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男女とも日本選手が最終戦を前に総合Vを狙えるポジションに立っているという、かつてない状況である
今回はまず、3月12日に行われたヴァルマレンコ大会の結果をおさらいしたい。今季3戦目のデュアルモーグル(以下DM)でのレースは、順当なメンバーが表彰台に上がった。
男子決勝はキングズベリーvs.堀島という組み合わせとなり、キングズベリーが勝利。これが何度目の対決だろうか?
女子では、ここ数シーズン低調だったカーフの名前が目立つ。彼女は北京五輪での銀メダルを獲得で勢いを取り戻し、従来のポジションに戻ってきた印象だ。
川村あんりは現場まで行っていたが、練習中に足を捻ってしまったため大事をとって欠場。DMでの総合順位アップを断念し、総合トップを狙いメジェーブ(フランス)でのモーグル(以下MO)最終戦にかけるかたちになった。また、残念ながら北京五輪銅メダリストのアナスタシア・スミルノワ(RUS)は不出場となった。少しでも早く、ロシア選手がW杯に出場できる世の中となることを祈りたい。
【DM キエーザ・イン・ヴァルマレンコ大会Result】
■男子
1 ミカエル・キングズベリー(CAN)
2 堀島 行真(JPN)
3 ウォルター・ウォルバーグ(SWE)
■女子
1 ジャカラ・アンソニー(AUS)
2 ペリーヌ・ラフォン(FRA)
3 ジェイリン・カーフ(USA)
堀島はチャンスを残す!DMの総合トップ争いは最終戦まで持ち越し
MOとDMの最終戦は3月18日~19日にフランスのメジェーブで開かれる。DMではヴァルマレンコ大会で堀島、ラフォンが2位に食いついたことで、年間総合首位は確定しなかった。最終戦を前にして総合トップ2の得点はこうなっている。
●男子
1 ミカエル・キングズベリー:300
2 堀島 行真:220
上位2名の点差は80点であり、数字の上では堀島に逆転のチャンスはある。堀島が優勝した場合(100点獲得で320点)、キングスベリーがエイトファイナル(ベスト16)で敗退し、13位なら同点(20点獲得で320点)、14位でようやく逆転となる(18点獲得で318点)。DMはハプニング性が高いとはいえ、やはり、キングスベリーが圧倒的に有利であることに変わりはないのである。
男子はこの3選手が他を引き離しているが、五輪金メダリストのウォルバーグには、すでにMO、DMともに総合トップの可能性がない
●女子
1 ジャカラ・アンソニー:260
2 ペリーヌ・ラフォン:196
女子も男子と同じような状況で、現状で1位と2位は64点も開いている。ただし、男子に比べて逆転の可能性は高い。2位のラフォンが優勝し(100点獲得で296点)、アンソニーが7位だと同点で(36点獲得で296点)、8位だと順位がひっくり返るという計算だ(32点獲得で292点)。男女ともに「同点」という結果の可能性があるのも興味深い。
男女とも何が起こるかわからない!逆転劇も大いにあるMO総合
DMに比べるとMOの総合トップ争いは拮抗しており、どのような結果になってもおかしくない大激戦模様。五輪前のディアバレー大会後から変わっていないが、念のために、総合首位の可能性のある選手の名前とポイントを確認しておこう。
●男子
1ミカエル・キングズベリー:572
2 堀島 行真:560
●女子
1 川村 あんり:549
2 ペリーヌ・ラフォン:510
3 ジャカラ・アンソニー:505
川村は自力優勝の可能性を有しているが、堀島が頂点に立つには、自身だけではなくキングズベリーの戦績による。
なお、チーム事情から今回のヨーロッパ遠征に参加している日本勢は総合ランキング上位を狙える堀島、杉本幸祐、川村の3名に限定されている。結果として、“今季限り”を公言している原大智の国際大会でのラストランは北京五輪のファイナル2ということになった。
1440炸裂も!?最終戦はニューカマーに注目だ!
総合ランキングの動向以外でラスト2戦の楽しみな要素に、勢いのあるニューカマーの活躍がある。五輪が終わり、総合優勝争いにも絡んでいない若手選手は、大きなプレッシャーのない、いわば怖いものなし状態で最終戦に挑んでくる。それがうまくハマれば、ビッグサプライズが起きてもおかしくないのだ。
そこで最後に、今季急成長した選手、来季以降の浮上が期待される若手の名前をピックアップしておきたい。
男子はまず、19歳のニック・ペイジ(USA)を筆頭に挙げよう。この選手は、すでに昨季から“コーク1440を繰り出す第3の男”として注目されていた。1440は一時、“北京五輪で優勝するための条件”と見られていた時期もあったが、結局、そうはならなかった。ペイジも五輪でその最難度エアを出すことはなかったが、彼が高いエア能力の持ち主であることは確かなのである。そして、今季はMO第5戦でスーパーファイナルに進出し4位、北京五輪でも5位と大きくランクアップを果たした。最終戦では初の表彰台を経験しておきたいところであり、そのために思い切って1440を見せる可能性もあるか?
