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全国高等学校総合体育大会(通称:インターハイ)のバドミントン競技大会は13日に最終日を迎え、女子個人戦のシングルスは久湊菜々(岡崎城西高・3年)が優勝、ダブルスは 明地陽菜/田口真彩(柳井商工高・2年/1年)が優勝した。なお、10日まで行われていた女子団体は、柳井商工(山口)が初優勝を飾っている。
久湊菜々(岡崎城西高・3年)
最終日に行われた準決勝、決勝の連戦で4強のサバイバルマッチを制したのは、3月の全国高校選抜大会で3位の久湊だった。準決勝から攻撃的なプレーを貫徹。上から強気なショットをたたき込み、今大会全6試合をストレート勝ちというパーフェクトな内容で栄冠にたどり着いた。しかし、目標だった日本一に輝いたにもかかわらず、決勝戦でマッチポイントを制した瞬間の彼女は、歓喜を爆発させるでもなく、うれし涙を流すでもなく、フッと笑顔を見せるだけだった。試合直後のインタビューでも「嬉しいけど、実感がないです。相手が疲れていたからという部分もあると思う」と冷静。表彰を終えた後で話を聞いても「ああ、優勝したなとは思うんですけど、実力に見合う結果ではないと自分では思っています。結果に見合う実力をこれから付けていきたいです」と変わらなかった。
組み合わせが、影響していた。久湊が準決勝で破った明地は、同日、先にダブルスの準決勝を戦っていたため、体力面では久湊に分があった。また、もう一方の準決勝は、舛木さくら(作新学院高・3年)が春の全国高校選抜優勝者の水津愛美(柳井商工・3年)を破ったが、ファイナルゲームにもつれる激戦。準決勝をストレートで勝った久湊が、決勝戦で相手のミスによって点数を重ねていた部分があるのは、事実だ。試合の終盤、舛木が集中力を発揮して力強いクリアと巧みなドロップで対抗した場面を、久湊は「それまで、相手のミスで上手く行き過ぎていました。私がマッチポイントを取ってから、最後、相手が頑張るじゃないですか。それで彼女が出し切ったプレーに対応できませんでした。みんなが自分のプレーを出せていなくて、私は自分の力を出せたかなと思います」と振り返り、対戦相手には見せられなかった力があるという見解を崩さなかった。
だが、久湊だけがノープレッシャーだったわけではない。「初戦は向かって来られるような感じだったし、気持ちで負けないように気を付けていた」と明かした。東京五輪でメダル有力候補だった日本代表が力を発揮しきれなかったように、大舞台で力を出し切ることは決して簡単ではない。また、団体戦の準々決勝で得た反省も生きた。第1ゲームの序盤をリードしたが、逆転負け。追い上げられるプレッシャーに負けて、攻撃に出られなくなった。だから「どんな点差でも思い切って攻める」と決めて個人戦に臨んだ。心技体の最大値を磨くことも大事だが、それを試合で出し切ることもまた重要。見事な優勝だった。
明地陽菜/田口真彩(柳井商工高・2年/1年)
ダブルスは、明地/田口の下級生ペアが優勝。準決勝では、団体戦の決勝で敗れた(※チームとしては勝利)杉山薫/田部真唯(ふたば未来学園高・ともに3年)にストレート勝ちを収めて雪辱。もう一方の準決勝で第1シードの大澤陽奈/石川心菜(青森山田高・3年/2年)を破った古茂田倭子/石橋結子(常総学院高・ともに3年)と決勝で対戦し、相手のパワーにスピードと技術で対抗。珍しい左利き同士、しかも下級生同士というペアで頂点にたどり着いた。前衛で積極的にタッチを狙った1年生の田口が「自分が前に詰めるので後ろが空いて申し訳ない気持ちもあるけど、そうしないと点数が取れない。先輩のカバーを信頼した」と笑うと、明地は「カバーできる分、思い切って行っていいと言っているので、全然良いです」と言って笑みをたたえた。こちらは来季以降も成長が期待できるペアで、高校バドミントン界に新たな注目ペアが誕生した。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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