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スキー コラム 2018年1月11日

第3回『ジャンプ週間は英雄ストッフが制す!』

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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雨の始まりとめどもなく

竹内択

竹内択(北野建設)は中堅のポジションからの脱却がはじまった

開幕初戦のオーベルスドルフ(ドイツ)からして天候不順であった。それも背後の風に雪どころか降雨になってしまい、しかも激しくなってきた。観客スタンドにはビニールカッパ姿が目立っている。さらにバックウインドがつらく、きつくて。

日本国内は大雪で各地のスキー場はうるおい、とても好ましい状況にあるのだが。どうして、欧州が小雪? クリスマス明けの時期のヨーロッパは暖かく、ジャンプ台では予期せぬ方向から風がぐるりと巻いて、となっている。 これで年明け女子ジャンプW杯のルシュノブ(ルーマニア)は、雪不足から延期になった。

伝統あふれるジャンプ週間オーベルスドルフ(ドイツ)大会は、いつもならけっこう冷えるはずなのだが、荒れる風雨にウエイティングが繰り返された。 その間、眺めてみれば、チームウエアでいえばドイツの深いグリーンはとてもきれいで、そして安定のオーストリアンレッド、これは国の色。ノルウェーはブラックとブルー、スロベニアは緑から一転ダークブルーにしてみた。 日本はレッドカラー中心、これに関してはジャンプファンの人たちが、おのおの印象で判断してくれることであろう。

ナイトゲームが終わると、レストランは夕食時間が終了していてBEERタイムがほとんど、あってもせいぜいピッツァくらいしか用意されてない。だから融通の利く中華屋に『また、今年も来てしまったよ』と閉店間際に駆け込んで、チャーハンと焼きそばで夕飯を済ますのがオーベルスドルフ夜のつね。その味も、いつもと変わらなくて安心してしまう。

葛西紀明

もうひと踏ん張り元気を出していこう葛西紀明(土屋ホーム)

ジャンプ週間の会場でたくさんの声援がある葛西紀明(土屋ホーム)は、いま、どうみても元気がない。減量やメンタル系の影響なのかも知れず、ついには2本目に残れなかった。 右肩を故障した伊東大貴(雪印メグミルク)の調整継続により、チーム入りした作山憲斗(北野建設)は50人に入れなくて予選落ち。竹内択(北野建設)は健闘、しかし小林潤志郎(雪印メグミルク)とのKO同僚対決で敗れた。 今季は、小林兄に期待だ。また弟の小林陵侑(土屋ホーム)も果敢に飛ばしてくる。この小林弟はヤンネ・バータイネン元フィンランドチームヘッドコーチの指導により、フィンランド基本技術の立ち上がりの姿勢が身についている。

ストッフ

このまま五輪を駆け抜ける勢いにあふれるストッフ(ポーランド)

海外勢は混戦模様、当初は10代の新鋭にもチャンスがありそうな雰囲気だった。 ポーランドは英雄ストッフとコット、ドイツは勢いが出てきた髭のフライタクとヴェリンガー、オーストリアはクラフトとハイバック、そしてノルウェーのファンネメルとフォルファンあたりが上昇気運にあった。

この大会の優勝はストッフ(ポーランド)、2位フライタク(ドイツ)、3位に上昇著しいクバツキ(ポーランド)。優勝候補のクラフト(オーストリア)は4位に終わった。 日本最高位は小林潤志郎が6位入賞、小林陵侑が12位、竹内拓は24位だった。 ジャンプ週間の序盤で注目するのはストッフの上体の安定性。それは見事にブロックされて飛距離を伸ばしていた。

いまわしき追い風

ミュンヘン市内のブルジョア層が毛皮を羽織り優雅に訪れるガルミッシュ・パルテンキルヘン(ドイツ)大会も雪は少ない。ということは暖冬に近く、そうなると風の変化に悩まされて、やはり追い風になってしまう。 晴天、たまに向かい風がきて。そのいい風の乗ることができれば、と願いながら。 プレスメディアには4つのジャンプ台を回る移動バスができたそうだ。昔はおのおので4つの台へ行っていたのに、いまや大型バスの団体移動だ。ほんとうは山越えの裏道で、そこに小さな伝統的な村がありなど、そんな車移動も面白いのだけれども。

