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『名門フライング台を制するのは』スキージャンプFIS ワールドカップ 16/17 オーベルスドルフFH大会プレビュー
鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文欧州フライングヒルのシャンツェでおおいなる歴史を誇るオーベルスドルフは、ジャンプ週間の開幕戦が行われるオーベルスドルフLHシャンツェから西側方面に数キロ、平場に広がる世界選手権を開催したクロスカントリーコースを経て、山まわりでおよそ10分の地、その東斜面に聳え立つ。
そこでは、すり鉢状のブレーキングトラックも厳かに、良い風が吹き抜けて空中ではふわりと浮き出す選手がたくさん観られ、じつに心地よいフライング台であった。
かつては、陽が落ち暗くなりかけたここで、葛西紀明(土屋ホーム)が3位表彰台に立ち、満面に微笑みを浮かべていた。
今回からはそのビッグヒルも、アプローチがアイストラックに改修されてのゲームとなる。また新たに、軽やかなフライングが見られることになりそうだ。
さてW杯後半戦を占う、なんと150m以上の飛距離をたたき出す巨大なLHビリンゲンで、勝利を得たのは地元ドイツの勇者ヴェリンガーだった。
2月後半に行なわれるラハティ世界選手権においてメダル有力にみられていたフロイントが、右膝のケガにより長期欠場となってしまったが、それを確実なまでにカバーして表彰台の中央に立つ、そういう男気をみせて4万~5万人ともいわれる大観衆を魅了した。
今後、連戦が続くW杯団体戦は駒が豊富なポーランドそしてドイツ、そこにW杯通算53勝の世界記録を持つシュリーレンツァウナーが復帰していよいよメンバーが出揃ってきたオーストリアが出色で個性派のフェットナーも自由奔放に飛んでいるのがうれしい。さらにその間隙を縫ってプレフツとドメン兄弟と、もはやいぶし銀のテペシュが控えるスロベニア、あるいは爆発力を秘めるタンデ、ファンネメル、フォルファンとベテランのヒルデを交えたノルウェーあたりが迫っていく。
その注目のポーランドは無双の強者ストッフに加えてマリシュテクニックを凌駕するジラ、コット、ジオブロ、クバツキなど、その時々の好不調の波でメンバーの組み換えが可能で、万全ともいえる選手層の厚さをみせている。これに対抗してくるドイツはヴェリンガーとフライタクに若手のガイガーなどで手堅く固めてチーム戦での勝利をめざす。
残念なことに日本はいまだ低空飛行。しかし望みはある。それは、ほぼ2年計画と言ってもいいくらいの余裕の感だ。というのは試合前の駆け引きが重きを置くジャンプスーツなどのマテリアル技術の流失を防ぐ目的がみられるからだ。そのあたりはこの先もじっくりと余裕を持って観戦すべきだ。もちろん、ここでもレジェンド葛西紀明は威風堂々、あっさりと予選を飛んで、ひとケタに入っており何の問題はない。その目標は遥か彼方へと見据え、ひたむきにジャンプしている。
この1月にメンバーチェンジして国内調整に至った伊東大貴(雪印メグミルク)。今季は、2度も失格になっている竹内択(北野建設)もそう。ビリンゲンW杯を終えて帰国したが、気を引き締めてそこでふてることなく、いま一度、足場を固めることが肝要。
はたまた岩手八幡平松尾が誇る小林潤志郎&陵侑兄弟がそろい踏みを果たした。それと、来春からCHINTAIに就職が決まり、現役続行をする妹の諭果(早大)さんが熱心に応援し、自身は大鰐インカレでの勝利をと努力を重ねている。はからずも兄の潤志郎は、弟に負けるものかと意地を前面に出す。ほかに長野勢では作山憲斗(北野建設)も研究熱心そのもの、1本ごとていねいにジャンプしている。
とにかく日本チームは、あわてず騒がずのスタンスを守りたい。 いまは地元札幌W杯とその後の平昌プレ五輪W杯、およびラハティ世界選手権で好成績をあげ、それを2018シーズンにつなげていけばいいのだ。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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