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野球 コラム 2018年10月11日

全米が望むドジャース対レッドソックス戦の阻止を狙うアストロズとブルワーズ

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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シーズン中盤、高額契約を結んでプレーオフを中継するアメリカのテレビ局は、こんな未来図を描いていたかも知れない。

ヤンキースとレッドソックスがア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)を戦う。

ドジャースとカブスが勝ち抜いてナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)を戦う。

もちろん、それは4チームが全米屈指の人気球団だからだ。

そうなれば両リーグの優勝決定シリーズから視聴率は上がり、その流れに乗ってワールドシリーズの注目度も上がる―。

そう思っていた人たちには申し訳ないが、その未来図は書き換えられた。

まず、レッドソックスが球団史上最多のシーズン108勝をしたお陰で、ワイルドカード・ゲームを勝ち上がったヤンキースと、いきなりア・リーグ地区シリーズで対決してしまった。

そしてナ・リーグでは、ブルワーズがタイブレーカー=163試合目の公式戦でカブスを倒してナ・リーグ中地区の王者になったばかりか、翌日に行われたワイルドカード・ゲームで、カブスがロッキーズに敗れてしまった。

人気4チームの半分が敗退し、ALCSはアストロズ対レッドソックス。そしてNLCSはブルワーズ対ドジャースの組み合わせになった。

こうなると中継テレビ局の希望は一つ。残る人気チームのレッドソックスとドジャースが勝ち上がり、ワールドシリーズで対決することだ。

そういう状況を知ってか、昨季のワールドシリーズ王者アストロズのブレグマン内野手は、地区シリーズでインディアンスをスウィープした直後、地元テレビのインタビューに応え、こう言っている。

「今日、デーゲームをやったお陰で少し日焼けしてしまったのはハッピーなことじゃない。プライムタイムでプレーするのが楽しみだ!」

プライムタイムとは、日本で言う「ゴールデンタイム」である。9月9日に行われた地区シリーズのテレビ・スケジュールはデーゲームでインディアンス対アストロズ、ナイトゲームでヤンキース対レッドソックスだった。

ブレグマンの「日焼けしちゃった」はもちろん冗談だが、「プライムタイム」の件は大まじめだったような気がする。

ワールドシリーズ連覇を狙う強豪なのに、昨季の地区シリーズで倒したレッドソックスや、優勝決定シリーズで打ち負かしたワイルドカードのヤンキースより扱いが下なのは、単にアストロズが全米レベルではそれほど人気がないからだ。

たとえば元ロッキーズGMで現テレビ解説者のオダウド氏などは、何の悪気もなくMLBネットワークの番組中にこう言っている。

「球団の歴史や市場の大きさを考えれば、アストロズがいくら勝ち続けても、ヤンキースやレッドソックスのような人気球団には絶対になれないのですよ」

そういう不公平な状況を充分に理解した上で、ブレグマンは前出のコメントを残したのではないかと思う。そして、きっとそう考えている彼だけではなく、アストロズに関わっている人たちすべての総意ではないかと思う。

だから、アストロズは勝ち続けるしかない。

言うまでもないことだが、レッドソックスの球団史上最多のシーズン108勝というのは、プレーオフを戦う上で何の意味も持たない。

先発投手陣、救援投手陣、打線のどれをとっても、アストロズの方がレッドソックスより上に感じるし、メディアの多くもアストロズを倒すのは簡単ではないと感じている。そう、ア・リーグはアストロズが中継局の思惑を壊す可能性大である。

ナ・リーグはどうか。

頼りになる先発投手が4人(カーショウ、ヒル、柳の左腕トリオとビューラー)もいるドジャースと違って、ブルワーズにはフルタイムの先発投手自体が2人(チャシンと左腕ゴンザレス)しかいない。だから、救援投手を先発に立てて、クローザー経験者(クネベル)を終盤のピンチではなく、試合が動く中盤に起用する特殊な継投策で地区シリーズを勝ち抜いた。

打線は今夏のトレード期限の目玉選手だった元オリオールズのマチャド遊撃手やターナー三塁手、ベリンジャーとプイーグの両外野手らが揃うドジャースの方が質量ともに上に思える。だから、ナ・リーグ最優秀選手賞の有力候補イエリッチ外野手や攻守の要ケイン外野手、地区シリーズで本塁打を打ったアギラ一塁手、地区シリーズで5安打2打点と「ラッキーボーイ」的な活躍をした38歳のクラッツ捕手らが軒並み活躍して、ロッキーズを打ち負かした。

リーグ優勝決定シリーズに進んだ4チームで、もっとも「大穴」的な存在がブルワーズだと言われている。それは今季の公式戦で一度も全米テレビ中継がなかったことからも分かるように、彼らが全米レベルの人気球団ではないからだ。もしもカブスが勝ち上がっていれば「大穴」なんて思われてないはずで、そのカブスを倒したブルワーズが「格下」なんてイメージは偏見に過ぎない。

それを覆す方法は、たった一つ。

NLCSであろうが、ワールドシリーズであろうが、ブルワーズはアストロズ同様、勝って、勝って、勝ちまくるしかないのである。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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