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逆に言えば、オフが終わりオープン戦の時期を経て公式戦が始まってからは、「ここまで来たら、ドラフトが終わるのを待つしかない」状況だった。そして、そこまで指名権の喪失を各球団が嫌ったのも、近年編成の考え方が大きく変わり、ドラフトで有望な若者を獲得し傘下のマイナー組織でしっかり育成することの重要性が再認識されているからだ。
メジャーでは、原則として昇格から3年間は年俸調停権を得らず、選手はその間メジャー最低年俸を甘受しなければならない。それ以降は、選手は調停権を背景に大幅昇給を獲得することも可能だが、しょせん1対1の交渉だ。複数の球団が獲得競争を展開するFA市場ほどには条件は跳ね上がらない。本格的な大型契約を手にするには、FA権を得るまでの6年を経ねばならない。ここ10数年FA相場が高騰したため、安く選手を使える6年間の価値が相対的に上昇したとも言える。
キンブレルとカイケルがここまで待たねばならなかった本当の理由は、彼らが自らの商品価値を過大評価していたことかもしれないし、代理人の強欲かもしれない。いや、各球団が渋ちん過ぎた可能性もある。
そもそも、球界のシステムが悪いのかもしれない。ドラフト指名権とセットになっているクオリファイングオファー制度に問題があるのかもしれないし、プロスペクトなるものの価値が過大評価されているのかもしれない。そうなると、ドラフト指名選手との契約条件にスロットというある種のキャップが被せられていることも、育成重視の温床?として議論が必要かもしれない。突き詰めていくと根は深い。
この中のどれが決定要因かは定かではないし、ひょっとすると全部が当てはまるのかもしれない。しかし、これだけは言える。メジャーリーグの魅力は、世界中からトッププレーヤーが集いしのぎを削る舞台であることで、現時点ではキンブレルもカイケルもその魅力を構成するスーパースターなのだ。そんな2人がケガをしている訳でもないのに、2019年シーズンのほぼ半分を欠場した。これは大きな損失で、われわれファンは最高の選手達のプレーを見届ける権利の一部を奪われたのだ。これはとても不幸なことだった。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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