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北欧ノルウェーシリーズが始まる。
これは『RAW AIR』(ロウエアー:新鮮な空気が吹きつける)として2年目の開催だ。
いわばノルウェーバージョンのジャンプ週間のような大会で、オープニングのオスロ・ホルメンコーレンW杯から1994五輪開催地のリレハンメルW杯、北極海に面した港湾都市トロンハイムW杯を経て、雄大なフライングいわゆる飛ばせ台のビケルスンW杯までの個人戦5試合と団体戦1試合が行なわれる。
それも1試合ごとのW杯優勝とともに、RAW AIR個人総合優勝が決められる。
そこで選手にとっての難関は予選を含めると、移動しながら連日ジャンプ台で飛び続けるというスタミナがものをいうシリーズになる。
「さすがに、しっかりとしたメンタルをもって強い心意気で飛ばなければ、どうにもならない試合なんですよ」
大いなるベテランの葛西紀明(土屋ホーム)でさえ、タフな1週間に少々つらさを口にしてやまない。
このオスロのジャンプ台は、2011世界選手権を機に改修されて扇形の荘厳なシャンツェに生まれ変わった。その表彰式では軍楽隊の奏でる国歌が心地良い。
しかも昔であればサッツの横にひとりホーンの楽隊員がたたずみ、選手がスタートを切るたびにそれを長めに吹き鳴らして、観客に知らせていた。
こちらはその音色に合わせカメラのファインダーをのぞいていたりした。
日本チームは、札幌に残り右肩故障の治療に専念する伊東大貴(雪印メグミルク)と入れ替わりにメンバー入りした佐藤幸椰(雪印メグミルク)が、小柄ながら、その持ち前のダイナミックな筋力でスピードジャンプをみせる。この北欧RAW AIRはとくに良き経験になってきそう。
W杯後半戦において昇り調子にあるラハティW杯7位小林潤志郎(雪印メグミルク)と同6位の小林陵侑(土屋ホーム)兄弟は、それこそ伸びやかなジャンプですべての試合でひとケタ台を狙っていく。
中堅の実力派で安定する竹内択(北野建設)は、フライングではいくらかの苦手意識がありそうとはいえ、ラージヒルにおける果敢なジャンプに期待だ。
そして、しんがりを務めるのがわれらのノリさんだ。
今シーズンのフライングジャンプは、バドミッテンドルフ(オーストリア)の1本目5位をはじめ、オーベルスドルフ(ドイツ)のフライング世界選手権1本目3位の飛距離218.5mといい、とことん熱くなるのが葛西選手らしい真の姿。そこで往年のカミカゼスタイルを呼び込む力強さにあふれている。
もちろんRAW AIRのピークを体調が持ち直してくる最終ビケルスンのフライング2試合にぴったりと合わせてくるのだった。
また注目の若手小林陵侑はラハティW杯で1本目に2位につけ、少しばかり緊張した2本目で6位と後退したが、いよいよ上位進出とヒトけた定着へのパワフルさが出始めた。
「五輪のジャンプは、これからに生かせるものになりました。とにかく自分の滑りに集中できたのも良い経験です」
そうクールな表情で語った。
さらにラハティ大会からコーチボックスでスタートフラッグを振り出した宮平秀治コーチがいた。その堪能なドイツ語で情報収集力にもたけるだけに、新たな指導力に期待だ。もともと、アシスタントコーチとして、サービスマンと一緒にスキーとワックス用具類を積んだ車両で、欧州各地の試合会場をくまなく回った地道な努力がいよいよ生きてきた。
海外勢では、地元の優位さを基軸にとことん攻めるノルウェーとなる。
これまで絶好調だったタンデがやや低迷気味だがフォルファン、ヒゲのヨハンソン、スティヤネン、ベテランのファンネメルにヒルデなどで着々と上位独占を狙ってくる。
対抗してくるのはW杯個人総合優勝に向かってひた走るストッフのポーランド。実力派のコット、ジラ、クバツキ、フラがしっかりと続いて、その分厚いチーム力を誇っている。
ラハティで団体戦を制したドイツはベリンガーにフライタクが好調のまま、勢いあるアイゼンビヒラーとガイガーの成長があり、そこにトレーニングに復帰してきたフロイントの去就も気になるところ。
名門チームのオーストリアはクラフトの復調がみられ、同僚のハイバックも元気になってきつつ、加えて中堅フェットナーの突き抜けがほしい。
ところで、スロベニアの英雄プレフツは、いまひとつのままに終わるのであろうか。いや、そんなことはない。いつもの地元プラニツァで、あっという飛びをみせて地元の大観衆であふれる会場を、必ず沸かせてくれるはずだ。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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