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野球 コラム 2021年4月30日

ここまで好投も早い回でのKOも・・・有原航平への期待と不安

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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有原航平

有原航平

開幕から1ヶ月が経過した。メジャー1年目の有原航平(レンジャーズ)のここまでの投球は、評価が分かれるところだ。

全て先発での5登板で、2勝2敗&防御率4.03は及第点とも言える。しかし、前回登板の現地25日敵地シカゴでのホワイトソックス戦では、今季最短の2回KO。70球を投げ被安打6で5失点だった。この日シカゴは気温6度と寒く、それが影響を与えた可能性も否定できない。全ての球種で、球速が本来のレベルに達していなかったからだ。しかし、レンジャーズの地元紙『ダラス・モーニングニューズ』は、「フォームのクセから球種を読まれていた可能性がある」とも指摘していた。乱調の原因はこちらにあったのかもしれない。

実はそれ以上に心配なデータがある。

有原のここまで5登板での被打球の指標は、軒並みメジャーワーストクラスなのだ。打球初速の時速93.9マイルはワースト3位、長打になりやすい角度&初速の打球比率を示すバレル率12.9%が同7位、ハードヒット率50.0%が同5位(現地4月28日現在で、投球回数20以上)なのだ。25日のホワイトソックス戦を除く最初の4登板では、3度5イニングス以上を投げ防御率は2.21で、運・不運に左右されやすい要素を廃して計算する擬似防御率のFIPも十分合格点の3.05と一見好投していたが、内容は決して楽観視できるものではないとも言える。

期待を持たせてくれるデータもある。

それは彼の球種の豊富さだ。データベースサイトの総本山とも言える『fangraphs』は、有原の4度目の先発となる19日のエンジェルス戦後に、その初回に7つの球種を投じたことを驚きとともに報じている。

その7つの球種とは、投球頻度の高い順に挙げると、フォーシームファストボール、スライダー、カッター、シンカー、チェンジアップ、スプリッター、そしてカーブボールだ。

同サイトによると、昨年同一イニングに7つ以上の球種を投げたのは、メジャー全体でもダルビッシュ有(当時カブス)のみだ。また、高度な解析技術の導入で球種判断がデータベース化された2008年以降でも、同様なケースはのべ909回しかなかったという。同年以降、メジャーの累積投球回数は軽く50万回を超えているはずであり、いかにレアなことだったか分かる。

7つの球種は極端だとしても、メジャーには多くの球種を操る投手は少なくない。しかし、彼らの多くはあくまでメインの球種は3〜4であり、それ以外は「見せ球」だ。しかし、有原のレパートリーの広さは、そのほとんどがしっかりモノにされており、特定の球種に過度に頼ってはいないことに特徴がある。

冒頭触れた、フォームで球種を読まれていた可能性は否定できない。各球団ともフロントオフィスにデータや映像解析チームを持っている。新戦力はすぐ徹底的に研究され、丸裸にされてしまう。

この先有原が、ローテーションを守って行けるか、それとも被打球データが示す通り、登板を重ねていくとともに馬脚を露わすのかどうかは分からない。しかし、レパートリーの豊富さとその全てが見せ球ではなく有効な武器であるという事実には、望みを託せると思う。お互い対戦相手の研究合戦であるメジャーでも、無数の投球パターンの組み合わせを駆使していけば、この生き馬の目を抜くような競争社会を生き抜いて行けるのではないか。そう期待したいところだ。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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