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いつもの季節、欧州クリスマスが終わると、欧州中のスポーツファンはもう、いてもたってもいられなくなる。 そう、フィアシャンツェントルネ、フォーヒルズトーナメント、ジャンプ週間がやってくるからだ。 レギュラーシーズンのW杯、もちろんそれが地元開催国の選手が勝利して会場がおおきく盛り上がる。そのひとつの節目となる年末年始のジャンプ週間は、この4試合だけの個人総合優勝が争われ、そこに巨額な賞金と公式スポンサーのアウディからこれまた高性能のクルマが一台プレゼントされる。選手たちは完全にそれを狙いにゆくのである。
立ち上がりの12月はやはりというべきかジャンプスーツに規制が入れられ、この犠牲になった!?竹内択(北野建設)の失格である。それもサマーグランプリで優勝と第2位という実績においてのチェックとなり、本人よもやの状況であったことだろう。
そこはレジェンド葛西紀明(土屋ホーム)ではなく、JPN2番手であろう竹内にぶつけてくるというその意図とは。ではあるが、それをやろうものなら日本のジャンプファンを一気に敵に回すことになる。であれば、2月の札幌W杯をみていなさいともなりかねない。
それらの間隙をぬってエンゲルベルクW杯で第5位に入ってきたのが昇り調子にある伊東大貴(雪印メグミルク)、彼は深秋から入念に仕上げに取りかかっていた。
「いろいろな風が吹いてきても、びくともしないテクニック。追い求めるのはそれなんですね。じっくりと調整していきます」これが冬に功を奏した。
しっかりとしたアプローチ姿勢で的確にウエイトを乗せて、その感覚を研ぎ澄ましていくことが重要であると。
「微妙に調子が上がらずに苦労していましたが、ほんのちょっと手を入れてみて、目線とか。いい感じになってきましたね。そうです、これからですよ」と葛西はその強い意思を持って突き進む。秋口からこれまで減量に苦しんでいたその葛西も12月中盤になってようやく復調のきざしが見られるようになり、葛西、伊東、竹内の3人がそれぞれW杯でひとケタ入りを目指していく。
今シーズンはそれでよい。あくまでターゲットは2月のラハティ世界選手権(フィンランド)におけるメダル獲得、それにピークを合わせてのメンタルコントロールになってくる。
また国内では小林潤志郎(雪印メグミルク)が12月開幕戦の名寄ピアシリを制して意気上がる。そこでジャンプ週間では弟の小林陵侑(土屋ホーム)とのトップメンバーの入れ替えも考えられる。 「弟は可愛いですけど、ライバルです。あいつが先を行くなら追い越さなければ」それは、良い意味での切磋琢磨となってくる。
海外勢では、いまだドイツはマイペース調整の域にあり、オーストリアはハイベックとクラフトが安定したジャンプをみせて表彰台へ。プレフツ(スロベニア)は終始落ち着いたジャンプをみせ、勢いあるファンネメル、タンデ、フォルファンなどのノルウェーチームはややスロースタートの感だ。さらに出色ではポーランドチームの明るさが目を引く。それはかつて名選手だったシュテファン・ホルンガッヒャーヘッドコーチの手腕によるもので、そこにノルディックコーディネーターに新就任したアダム・マリシュと、その当時に彼を指導したタイナー元ヘッドコーチのポーランドチーム上層部入りが、完全に功を奏している。そして五輪金メダリストのストッフの復活劇となった。この、ポーランド個性派のジラやクバツキ、コットなどからもはや目を離せない状況になってきた。
さらに若手のドメン・プレフツ(スロベニア)のW杯勝利と、風をなめていくような新型テクニックの解析に躍起になっている他の欧州強豪チームだった。それは往年の船木テクニックに代表される低くきれいな身体の伸びに加えて、葛西の上腕の開きと、わかりやすいH型スキーのシルエットなのである。
ジャンプ週間は開幕ドイツのオーベルスドルフとガルミッシュ・ルテンキルヘンへ、そこからオーストリアの名門インスブルックにアプローチの長くなだらかにクセのあるビショフスホーヘンへと続く。それぞれの会場でヨーロッパ伝統の4試合に夢を馳せてみよう。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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