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大谷は二刀流の元祖であるルースと比較されることが多い。ルースは1915年から17年の3年間に通算65勝も挙げているが、基本的にこの頃の本職は投手で、時折打者としても出場した程度だ。本格的に投打両方で出場し始めたのは18年で、投手として13勝7敗の傍ら11本塁打で本塁打王になっている(まだ、世は「飛ばないボール」の時代だった)。そして、翌年は当時としては驚異的な29本で本塁打王に輝きながら、9勝(5敗)を挙げている。
しかし、ESPN のデビッド・ショーンフィールド記者も指摘しているが、その2年間に関しても、18年は開幕を投手として迎え、打棒好調なため5月からは一塁手や外野手での起用が多くなり先発登板は減少。8月に再び投手に専念(この年は第一次大戦のため、9月頭にはシーズンが終わっている)という変則起用だった。
翌19年は投手での起用は基本的にシーズン前半戦のみだった、と言って良い。当時は、先発すると基本は完投したため、年間の投球回数と勝利数や敗戦数が現代の基準からすると多いためわかりにくいが、シーズンを二刀流として全うしたことはない、とも言えるのだ。そうなると今季の大谷が二刀流のまま、故障欠場なく閉幕を迎えることになると、空前にして絶後だ(ルースの時代にはなかったDH制の恩恵を享受している点は否定できないが)。
この秋、われわれは歴史の証人となる可能性が高い。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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