同じくアメリカのコール・マクドナルドも19歳になったばかりの選手である。北京五輪で14位、W杯ではDMに強く、第2戦で4位、第3戦で6位を記録している。アメリカチームの先輩であるブラッドリー・ウィルソンがそうだったように、DMに強いというのはすなわち、“攻撃的である”と同義といっていい。まだ、完成されたものではないが、北京五輪でジャッジが攻撃的ターンを高く評価した点を考えると、マクドナルドの特性は今後、大きな武器になりそうなのだ。
2000年生まれで21歳のクーパー・ウッズ(AUS)は、北京五輪でファイナル3に進出し大きく名前を売った(6位)。W杯では、ディアバレーでのMO第6戦では自己最高の5位をゲットした。今季、存在感の薄いマット・グラハムに代わるオーストラリアの新エースはこの選手だろうか?
層の厚いアメリカから続々と注目ルーキーが登場
16歳だったジアッシオ(右)が初表彰台を果たした、17季の秋田たざわ湖大会。カーフが初優勝した大会でもあった
女子で今季、急浮上した選手といえばオリビア・ジアッシオ(USA)の名前が挙がる。といっても彼女のキャリアは決して短くない。今から5年前の17季、W杯秋田たざわ湖大会DMで2000年代生まれの選手として初めて表彰台(3位)を掴んでいるのだ。ところが、その後は伸び悩み、表彰台だけではなく、W杯ランキング上位からも遠ざかっていた。W杯に出場できなかったシーズンもあった。それが、今季は開幕戦MOで優勝。以後もスーパーファイナルの常連となり、北京五輪でも6位。最終戦では、コーク1080を楽々とこなす高いエア能力に注目して欲しい。ちなみに、伸び悩みの時期は長かったが、デビューが早かったジアッシオはまだ21歳である。
ジアッシオより5歳若い16歳のエリザベス・レメリー(USA)は、昨季のカイ・オーエンズ(USA)に続き、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる可能性が高い。W杯出場は今季の北米ラウンドからで、いきなりMO4戦中3戦でスーパーファイナルに進出。実力者揃いのアメリカチームだけに五輪出場はならなかったが、この戦績は、本人の能力が高いだけではなく、その滑りがいまのジャッジの傾向とマッチしていると考えることもできる。
もうひとり、最終戦は不出場も、今季ブレイクした女子のニューカマーとして触れないわけにいかない選手がいる。柳本理乃(JPN)である。彼女はおそらく、同時代に川村あんりという“怪物”がいなければ、もっと注目されていたはずである。川村がW杯初出場で2位という衝撃デビューを飾った20シーズン、柳本はW杯出場3戦目(スポット出場)の秋田たざわ湖大会でスーパーファイナルに進出し5位になった。同じ大会で星野純子が久々に表彰台に上ったこともあり、ほとんど話題にならなかったが、これはもっと騒がれてもいい快挙だった。そして、W杯レギュラー出場2シーズン目の今季は、開幕戦から2戦連続でスーパーファイナル進出。次のイドレ大会ではDMながら初表彰台の2位となる。これも“北京のメダル候補登場!”とメディアに煽られてもいい戦績だが、やはり柳本が派手にスポットライトを浴びることはなかった。そればかりか、以後の大会で微妙に失速してしまったことで、星野純子に逆転されギリギリで五輪へのチケットを逃してしまうという悲運もあった。この経験を経て、心に期するものがあると思われる彼女が、来季に向けてどのような成長を遂げてくるのか、実に楽しみなのである。
最終戦不出場が残念過ぎる柳本(左)。今季、表彰台に上がった日本の女子選手は川村以外では彼女だけなのだ
なお、最終戦に出場しないことで柳本の最終的にはもっと下がるだろうが、第7戦終了時点でそのMO総合順位は7位である。いまの柳本は、チームメイトの冨高日向子や星野だけではなく、ブリトニー・コックス(AUS)、ユリア・ギャリシェバ(KAZ)、クロエ・デュフォー-ラポイント(CAN)、ジャスティン・デュフォー-ラポイント(CAN)といったかつての世界タイトルホルダーたちよりランクが上なのである。
文:STEEP
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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