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葛西紀明はもはや欧州で伝説の人、レジェンドと呼ばれている。
あれは、ジャンプ週間の開幕直前に行なわれるオーベルスドルフ(ドイツ)の記者会見においてのことだった。15年連続してのジャンプ週間出場を祝う表彰を受けた。
そのとき、どこからともなく、
「これはもうレジェンドの域にあたる。そうだカサイはレジェンド」という声が、記者席からあがってきた。
それはつまり、ジャンプに精通する欧州のベテラン記者たちから自然発生的に出てきたのだった。ゆえに重みがあるのは言うまでもない。
昨今、巷では流行のようにレジェンドと、さまざまな現象や人名に使われるようになったが、この葛西が受けた最高のレジェンド称号は、まさしく本物に与えられる栄誉である。それだけにリアルなまでのレジェンドなのだ。
なんとなく、軽々しく使われてほしくないのは、ジャンプファンの本音といえるもの。
冬本番のために、11月14日(月)に早くもフィンランド遠征合宿に出かけた土屋ホームスキー部だった。
ヤンネ・バータイネンコーチの故郷クオピオおよびフィンランドオリンピックトレーニングセンターのヴオカッティ、さらには北方向にあるロバニエミの雪の状況をリサーチしながらの調整トレーニングと雪上におけるジャンプ練習。そこで充分に身体を慣らして25日クーサモ・ルカでのW杯開幕戦を迎える。
チーム土屋の監督を兼ねる葛西紀明、小林陵侑、伊藤将充、女子TOP2伊藤有希の4選手は、10月後半から白馬で合宿を重ね、アイストラックが完成したノーマルヒルとラージヒル全日本選手権に出場して、順調にトレーニングを積み上げた。
「もう少し減量したいんですけどね。ベストは59㎏くらい、あと2㎏は絞らないとね。なかなか断食もきつくなってきている年頃ですから~」
と言って葛西は、あたりに笑いを振りまいた。
今月25日に開幕するクーサモ・ルカ(フィンランド)は、前年、暖冬の影響からアプローチが崩れ出して試合中止に見舞われた。今シーズンはそのアプローチをアイストラックに改修して万全の状況をもってW杯にのぞんでいる。
また年末年始に行なわれる恒例のジャンプ週間は、歴史ある伝統の4試合。
ドイツのオーベルスドルフとガルミッシュ・パルテンキルヘンに、オーストリアのインスブルックとビショフスホーフェン、この4ヒルズにおける個人総合優勝争いも見逃せない。
また今冬に放送されるザコパネ(ポーランド)、ビリンゲン(ドイツ)、オスロ(ノルウェー)、ビケルスンFH(ノルウェー)、プラニツァFH(スロベニア)での5試合の団体戦の行方にも注目したい。その時期における各国のチーム力というのはこの団体戦で如実にはかることができるからだ。
世界の強豪ドイツ、オーストリア、ノルウェー、スロベニア、ポーランドらに対して堂々と対抗していく。ここでは日本チームの連続の表彰台を望みたい。
期待の開幕全日本メンバーは葛西紀明(土屋ホーム)、伊東大貴(雪印メグミルク)、竹内択(北野建設)、作山憲斗(北野建設)、小林陵侑(土屋ホーム)の5人となった。
海外強豪各選手のターゲットはもちろんW杯開幕戦になる。
ここで表彰台に乗り、スタートダッシュして絶好のシーズンインを迎えようと熱気に包まれトレーニングを重ねる。
有力選手では新しいスキーのスラットラーへのチェンジでどのようなジャンプをみせるかプレフツ(スロベニア)、故障が癒えて復活したドイツのフロイントと強気なヴェリンガー、飛ばし屋ノルウェーのファンネメルとフォルファンなど、強者オーストリアではクラフトやハインバックあたりの立ち上がりが気になるところ。
さいわい日本国内とヨーロッパは降雪が早く、去年のように雪不足でめくりめくる怪しい風というのは避けられそうである。
また、日本のスキーファンが、大倉山にこぞって観戦に訪れる札幌W杯は雪まつりの2月11日(土)と12日(日)。同時期には渡部暁斗・善斗兄弟(北野建設)に、新鋭の渡部剛弘(わたなべたけひろ ガリウムSC)などが出場するノルディック複合W杯も開催だ。
その直後には15日(水)と16日(木)にジャンプ男女W杯の平昌プレ五輪も行われる。そこではあの吹きさらしの台の荒れた風をしっかりと捉えることが命題となってきそうだ。
今シーズンは、マテリアルチェンジもあでやかにカラフルなスキーが登場してきた。
スキーはいつものイエローベースのフィッシャー、青いフリューゲからオレンジ&グレイのヴェリボックス、有名スポーツショップのレッドなSPORTS2000、緑のエランがなくなりホワイトなスラットラーなどだ。
序盤戦は、それら各選手のスキーとの相性などをじっくりと分析したい。
この冬は、五輪への前哨戦。W杯個人戦もさることながら団体戦も要チェックだ。
画面にくぎ付け、心を込めて応援しよう!
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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