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今季W杯個人総合2連覇をめざす小林陵侑
“世界の勇者”小林陵侑(土屋ホーム)。彼は昨シーズン、W杯個人総合優勝と北京五輪ノーマルヒル金メダル、ラージヒル銀メダル、混合団体4位という圧倒的な好成績を残した。
いよいよ新シーズンが開幕を迎える。“世界の勇者”は、昨シーズンがピークでないことをW杯個人連覇とジャンプ週間連覇によって証明してくれるだろう。
今シーズンの日本チームは、小林陵侑と二階堂蓮、小林潤志郎と佐藤幸椰に佐藤慧一の雪印メグミルク勢、現在はドイツへ拠点を移した中村直幹(フライングラボラトリー)など6人の選手枠、そして帯同コーチに現場経験を積ませるシーズンとなる。
そこには、作山憲斗(北野建設)と伊東大貴(雪印メグミルク)、伊藤謙司郎(チームタク)と欧州現地にコーチ留学している金城芳樹コーチが小まめに動く。
そして、それらを原田雅彦全日本スキー連盟副会長が掌握し、適時にアドバイスを送る体制が敷かれている。
今シーズンは、1月中盤に開催されるW杯札幌大会3連戦において小林陵侑の3連勝が期待できるのと、葛西紀明(土屋ホーム)の一桁入賞と表彰台に大きく夢を乗せている。そこに大観衆の歓喜が…目に浮かんでくる。
左から二階堂蓮、中村直幹、清水礼留飛
■SNOW JAPANへの期待
小林陵侑は、白馬合宿にて、ボディメンテナンスと体調やメンタルのコントロールを入念に行った。そして迎えた白馬全日本選手権では、夏場に絶好調だった二階堂蓮(日本ビール)の台頭にも慌てず騒がず、1位と2位で常に表彰台にたった。
成長著しい二階堂蓮は冬への切り替えも充分に承知して、それを乗り切るイメージに包まれる。夏の自信を糧に冬、大いなる雪上への挑戦に燃えている。
低いシルエットから伸びていくジャンプが持ち味の二階堂蓮
小林潤志郎(雪印メグミルク)は、チームリーダーとして気丈なまでに日本チームの方向性を示してくれるに違いない。
佐藤幸椰(雪印メグミルク)は、スキーにおける度重なるルール変更に惑わされた格好となり、短めなスキーに対応するのに時間をかけている。復活は1月W杯あたりとなるか。そこに鈴木翔サービスマン(雪印メグミルク)の力量が冴え渡るだろう。
佐藤慧一(雪印メグミルク)は、大型ジャンパーとしてのダイナミックなジャンプが期待される。
ダイナミックなジャンプが期待の佐藤慧一
中村直幹(フライングラボラトリー)は、ドイツを中心に拠点を据え、スキーも新たな青いフリューゲに変えて、その先鋭極まりないシルエットとなった。
冬はコンチネンタル杯に出場、ポイントを重ねてW杯へと昇格を目指す清水礼留飛(雪印メグミルク)の超アクティブなジャンプも楽しみだ。
日本チームは、シーズン最後まで6枠を維持したい。
北京で大活躍をしたガイガー(ドイツ)
■注目の海外勢の現況と新スーツ
10月25日にSNOW JAPAN記者会見が都内で開催された。そこで小林陵侑が欧州で注目する選手として名を上げたのは、サマーグランプリ好調のクバツキだった。ポーランドにはクバツキ以外にもチームをリードするストッフ、個性派で飛ばしまくるズィラもいる。開幕戦の11月5日と6日、夏仕様のヴィスワではポーランドが誇る大応援団の熱気満載になること間違いないだろう。
ノルウェー勢では、かつて2年連続でW杯個人総合覇者となったグラネルが気掛かりだ。現状としてはかみ合っておらず、技術の手直し中とのことで2025年トロンハイム世界選手権(1997年以来のノルウェーでの開催)への布石のシーズンになると思われる。ただ元王者に焦りはなく、アイストラックの改修をみたグラナーゼン新シャンツェでの大飛躍に期待が持たれる。ノルウェーは、グラネルのほかヨハンソンやファンネメルと名選手が揃っている。地元に優位なRAW AIRの展開、さらには巨大フライング台ビケルスンでの上位独占を狙っている。
オーストリアは小柄な強者クラフトが余裕の夏休暇を送り、心を整えていた。そうなると当然、インスブルックが含まれるジャンプ週間あたりが主なターゲットになってきそう。そこに北京五輪で躍動を見せたフェットナーがチームを押し上げる。
若手が台頭するスロベニア勢だが、メインターゲットはもちろん2023年2月のプラニツァ世界選手権。ようやく手にした念願の世界選手権開催だけに、強化費用がふんだんに使われており、ベテランのプレフツを軸にチームの底上げが図られている。
一方、近年低迷するフィンランド勢の復活にはどれくらいの時間がかかるのであろうか。再度、日本チームと覇権争いが見てみたい。
今季、新スーツのルールに関しては、ウエストが緩めになり、逆に腕と膝が厳しく絞られてなどであるが、これらにより股下が長くなる傾向が見られそうだ。そこに計測する人々による誤差までもが生じそうで、いまさらながらルールの徹底など予断を許さない状況にあり、さらにいくらか時間が必要とされる。
またスキーの形状についてはスラットナーのトップ部分の上りの問題や、選手への用具提供の遅れ、強豪選手の調整不足などによって混乱が生じてきたりした。
さて、スタートダッシュに成功するのは注目の日本かポーランドか、それとも秘策がありそうなスロベニアおよび未知の若手新鋭であろうか。
文・岩瀬 孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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