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今季、早々と個人総合優勝を決めたプレフツ(スロベニア)は、とみに安定した勝利を重ねて栄冠を手にした。
それも前年の最終戦までもつれてのフロイント(ドイツ)に敗れた悔しさにまみれての、タフな夏場のトレーニングと、ジャンプ後半に伸びを見せるスロベニアの新型テクニックの習得で、もぎ取ったのだった。
来季は2月にラハティ世界選手権が開かれる。
やはりここでメダルを獲得すること、上位に入ることが現時点における実力の証明、各人、それが最大の目標となる。そしてその勢いをもって2018平昌五輪へと進むのがセオリー。それだけに世界選手権での表彰台が五輪のメダル獲得には重要なターゲットとなる。
ティティゼー・ノイシュタット(ドイツ)の代替え試合となった、最終戦シリーズの3月17日(木)にW杯出場500試合の金字塔を打ち立てた葛西紀明(土屋ホーム)は、笑顔に包まれながら帰国を果たした。
そこで札幌にある土屋ホーム本社にて単独のインタビューを試みた。
――世界的に評価される偉大な記録、W杯出場500試合達成して思うことは、どのようなことでしょう。
葛西「長いようで短かったなと思いました。気が付いたらもう500試合でしたね。それが近づいてくるにつれって、やはり気になり始めて。それでもケガしないようにという気持ちも先に立ち、500試合の当日は少し、攻めが足りないジャンプになってしまった(笑)」
―― とてもうれしいことでしたね。現地の応援は盛大でした。
葛西「そうでもないかなと思っていたら、いえいえ、プラニツァの会場の皆さんが大きな声援を送ってくれて嬉しかったです。でも、これは通過点であると思っています。いつもトレーニングしていても衰えは感じませんし、飛んでいてのひらめきもあり、つかめたこともあります。それは一連のジャンプの流れによる、目線、腰の位置、重心、タイミング、方向など、何も考えることなく自然体でやり遂げることができたのです」
―― 自分のジャンプが完成の域にきたということでしょうか。
葛西「そうですね、どのような状況においても冷静に自分のスタイルのジャンプができる。それはジャンプが固まってきたということでしょう。あの小学や中学生の頃に下川のジャンプ台で、無心に飛んでいた、その感覚なんですよ。案外、メダルを獲得したソチ五輪のときもそのようなイメージでしたね」
―― というのは、ジャンプの内容はどうなのでしょう。
葛西「いわゆる、そのときの主流選手、アダム・マリシュやヤンネ・アホネン、トーマス・モルゲンシュテルンやグレゴア・シュリーレンツアウナーなどのジャンプをじーっと観ていて、その良いところを取り入れるという。その時々の彼らの飛びを真似してみて、それを自分のベーシックなテクニックにうまく組み込み、積み重ねていくという意識で、でき上がっていたのが、いまの私のジャンプスタイルです」
―― それが、いま、ついに凌駕のときを迎えたということですね。
葛西「そうです! カサイ・オリジナル・テクニックの完成です。道具やルールそして毎度のように技術が変わっていく中で、そこに対応できている自分がいるのです。普段からの創意と工夫ですね。それも幾年も進化しながらなんです」
―― では、この先の目標になってくるのは。
葛西「W杯でしっかりと成績を残すこと。それでTOP10以内を維持して、予選免除になり次の段階を狙っていく。予選を飛ぶ、飛ばないは大きいですよ。余計な頭を使わなくてもいいですし、なによりも疲れない。それに体力温存ができる(笑)」
―― 最終的にはどのようなビジョンを持っているのでしょうか。
葛西「あと10年はジャンプを続けていきたいですね。ヒザや腰のケアを充分に行ないながら。今度のラハティで開催される世界選手権は3回目の出場です、そこで金メダルを取りたいですね。それとW杯での最年長優勝記録、いつでもこれがほしくて。だから、とことん頑張っていけるのです」
