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見惚れるほどの美しい景色のなか選手たちがドロップインしていった。
ここ数年、よく耳にするようになった『Freeride World Tour(以下FWT)』は、1996年にスイス・ヴェルビエ近郊のバックカントリーで、自然のままの地形を滑り、そのテクニックやスタイルを競いあったのがはじまりだ。
フリーライドを切り口に 白馬の素晴らしさを世界へ発信
FWTの本拠地であるスイス・ヴェルビエ。
スタートとゴールが決められた斜面を、ライダーは初見で地形と雪質を見極め、安全かつアグレッシブに滑り降りる。「ラインの難易度」「コントロール」「滑走全体の流動性」「ジャンプ」「総合技術」といった5つの採点基準によって、スコアがつけられ、順位を競い合うコンペティションだ。
速ければいい、大きなジャンプをひとつでも決めればいいという単純なものではない。高速で滑り降りる確かな滑走技術、一瞬で地形や雪質を読み取る経験値、滑走技術の限界に近い滑走ラインを選び抜く判断力、セーフティをとりながらジャンプを織り交ぜたフリーライディング能力。そうした要素をフル活用して、滑り降りるプレイヤーたちの総合滑走技術が見ものだ。
ジャッジの詳しい内容についてはこちらを参照(https://freerideworldtour.jp/)
FWTは世界5カ所のみで開催される。写真はオーストリアのフィーヴァーブルン。
年々、その規模は拡大し、2017年にはアジア初開催として長野県白馬村を舞台にFWTが行われた。FWTはレベルに応じて4つのカテゴリーに分かれており、現在では世界の頂点を決める世界ツアーからその下部シリーズおよびジュニアを含め年間150ものイベントが全世界で行われている。その参加人数はのべ3,000人を超えるほどだ。
2020年に開催されたFWT HAKUBA。世界的に有名なライダーも数多く参加した。
とくに世界でも5ヵ所という選ばれた会場に選出された白馬村には、これまで世界中からトップライダーが参加。世界中の愛好者に向けて、1月の白馬の雪質やコンディションを世界に知らしめる絶好の機会にもなっている。
2021年は世界的に流行する新型コロナウィルス感染症による渡航制限によって、例年白馬で行われていたFWTは開催中止を決断せざるを得なくなった。
そのため、世界大会のすぐ下となるカテゴリーのFreeride World Qualifier4*として「TOYO TIRES FREERIDE HAKUBA 2021」を開催するに至る。これによって、これまでスイスの本部が運営スタッフやジャッジといった手配や運営面を行っていたのを、今回はすべて日本在住者によるオールジャパンチームで行う初めての大会となったのだ。
八方らしい風に翻弄された4日間 難コンディションを制したのは?
「TOYO TIRES FREERIDE HAKUBA 2021」コース。
大会斜面は写真の通り。
八方尾根スキー場のトップから歩いてアクセスする大会斜面「崩沢」。スタート地点の標高は1,790m、ゴールは1,420m、距離約500m。最大斜度は45度になる東斜面。ここはスキー場の管理区域外であり、2020年に行われたFWT開催斜面から100mほどスタート位置を下げた場所でもある。
ここを舞台に1/12〜15の4日間の期間中にコンディションを見計らって大会が催行された。
降雪はないものの、吹きつける風によって、ちょっと先の視界もご覧の通り。
この4日間は1月の白馬らしく目まぐるしく天気が変化した。標高1,400m以上は連日に渡って強風が吹きすさび日射はあれど、うっすらと雲が滞留し、大会斜面の全容を見ることは難しい状態。風が斜面を叩き、日射が雪の状態を変え、場所によっては表面が非常に硬くなるなど、雪のコンディションを難しくしていった。
一度は13日(水)に開催を予定し、強風が吹くなか、選手もスタート地点で待機していたが、風と視界不良により順延。日々安全管理チームが夜明け前から現場で状況を観察しながら、安全に大会を開催できるタイミングをひたすら待ち続けた。
選手やスタッフの移動のために早朝からリフトが稼働し行動を開始。
そして大会期間最終日を迎えた15日(金)。
夜が明け始めると北アルプスの山並みがくっきりと表れ荘厳な雰囲気に。
夜半から風も収まり、雲ひとつない天気に恵まれた。早朝6時から選手たちはスタートゲートヘ向かい、滑走順によって斜面状況の優劣がなるべくでないよう、明るくなった7時20分からスノーボードから競技が開始された。
日が上りあたりを赤く染めるモルゲンロードがはじまった。
大会斜面、稜線上は風に叩かれ非常に硬め。
大会斜面の上空から見たコース。
そこから沢へ入っていくと場所によって、柔らかい雪と硬い斜面がミックスされた雪の状況だ。
ライダーズライト側には沢になっており、ジャンプポイントがいくつか点在し、下部には急斜面の岩場。ライダーズレフトは地形の変化というよりスティープな斜面が続いている。
各選手はそれぞれにアルペンやスキー・スノーボードクロス、モーグル、スロープスタイル、ハーフパイプ、フリーライドなどさまざまなバックボーンを持っており、培った総合滑走能力を駆使して斜面を降りてくる。そこにきて、斜面は時間によってコンディションが刻一刻と変わり続ける。
限界値ギリギリまで攻める滑りや、経験豊富なライダーがクレバーにまとめるライディング、独自性あふれるライン取りやジャンプなど、出場選手それぞれに個性的な滑りを披露する。
この難しい斜面を各選手がどんなラインを選び、パフォーマンスを見せるのか。それが、この競技の最大の見所であり、面白さでもある。
はじめて滑る斜面で圧巻の滑りを表現するフリーライド。
その真髄を存分に堪能しよう。
スタート前、ハイタッチでお互いの検討を誓い合う。左はスノーボード男子優勝の美谷島慎。
各カテゴリーの上位入賞者は以下の通り。
SNOWBOARD MEN - 男子スノーボード上位入賞者。
SNOWBOARD MEN ー 男子スノーボード上位入賞者:
1st 美谷島 慎 JPN 91.33
2nd 美谷島 豪 JPN 88.67
3rd Favez Simon SUI 73.00
SNOWBOARD WOMEN - 女子スノーボード上位入賞者。
SNOWBOARD WOMEN ー 女子スノーボード上位入賞者:
1st 東尾 仁奈 CAN 76.33
2nd 加藤 彩也香 JPN 57.33
3rd 笠原 綾乃 JPN 56.00
SKI MEN - 男子スキー上位入賞者。
SKI MEN ー 男子スキー上位入賞者:
1st 勝野 天欄 JPN 93.67
2nd 藤井 昌織 JPN 87.67
3rd 梶田 アレン JPN 77.67
SKI WOMEN - 女子スキー上位入賞者。
SKI WOMEN ー 女子スキー上位入賞者:
1st 中川 未来 JPN 83.67
2nd 大野 結 JPN 75.67
3rd 板場 美奈 JPN 70.33
写真左から、勝野天欄(男子スキー優勝)、中川未来(女子スキー優勝)、東尾仁奈(女子スノーボード優勝)、美谷島慎(男子スノーボード優勝)。
文:Bravoski(ブラボースキー)
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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