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とにかく低めへボールを集める吉田一将と、高速の速球&変化球を操る山本由伸がたすきをつなぎ、必殺のフォークで打者を撫で切る増井浩俊が試合を締める。このリレーが盤石だった時期に、ふと考えた。
「3人の継投で1試合をまかなえないだろうか」。
仮に3人が今季のパフォーマンスを1年間維持しながら3イニングずつを消化して、1試合を投げ抜き続けると、防御率2.60の数字が残る。つまりは、リーグの最優秀防御率を争えるクラスの投手が1人、加わる計算が立つ。
そして、この起用を先発ローテーションの5、6番手の位置にあてがえば、どうなるだろうか。当然だが、以下のように、ほとんどのチームが先発4番手まで/5番手以降の防御率に隔たりがある。
◆先発4番手までの防御率/5番手以降の防御率
・ライオンズ:3.79/5.46
・ホークス:4.27/3.95
・ファイターズ:3.77/4.70
・マリーンズ:3.63/4.14
・バファローズ:3.61/4.35
・イーグルス:3.51/4.08
あくまで今季のパ・リーグに限った話ではあるが、軒並み先発投手が平均して4点を失っているところに、1試合を投げて3点取られない戦術をぶつければ、チームはここで多くの貯金が望める。
この思いつき、着想を得たのは、充実と言えない戦力ながら激戦区でワイルドカード争いに加わっているMLBのレイズの見せた実験だ。
5月15日に救援登板したクローザーのセルジオ・ロモは、中3日を空けて19日は先発として1イニング、20日には同じくまっさらなマウンドに立ち2イニングスをこなしている(その直後は4日空けて25日にも先発した)。
レイズの同地区にはシーズン前の大型補強に成功し、今季100勝を優に超える勢いで勝ち続けているレッドソックスとヤンキースがいる。
この采配の理由を相手打線との兼ね合いと説明したケビン・キャッシュ監督ではあるが、正攻法だけではまるで勝負にならないと悟り、新しい投手起用の形を示すことで白星の上積みを図ったのではないだろうか。
「勝ち試合を拾う」より「勝ち試合を増やす」ことに注力する必要性は、現在のバファローズに感じる。
勝ちパターンにはまる投手を全員、先発ローテーションに組み込んでは「他の先発投手が登板時に安心できない」との指摘を受けそうだが、ブルペンには黒木優太や近藤大亮ら、若くて勢いのある投手がいると答えたい。
彼らにクローザーやセットアッパーが務まらない理由こそ見当たらないし、増した責任が成長を促す期待値込みで、チーム力の底上げも図れる。
「(基本的に)1イニング限定の起用だから安定感のあるピッチングが続けられる」ともツッコミが入りそうだ。
確かに救援投手は「短いイニングだから全力投球ができる」のであって、3イニングを任されるとなると、今のピッチングが継続できる保証はない。役割が変われば調整法から配球の組み立て、疲労の種類までも影響を受ける可能性がある。
だが、吉田一はJR東日本時代に先発で名を上げ、山本はプロ1年目の昨季に一軍と二軍で合計12先発した。荒療治だったとはいえ、増井も2016年にシーズン途中で先発にまわり、ファイターズのリーグ優勝へ貢献している。
この3投手には、一般的なセオリーを跳ね返せる柔軟性を持ち合わせていると思うのは、素人考えに過ぎないだろうか。そして、この運用はリスクマネジメントの意味も兼ねている。
今季のバファローズの先発ローテーションを見ていても、やはり調子が良くない選手や故障者はプロ野球に付き物だ。
調子の上がらない投手がブルペンへまわることになるが、今季すでに救援登板を経験したディクソンならロングリリーフもこなせそうだし、球威が武器の山岡泰輔が試合途中からマウンドに上がる姿も魅力に感じる。
伝統的に斬新なアイデアで周りをアッと言わせてきた球団だけに、つい思い切った試みに期待したくなってしまうのだが、いかがだろう。
藤原 彬
アルバイト時代を含めて10年余り野球専門誌の制作に携わり、2016年にFAとなったさすらいのスポーツウォッチャー。「二兎を追う」を信条に、編集、執筆、写真、発信、校閲をこなす5ツール・プレーヤーを目指して勉強中。食にうるさい関西人だが、行く先々で「あんまり面白くないね」と言われる。同い年のレブロン・ジェームズは誇り。
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