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佐藤幸椰
W杯開幕戦のヴィスワ大会で優勝したのはダニエル・アンドレ・タンデ(ノルウェー)、しかも続く極寒になったクーサモ・ルカ(フィンランド)にても勝利、鮮やかに連勝を遂げた。
このタンデは地元ノルウェーで2年前に家族の悲しいできごとがあり、そこから時間をかけて立ち直りをみせての復帰と完勝だった。それだけにメンタルが強靭で精神的に盤石なこの冬の入りとなった。
さらに11月のW杯開幕シリーズでは好調なノルウェー勢に、スーツ失格になった選手が複数出ており、そうなるとまた立ち上がりのなんとやら。
われらが陵侑はいま少しだけスロースタートの状況にある。ひとけた入りしながら上位をしっかりと伺い、W杯ニジニ・タギル大会では2試合目についに3位表彰台に立った。
もちろんそこには1試合目でチームメイトの佐藤幸椰(雪印メグミルク)のW杯初優勝を目の当たりにして、それが刺激になったのは言うまでもなかった。
もっとも、はなから快調に飛ばすのではと思われたストッフ、クバツキ、ジラ、コットらの強豪ポーランドチームは、新たに開発されたと噂の新型スキーブーツにおける改良と慣らしに躍起になっているのか? まだ充分な成果が出せないでいる。
となると12月中は、ほぼマテリアルテストと調整にあたり、めざすは年末年始の大一番、ジャンプ週間における勝利になってくる。
地元で表彰台独占を狙い、熱狂的なファンを目の前にして3位に入ったストッフだけが健闘をみせたヴィスワW杯開幕戦であった。
そこでチームコーディネーターのアダム・マリシュは苦み走った表情を見せたが、それも
今シーズンから新たに就任した若きドレツァルヘッドコーチのお披露目と小手調べの状況にあると頭を切り替え、健やかに42歳の誕生日を迎えた。
もうひとつは冬2月ジーフェルド世界選手権NHで大量の降雪によりアプローチスピードが鈍って優勝候補が次々に脱落、ラッキーに獲得した金メダルと言われっぱなしのクバツキは、それをしっかりと払しょくしていかなければならない。
W杯開幕シリーズでは日本の5選手が予選を通過して20位以内に全員が入る快挙となり、まさしくチーム力の向上、選手との対話を重視した宮平ジャパンだ。
そこでは優しくていねいなコミュニケーション能力がいかんなく発揮されている。
スキーのチェンジが成功して夏場からジャンプに勢いが出てきた小林潤志郎(雪印メグミルク)、前年W杯13勝でしっかりと表彰台を見つめる小林陵侑(土屋ホーム)、個性派の佐藤幸椰(雪印メグミルク)、ケガから復活した伊東大貴(雪印メグミルク)、独自路線を歩む中村直幹(東海大札幌SC)で、そのもの華麗な上昇機運に包まれている。
ただ、残念なことにレジェンド葛西紀明(土屋ホーム)は、いまひとつの調子で予選落ちとなってはいるが、今後ベテランの味をみせての奮起が期待される。
葛西紀明
さらにはコンチネンタル杯を回りながら、エンゲルベルグW杯(スイス)に出場する佐藤慧一(雪印メグミルク)、竹内択(チームTAKU)、岩佐勇研(東京美装)らの中からW杯に昇格もありそうで、これらにより日本チームは1990年代後半から2000年代にかけて以来、久方ぶりに国別総合優勝ができそうなパワーに満ちあふれている。
小林兄弟と伊東大貴
さてクリスマス休暇明けには4ヒルズトーナメント『ジャンプ週間4連戦』が開催される。
12月29日はナイトゲームで行われるオーベルスドルフW杯(ドイツ)。今後ノルディックスキー世界選手権の開催を控え、地元ドイツ出身の選手強化と育成に躍起になっている。
1月1日はガルパルといわれるガルミッシュ・パルテンキルヘンW杯(ドイツ)だ。ここは南ドイツ有数の保養地でミュンヘン市からブルジョア層の観客がたくさんやってくる。
1月4日のインスブルックW杯(オーストリア)は、2019世界選手権LH開催地。その特徴あるスタートハウスとすり鉢型のランディングで名門の五輪シャンツェである。
1月6日はナイトゲームでビショフスホーフェンW杯(オーストリア)。いわずと知れた荒れた土地柄で、試合中には応援団同士の小競り合いがあり会場内外では緊張感が漂う。
岩佐勇研、小林陵侑、竹内択
過去にはこの4連戦最終のビショフスホーフェンで、欧州の超人気選手スヴァン・ハンナバルドと熾烈な優勝争いを演じた宮平秀治ヘッドコーチが、現在の日本チームをひきいる指導者。それもとみに総合力が上がってきているニッポンだ。
さあ、頑張っていこう宮平ジャパン。
文:岩瀬 孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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