クラフト

優勝候補筆頭だったクラフト(オーストリア)の元気はいずこへ

1本目3位につけた小林潤志郎はトータルで4位。風の舞い上がる中で飛ばされたが落ち着いてまとめてきた。竹内拓は23位、小林陵侑が29位だった。 なんと有力な地元オーストリアのクラフトは2本目に残れず。また欧州注目の葛西紀明は予選落ち、まだいまひとつ調子の波に乗れないでいた。 好調時には右寄りに流れていくストッフが優勝、フライタクが2位、小柄ながら瞬発力に長けるファンネメルが3位となった。 名選手だったアダム・マリシュは、いまや最強のコーディネーターとしてポーランドチームをバックアップしている。これはその強さの秘密、技術からメンタルまで硬軟取り混ぜての指導に選手がしっかりと応えていた。

この時期、世界トップシーンの雰囲気に慣れ、さらに夢を抱く目的を持ちながら、コンチネンタル杯を転戦していた白馬村出身の栗田力樹(明大)、岩佐勇研(札幌日大高)と二階堂蓮(下川商)が、立ち見の観客ゾーンから大きな声を上げて、葛西紀明と小林兄弟ら日本勢を応援していた。

今季は雪が少なく

雪の街チロル州インスブルック(オーストリア)大会も観客席にはほとんど雪がついていない。そこで、ついには傘が必要な降雨の試合となってしまった。 優勝候補のひとりだったヒゲのフライタクが右足テールのクロスで着地してすぐに転倒、したたかに腰を痛めてしまった。その結果、最終のビショフスホーフェン大会は欠場、注目のドイツチームは、一気にパワーダウンしてしまった。

ついに上位に定着、表彰台を狙う位置にしっかりとつけている小林潤志郎は、あとひと吹きの良風を待ち望んでいる。予選では強者ストッフを押しのけて首位に立ち、いくばくかの賞金を受け取った。 好調を維持する小林兄はジャンプ全体をスムーズな流れに捉え、的確な体重移動と正確でスピーディーなサッツ、速やかに進んでいく空中姿勢で、つねに王手をかけている存在。それを熱心に指導した岡部孝信コーチ(雪印メグミルク)の指導力はものすごい。

まだ気分的にムラがある印象の葛西紀明は、得意としていたインスブルックであり大観衆の声援を受けて、気分良く飛距離を伸ばして18位につけた。その、ここ一番における集中力は他の外国人選手の追随を許さず、それだけに期待感に包まれる。 この時期ちょうど息子さんが生まれた竹内択も、気をよくして伸びやかに飛んで21位。この場に肩の故障が癒えた伊東大貴が復帰してくると、いよいよまとまり良くW杯後半戦の団体戦の表彰台も見えてきそうなチームジャパンだった。 スタートハウスが近代建築のベルグイーゼルシャンツェでは、ストッフがあっさりと3連勝を決めた。 ノルウェーのタンデはインスブルックの台の形状がマッチしていて前年に優勝していた。それはアイストラックになっても変わらずのテクニックを持ち今年は2位、ヴェリンガーが3位表彰台となった。 これまで選手はせり上がりのランディングから右方向にすぐに出て下へ降りていたのだが、それをリニューアルして、左手の新ゲートから出てTVとプレスゾーンを通って右手へと歩いていくようになった。これでゆっくりと取材できると評判上々のようだ。

荒れる観衆の地

塩の道、城下町のザルツブルグ市から南下して50分くらいの位置にあるビショフスホーフェン(オーストリア)は、いつもながらの庶民派の街並みで、駅前からジャンプ場にかけては酒飲みの皆さんが大勢たむろする。しかもジャンプ台下の観戦広場でその群衆に囲まれると、身動きが取れなくなるのは過去に経験ずみ。『どけてくれー』と怒声を上げなければ道をあけてくれず、そんな赤ら顔の人々の相手はもう勘弁だ。

小林潤志郎

ジャンプ週間で輝きの個人総合4位小林潤志郎(雪印メグミルク)

上位に定着した小林潤志郎は7位に入り、僅差でジャンプ週間個人総合4位、惜しくも表彰台を逃してしまった。しかし昇り調子にあるのは紛れもない事実だ。そして弟の陵侑は、20位に入って揚々、日本若手の主軸になり得た。 ここにドイツの勇者フライタクは不在、一抹のさみしさが漂う。しかも地元オーストリア勢はクラフトとハイバックの2トップが不調に陥り、となればいつもの赤白の応援団が、大挙押し寄せてきていたポーランドの独壇場。 当然のことながら勝利への意欲があったストッフが4連勝を決めて、ドイツの貴公子と称されジャンプ週間4連勝のハンナバルトに、ハグされ祝福を受けていた。

世界のレジェンド葛西紀明は2本目に残らない状況。ただ2月に向けてはこれから。その完全な復調が待ち遠しい。

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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