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スキー コラム 2020年3月5日

熾烈な個人総合優勝争い

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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欧州各地のジャンプ台周囲は雪が少なく、ここにも暖冬の影響が出てきていた。

前回のコラムで書き添えた予想どおり、W杯開催地で地元出身の選手に勝たせたいという良識がストレートに表れた大会が2月は多く見られた。
ビリンゲンW杯(ドイツ)のライエは飛び慣れて、150m超えさえもみられる巨大なラージヒルで、乱れた風をものともせずに大観衆の声援を前に勝利してみせた。
またザルツブルグから鉱泉地域を山越えで入るクルムの谷間、そこにそびえ立つバドミッテンドルフW杯(オーストリア)のクラフトは、あと3選手を残しての摩訶不思議な2本目キャンセルによって、そこで10mもの飛距離差をつけていた小林陵侑(土屋ホーム)をあっさりと退けて優勝を飾った。

小柄ながら俊敏なジャンプを見せるクラフト(AUT)

もちろん地元の応援人は喜び勇み、笑顔で会場を後にした。
これはこれで良いのだがそのあまりにもわかりやすい情景には、いささか不満が生じてしまう。
いや、かつてはレジェンド葛西紀明(土屋ホーム)が華麗なる実力と神風によって、このバドミッテンドルフとビリンゲンで勝ち、そこでは各国地元の人々がしっかりと祝福してくれていたことを目の当たりにしていた記憶があり、なんというのだろう、それもW杯ならではの光景である。

それだけに札幌W杯で礼節ある佐藤幸椰(雪印メグミルク)が抜群のテクニックで優勝を遂げ、さらに翌日のデイゲームで小林陵が3位表彰台に乗り、そこでの大きな声援と大倉山に繰り出した大勢の観客の歓喜は素晴らしかった。

左からライエ(GER)、クラフト(AUT)、小林陵侑

その後、日本チームはトップ選手の出場を取りやめたラシュノブ(ルーマニア)大会のノーマルヒルでは、若い選手らにチャンスを見出そうとした。

札幌W杯でわずか数ミリのスーツ規定違反の洗礼を浴びて失格となり、そこからやってやるぞと奮起をみせた渡部弘晃(東京美装)、ここからの飛翔が期待される栃本翔平(雪印メグミルク)、若手の中で順調に経験を積んでいる岩佐勇研(東京美装)、竹内択(飯山市SC/チームTAKU)を送り込み、着実にW杯ポイントの獲得にあたらせたのだ。ここで渡部は28位、栃本が29位と確かな手応えを得た。
念願のW杯出場をつかんだ渡部弘晃(東京美装)
『注目のRAW AIRシリーズ』
北欧フィンランドのラハティはその強風に乗りさえすれば、あるいは強い追い風に対応しながら飛べば、なんとか上位に食い込むことができる。
そのラハティ団体戦で日本チームは5位に終わった。

続く個人戦の1本目で小差の2位につけた小林陵は、2本目に飛距離を伸ばせず7位に後退。これで個人戦の最終4試合を残して、はかなくもW杯個人総合2連覇がなくなってしまった。
「もう、総合優勝は無理ですよ」
勝利を期待されていた札幌W杯の3位表彰台で、いくらか憮然とした表情にあった小林陵は直後の記者会見で、そういう嘆きを口にしていた。
それは背後から追い上げてくる強豪欧州選手の勢いを感じるがまま放った一言だった。
W杯16勝のまま足踏みが続く小林陵侑(土屋ホーム)
もとから今季はW杯個人総合で2連覇の夢に包まれていた小林陵は、まずロングシーズンを乗り切ることが命題となった。しかし、その基礎体力をつけたい夏場の時期に腰の痛みに見舞われ出遅れの感があった。
同様に土屋ホーム監督兼選手の葛西紀明も腰の故障から、調整不足に陥りなかなか飛距離を伸ばせないでいる状態だ。
さて、ノルウェーで今季ラストを飾るRAW AIR(ロウエア)は4会場の試合、合計16本で総合タイトルが決まる。 伝統あふれるオスロ・ホルメンコーレンでは7日の団体戦と8日に個人戦。そこから北上して五輪開催地のリレハンメルでは10日に個人戦。さらに北へと進み北極海が望める港町トロンハイムで12日の個人戦。最後は一気に南下してオスロからバスで3時間余の距離、フライングジャンプで名を馳せる巨大な台ビケルスンにおいて14日に団体戦、15日は個人戦が開催されて、それがそのままW杯最終戦になる。
このRAW AIRの連戦は、否応なく激しい優勝争いがみられそうだ。

W杯個人総合のタイトルはイエロービブを手にする休養充分なクラフトか、堅実な安定ジャンプのもとラハティで勝利して勢いの波に乗るガイガーなのか。そこに地元の利をもって髭のヨハンソンやフォルファンそして復活を果たしたタンデあたりが果敢に飛んで、地元のおおきな応援を受けて混戦に持ち込もうとするノルウェーチームも手強い。そういう毎試合、手に汗握る好ゲームとなりそうだ。

今季好調でW杯個人総合優勝を狙うガイガー(GER)


また、このあとにフライングの世界選手権(3月19~22日)が行なわれるプラニツァ(スロベニア)は、強風もあれば乱風にもなる世界有数な飛ばし台だ。
現地は毎度のことながらシーズン終了のお祭り状態、長距離フライトの際にはプラニツァ音頭が鳴り響き、それはもう楽しくうららかなシーズンファイナルを迎える。

文/写真:岩瀬 孝文

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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