葛西選手は、それこそ落ち着きにあふれ、長きにわたるシーズンの疲れはあるのだろうが、そこに満面の笑みを浮かべて意気揚々、じつに楽しそうに語ってくれた。
次のシーズンも、さながらレジェンド・カサイのためのシーズンのごとく。
それはまるで不死鳥フェニックスどこまでも、という感覚なのかもしれない。
日本チームは、世界選手権や五輪を前にしたポストシーズンながらW杯においてコンスタントにトップ30位入りを繰り返し、代表6枠をしっかりと確保した。
そこでは若手の小林陵侑(土屋ホーム)がW杯に初出場したザコパネW杯で7位に入るという衝撃的なデビューを飾り、最終戦シリーズのプラニツァ団体戦では219mを記録した。その将来性あふれるジャンプは、欧州各国指導者の注目をひいていた。
現在のジャパンは、世界にその名がとどろくレジェンド葛西紀明を軸に、竹内択(北野建設)、伊東大貴(雪印メグミルク)、作山憲斗(北野建設)、栃本翔平(雪印メグミルク)、伊藤謙司郎(雪印メグミルク)、そこに国内では小林潤志郎(雪印メグミルク)、清水礼留飛(雪印メグミルク)、馬淵源(秋田ゼロックス)など、また次代を担う高校生では伊藤将充(下川商高→土屋ホーム内定)、佐藤慧一(下川商高→雪印メグミルク)らが控える。
この春から夏にかけては、横川朝治チーフコーチ(北野建設)と宮平秀治コーチと各企業チームのコーチングスタッフが好ましい連携をみせて、その強化育成をていねいに施しながら、欧州列強勢のオーストリア、ドイツ、ノルウェーなどと、つねに覇権を競り合う、盤石の代表チームづくりといきたい。
●2015/2016W杯個人総合順位
1.ペーター・プレフツ(スロベニア) 2303
2.セベリン・フロイント(ドイツ) 1490
3.ケネス・ガングネス(ノルウェー) 1348
4.ミハエル・ハインバック(オーストリア) 1301
5.ヨハン・アンドレ・フォルファン(ノルウェー) 1240
6.シュテファン・クラフト(オーストリア) 1006
7.ダニエル・アンドレ・タンデ(ノルウェー) 985
8.葛西紀明(土屋ホーム) 909
9.リハルド・フライタグ(ドイツ) 680
10.アンデルス・ファンネメル(ノルウェー) 670
16.伊東大貴(雪印メグミルク) 478
18.竹内 択(北野建設) 498
42.小林陵侑(土屋ホーム) 55
47.作山憲斗(北野建設) 43
55.栃本翔平(雪印メグミルク) 22
59.伊藤謙司郎(雪印メグミルク) 16
61.小林潤志郎(雪印メグミルク) 13
67.中村直幹(東海大) 6
海外勢では、若手が急成長しているノルウェーは、ガングネスとフォルファン、ファンネメルなど新鋭2~3人などと、さらに選手層に厚みが見られそうだ。
ドイツは強者フロイントとフライタクにヴェリンガーとヴァンクらが続く状況に変わりがなく、オーストリアはクラフトとハインバックの2TOPにフェットナー、注目のシュリレンツアウナーは個人的なアルペンスキーで膝を故障してしまい復帰が長引きそうな状況。
新型ジャンプ技術で成功をみたスロベニアは王者プレフツに長距離飛行のクラニエツなど、そこにプレフツ弟のドメンにテペシュが加わる。
これらに相対して、レジェンドから新鋭までと硬軟取り交ぜた好選手が打ち揃う日本が、どこまで食い込んでいくのだろうか。
またヘッドコーチにシュテファン・ホルンガッヒャーが新就任するポーランドは、ストッフとジラやコットの復活がありえそう。
そして伝統国のフィンランドにも、名将コヨンコスキが呼び寄せたオーストリア人コーチが就任するとの話も出てきた。ときに大幅な体制の変化が求められると。
各強豪国のターゲットは2017ラハティ世界選手権、その開催国、地元フィンランドは大いなる立て直しが急務となる。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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