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野球 コラム 2019年1月18日

メジャーの流儀に近づく、巨人のFA「人的補償」≒トレード

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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ストーブリーグという言葉は、日本プロ野球では死語になっていると思う。

日本語のウィキペディアの記述も「ストーブリーグ (hot stove league) とはプロスポーツ選手の契約更改や移籍の動きなどの話題のことである」と短い。

1月になってもブライス・ハーパー外野手やマニー・マチャド内野手といった大物FA選手の行方がいろんな形で話題になるメジャーリーグとは随分、違う。

ただし、今オフはちょっと面白かった。

それは巨人が2人のフリーエージェント(FA)、前広島の丸佳浩外野手と前西武の炭谷銀仁朗捕手を獲得し、その「人的補償」で長野久義外野手と内海哲也投手の2人のベテランを放出したからだ。

元選手会長を務めた生え抜き選手を2人も放出したことで、SNS上では巨人の編成部門に対する批判が飛び交った。

そういうチームの功労者を手放すのではなく、ドラフト上位指名権を「人的補償」としているメジャーリーグに倣うべしという意見があるのは理解できる。

だが、若手選手が台頭している球団が中堅やベテラン選手を選別し、その結果、他球団への移籍が決まるルールは、野球界全体を考えれば、そんなに悪いことではないと思う。

FA選手を失った球団が移籍先の球団から「人的補償」や「金銭的補償」を受けるというルールは、純然たるFAとは違う。構造的にはFAと言うより「トレード」に近いのだが、こういう移籍が各球団で頻繁に行われるようになれば、球界全体がもっと活性化し、ストーブリーグという言葉も復活するのではないかと思う。

今回の「人的補償」で興味深かったのは、長野も内海もすでにFA権を持っていることだった。つまり、2人揃って今季終了後にFAとなる可能性もあるのだ。

FAで放出した選手の「人的補償」で獲得した選手が、たった1年でFAで他球団に移籍する―。

その構造は(今回に限っては)メジャーリーグの「トレード」にある背景と少し似ている。

たとえば2017年、ドジャースは7月末のノンウェイバー・トレード期限にダルビッシュ有投手(当時レンジャーズ)を獲得している(交換要員はマイナー選手3人だった)。それは同投手が半年後にFAになるという前提で行われた。

当時のドジャースにとって、ダルビッシュはチームの優勝を確実にするために必要不可欠な選手であり、たとえ「半年のレンタル」でもOKだった。そして、彼らにはそれを可能にする「若手選手=交換要員のストック」があったわけだ。

当時のレンジャーズにとっては、優勝の可能性がないのに半年後にFAになるダルビッシュを「トレード市場」に出して、「若手選手のストック」のために他球団から少しでも多くの有望株を獲得したかった。

有力選手を獲得する側と、交換要員をもらい受ける側の違いこそあるが、チーム編成の「先を読む」という意味でこういうトレードがもっと頻繁に行われてもいい。

巨人にとって、丸と炭谷は優勝を狙うために必要な有力選手だった。

広島にとってはどうか。

長野は2009年のドラフト1位で巨人に入団。新人王、首位打者、最多安打のタイトルを獲得するなど攻守に渡って中心選手として活躍した。昨季は116試合に出場し、打率2割9分、13本塁打、52打点の成績を残しているから、広島にとっては「戦力補充」に等しい。

西武にとってはどうか。

内海は2003年に自由獲得枠で巨人に入団。プロ15年で通算324試合に登板、133勝101敗、防御率3.21の成績を残している。昨年は15試合の登板に留まり、5勝5敗、防御率4.17と奮わなかったが、同じ先発左腕の菊池雄星投手がマリナーズに移籍した今、健康でありさえすれば活躍する場は多いのではないか。

広島と西武にとっては、今季終了後に長野と内海がFAになってチームを去る可能性もあるが、そうなれば今度は逆の立場で「人的補償」を得られる可能性があるので、たとえ1年でチームを去られてもメリットはあるわけだ。

もしも長野や内海が今季終了後にFAとなって他球団に移籍すれば、わずか2年のスパンの中で選手が目まぐるしく移籍することになる。「生え抜き」という言葉が重い日本プロ野球では歓迎されない事態かも知れないが、これだけSNS上で「球団愛」だの何だと議論されていることからも分かるように、見ている方は単純に興味深い。

そう、「興味深い」こそは、ストーブリーグの本質である。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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