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さあ、あの強者ストッフが復活をみた。
2014ソチ五輪LH金メダリストもこの前年には燃え尽き症候群なのか、鳴かず飛ばずのままにおわっていた。
それが今シーズンはもはや破竹の勢いで、4ヒルズトーナメント・フィアシャンツェントルネ・ジャンプ週間(日本国内における通称)の個人総合優勝を成し遂げてしまった。
なんやかや、これに引きずられることポーランドの中堅選手で個性派のジラやコット、クバツキ、ジオブロまでもが上昇気流に乗って上位入賞を果たし、いよいよポーランドの黄金期がやってきたとの話まで出てくる。
とくに今季は団体戦の放映権をよりたくさん獲得しているJ SPORTSにおいて、その見応えと言えば、もうポーランドチームの表彰台中央に君臨しての連勝街道まっしぐら、それであろう。
そのもの虚脱感のあった先シーズンから、一気に回復を目指してのチーム改革が成功していたのである。それも、ノルディックのコーディネーター部門に名選手だったアダム・マリシュが就き、当時、彼の指導者として実績を残したタイナーコーチが上層部の役員に就任、さらにオーストリア人のシュテファン・ホルンガッヒャーがチーフコーチに昇格、上から下までじつに風通しの良い明るい雰囲気のチームに変革していった。
技術的にみると、どの選手もかつてのマリシュを彷彿させるような裏太ももの使い方をみせたスピードジャンプが基調となり、ぐいぐいと飛距離を伸ばす。また、それらをよくみていると右寄りへ飛んでいくマリシュのクセさえみられる。
地元ヴィスワW杯とザコパネW杯では、熱狂のなかでストッフが連勝を遂げていた。
ところが選手全員が飛び慣れていた地元のザコパネ団体戦では、完勝のはずがよもやのドイツに足元をすくわれ僅差の2位に甘んじたが。だから団体戦は面白いということだ。
強者フロイントがじっくりとした調整にあたり団体戦を欠場し、ヴェリンガーが若手をリードしたドイツ。次のビリンゲンは長距離ジャンプが見られる独特の面の長いシャンツェで、ドイツチームが優位に立つのは言うまでもない。
そこにあのW杯通算53勝のシュリレンツァウアーが復帰をみせたオーストリアがまことしやかに浮上中でクラフト、ハイバック、コフラーで安定のチームメイク。また、タンデが突出するノルウェーが主力のファンネメルに勢いが出てきたフォルファンを加えてベテランのヒルデあたりで固めていく流れか。
そして当初、最強なプレフツ三兄弟がそろい踏みをみせて輝きのスロベニアではあったが、厳しきスーツチェックの犠牲になったためか!? いまひとつ突き抜け感がなくなってしまった。
そして我らが希望のジャパンチームだ。
ザコパネ団体戦は2本目に進めるぎりぎりの8位、チェコやロシアにも負けての順位、いや、いまはこの現状。
日本はジャンプ週間からメンバーの入れ替えをなさないままに1月の後半戦に進んだ。
そこにある種の秘策をたずさえてはいるものの、そのお披露目は来季の五輪シーズンになるのか。何かあればすぐに列強諸国から技術やマテリアルに関して、あれこれとチェックが入れられる日本チーム。ならば、いまは音なしの構えというのもひとつの戦略。
イエローベースに新塗装されたヘルメットが届いて意気揚々の葛西紀明(土屋ホーム)は、10位台のこれまた超マイペースの流れのまま。伊藤大貴(雪印メグミルク)がじわりじわりと上位を狙い、竹内択(北野建設)は新たなテクニックを見出そうと研鑽を重ねている状況、作山憲斗(北野建設)と小林陵侑(土屋ホーム)は欧州各地のジャンプ台で細やかなまでに経験を積んでいる段階にある。
チームに焦りはない。そこで悲観する必要性はなにもなく、どこまでも温かい気持ちで心静かに声援を送りたい。
どの強豪チームも全精力をつぎ込むラハティ世界選手権に、ひとまずはそのターゲットをあてている。もう、それでいいのだ、今シーズンは。
様々な駆け引きが見られるチーム戦、それを堪能しながらいまはジャパンの表彰台をひそかに願っていこうではないか。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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