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2022モーグルFIS ワールドカップ プレイバック【女子編】川村、ラフォン、アンソニーの3強がW杯をエキサイティングにした
ブラボー!!モーグル by STEEPMO8戦中、5戦で川村、ラフォン、アンソニーの3人が表彰台に並んだ
フランス・メジェーブでの2戦が終了し、今季のモーグルW杯は終了。今回は男子編に続き、シーズンの総括女子編だ。
本題に入る前に、まずはメジェーブ大会での女子の結果のおさらいから。3月18日に行われたモーグル(以下MO)最終戦では、総合優勝を狙った川村あんりはスーパーファイナルで全体的に点が伸びず3位に終わり、ペリーヌ・ラフォン(FRA)が優勝。なんと、わずか1点差で逆転優勝となった。北京五輪金メダリストのジャカラ・アンソニー(AUS)は高いエア点を弾き出し2位。実質、女子モーグルの3強が最終戦の表彰台を飾った。
19日のデュアルモーグル(以下DM)最終戦では、決勝がラフォンとアンソニーの対決となり、ラフォンが意地の勝利。しかし、アンソニーが決勝に進出した時点で彼女の総合優勝は決まっていた。なお、女子でDMの総合優勝が表彰されるのは、'07季のジェニファー・ハイル(CAN)以来である。
メジェーブ大会の結果で、MO、DMの総合順位は下記のようになった。
■W杯女子モーグル総合ランキング
1 ペリーヌ・ラフォン(FRA)610
2 川村あんり(JPN)609
3 ジャカラ・アンソニー(AUS)585
4 オリビア・ジアッシオ(USA)350
5 テス・ジョンソン(USA)318
6 住吉輝紗良(JPN)210
7 カイ・オーエンズ(USA)206
8 ハナ・ソアー(USA)197
9 エリザベス・レメリー(USA)195
10 柳本理乃(JPN)193
■W杯女子デュアルモーグル総合ランキング
1 ジャカラ・アンソニー(AUS)340
2 ペリーヌ・ラフォン(FRA)296
3 カイ・オーエンズ(USA)200
4 ジェイリン・カーフ(USA)192
5 ハナ・ソアー(USA)128
6 アナスタシア・スミルノワ(RUS)109
7 テス・ジョンソン(USA)109
8 ソフィアン・ギャニョン(CAN)104
9 マリア・シュウィンハマー(CAN)99
10 オリビア・ジアッシオ(USA)98
MO総合優勝を従来のW杯総合優勝(MOとDMを合算)と同じタイトルと考えるか否かは意見が分かれそうだが、もし、イコールとすればラフォンはこれで5連覇。今季、序盤戦で連続して優勝を逃し不安要素も感じられた彼女だが、最後はきっちり締めたのである。
ところで、もし、今季もMOとDMとの合算形式だったら、総合順位はどうなっていたのだろうか?野暮を承知で計算してみるとトップ3はこうなる。
1 ジャカラ・アンソニー(AUS)925
2 ペリーヌ・ラフォン(FRA)906
3 川村あんり(JPN)704
最終戦までイエロービブを守っていた川村だが、最後にラフォンに逆転されてしまった
従来のシステムならアンソニーが総合優勝なのである。アンソニーはMOで全戦スーパーファイナル進出、DMで全戦表彰台(優勝2回)と、ポイントの取りこぼしがなく、特にDMでの強さが目立った。それに対し、ラフォンはDM第2戦で15位に終わったことがあった。一方、川村はMO開幕戦でスーパーファイナルに進めず、DMの総合ランキングは12位で表彰台がなかった(1戦は欠場)。川村が世界のナンバー1を目指すにはDM攻略が大きなテーマとなりそうだ。
北京五輪を経て、急速な進化が予想される女子モーグル
北京五輪では、アンソニーや銀メダルのジャエリン・カーフら、男子同様にアグレッシブなパフォーマンスが高く評価された。攻めの滑りは、客観的な数字でもあるタイム点とも連動する。また、それはとくに第2エアで大きく飛ぶことにもつながる。北京でのジャッジの傾向が、今後の標準となるのなら、女子モーグルの風景は変わってくるだろう。
他方、今季はエアの進化の予兆もあった。女子のエアはかつて上村愛子がコーク720を武器に戦っていたが、それに追随する選手がおらず、技術の進化が止まってしまった歴史がある。ほんの数シーズン前まで、女子は第1エアがヘリコプター、第2エアはバックフリップというのがスタンダードだった。
ところが、'19季より、ラフォンが先導するかたちで女子もコーク時代に再突入。あえてそのスタイルを貫いているアナスタシア・スミルノワ(RUS)を例外とし、今ではW杯決勝でヘリを繰り出す選手はほとんどみられなくなった。
優勝3回の川村。来季は総合優勝、そして世界選手権Vが目標となるか
そして今季、MO開幕戦で優勝したオリビア・ジアッシオ(USA)がコーク1080を軽々とこなすようになる。彼女がMO総合4位となった意味は大きい。この新しい波に、たとえば、川村や、高いエア能力を誇る柳本理乃が乗るような展開もあり得るだろう。
星野引退、住吉は進退を検討中?世代交代が進む日本女子チーム
最後に日本チームについて触れておきたい。まず、五輪メダル、総合優勝はならなかったが、川村のMO優勝3回、2位2回、3位2回での総合2位という戦績にスタンディングオベーションを送りたい。すでにベテランのような貫禄すらあるが、彼女はまだ17歳。ミラノ・コルチナ五輪までの4年間でどのようにバージョンアップしていくかは、モーグルファンの大きな楽しみだろう。
日本チームの選手層に厚みを持たせているのが、決勝進出が当たり前だった住吉輝紗良、冨高日向子の存在だ。とくに住吉は3度スーパーファイナルに進みMO総合6位と昨季の9位からランクアップを果たした。
序盤戦で決勝に残れないレースが続いた状態から、逆転五輪出場を果たした星野純子の底力は頼もしかった。ただし、彼女は今季で引退を決断し、3月21日に北海道で行われた全日本選手権がラストレースとなった(MO2位)。なお、北京でのレース後のインタビューで引退を匂わせる発言をした住吉も、競技を続けるか否かを検討中の模様。
里谷多英、上村愛子の現役時代以上に厚い選手層を誇る日本女子チーム
功労者の星野の引退は寂しく、仮に住吉が22歳で去るとなればあまりに惜しい。
しかし、いまの日本女子チームは世界屈指の選手層を誇り、五輪を逃すも今季初表彰台を果たした柳本理乃はもちろん、今季W杯デビューを果たした中尾春香、ジュニア世界選手権に出場する伊藤真凜、梶原有希など成長株がズラリと揃っていることも覚えておきたい。
文:STEEP
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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