上」クラスのベテラン中心で、ビッグネームは乏しい。野手レギュラークラスの平均年齢は球界最高の30.6歳で、投手陣も29.8歳でメジャー全体で5番目に高かった。

公式戦での打線の中心には、バスター・ポージー(34歳)、ブランドン・クロフォード(34歳)、そして前述のベルト(33歳)と、ジャイアンツ在籍10年超のベテランが居座っていた。ジャイアンツは、2010、12年、14年と隔年でワールドチャンピオンに輝いたが(本来、5年間で3度世界一というと立派な黄金時代だが、世界一の谷間の11年と13年はポストシーズン進出を逃しており、13年に至っては負け越しというなんとも妙な緩〜い強豪ぶりだった)、ポージーは3度の世界一の全て、2人のブランドンは、12年、14のワールドシリーズ制覇に貢献した。

もっとも、この3人のうち、ポージーは新人王(2010年)、首位打者&MVP(2012年)など輝かしいキャリアを誇る将来の殿堂入り候補者だが、今季は打棒でも貢献しているものの基本的には守備の人(遊撃手)のクロフォードと、強打が求められる一塁手ながら昨季まで20本塁打以上が一度もなかった中距離打者のベルトは、傑出したスターと言えるほどの存在ではない。「なんとかレギュラー」という位置付けで2010年代を生き抜いて、今季は9年ぶりの地区優勝の立役者となったのだ。このことは、選手の入れ替わりが世代交代や移籍の両方で激しいメジャーリーグにおいて、稀有な例と言えるだろう。

ポージー、クロフォード、ベルトは今季終了後FAとなる(追記:クロフォードは8月にジャイアンツと2年の契約延長に合意した)。現地8日から始まるディビジョンシリーズは、ワイルドカードゲームで劇的なサヨナラ勝ちでカージナルスを下した宿敵ドジャースとのマッチアップとなる。その結果がどうなるにせよ、このポストシーズンは、ジャイアンツにとって黄金期から長期低迷まであった、この10数年のひとつの区切りとなるはずだ。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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