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スキー コラム 2016年2月3日

愛しのまなざしホルメンコーレン  スキージャンプFISワールドカップ/オスロ・プレビュー

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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かのホルメンコーレンの丘は、あのカミカゼカサイの帰りを待っていた。
日本国内W杯の最大イベント札幌大会にて第3位という最年長表彰台を飾り、ギネスを受け、ひとしきり微笑みに包まれていた葛西紀明(土屋ホーム)。

優勝は良き吹き上げの風に乗ってしまった小柄なファンネメル、続いたのはフライングに才能を発揮するフォルファンというノルウェーの飛ばし屋たち。
そこに鋭く食い込む葛西だった。
前日、ナイトゲームで表彰台独占のスロベニア、そして2試合目ノルウェーの上位入りに待ったをかけるべく、葛西は果敢に攻めに出た。

「最高でしたね、1本目は。なにもかもばっちりで、とくに飛形点は20点満点いけるだろうって感じでいました。2本目は緊張しているつもりはなかったんですが、飛ぶ瞬間にほんの少し力が入って、身体がよじれていました。それがなければ140mを超えて優勝できたのに(笑)」 意気軒昂、公式の記者会見ではそう言って気迫を込め、また、にやりとした。

それに先立つ表彰式と、ギネス認定式イベントでは、たくさんのメディア取材陣を前に、ひとつ語ることがあった。
「じつは昨日の朝方に赤ちゃんを授かりまして…」
「それは、もしかしたら妹の生まれ代わりのような…」
その瞬間に、心優しいフォトグラファーたちはファインダーを見ることができなくなった、いや、それこそ涙でぼやけてしまったのだ。
しばらくシャッターを押すことができず、それを指でぬぐい、深呼吸をひとつふたつと。よかったノリさん、良かったねとサイレントモードで。
みんながそんな気持ちで、いつもより丁寧にシャッターを切っていった。

W杯個人総合TOP10のシード枠で、来札しなかったのは、直前のザコパネW杯で1、2位表彰台となったクラフトとハインバックのオーストリア勢2名のみ。
実にハイレベルな闘いとなった今年の札幌W杯だ。
その強豪ぞろいの中で4位と3位に入った葛西選手、それはこれからも、とことん最前線でジャンプしていけるとの証明になった。

さて、カミカゼ葛西は、オスロ・ホルメンコーレン(ノルウェー)で過去に勝利している。
あれは1993年頃の話だ。あれからもう12年以上のときが経つ。
いまだ健在で、さらに飛距離がどんどんと伸びていく。
だからこそレジェンド葛西。
いつもながらに親日であるノルウェー国民は、超満員のお客さんすべてがカサイに大歓声を送り、それも幸せなひとときなのだ。

欧州強豪勢では、地元ノルウェーの長距離飛行軍団ファンネメルにフォルファン、スーツ失格の余韻から復帰するガングネス、タンデらがとことん飛ばしてくるであろう。
当然ながらLH団体戦では地元の大声援にあと押しされる。
そこに昇り調子にあるオーストリアのクラフト&ハインバックが果敢に打って出てくる。また腰の故障から復調するフロイントそしてフライタグにヴェリンガーとヴァンクが上位を伺うドイツには、いまだにアウエーのブーイングがあったりする。
もちろん王道をゆくプレフツ兄に弟のドメン君も張り切っているスロベニアもダークホースか、これでとことん面白さのホルメンコーレン大会となる。

日本勢はそれぞれの調子の波を鑑みつつ、どのようなメンバー構成も可能だ。
ラストジャンパーのレジェンド葛西は不動の存在。そこに伊東大貴(雪印メグミルク)、竹内択(北野建設)を据え、作山憲斗(北野建設)と栃本翔平(雪印メグミルク)あるいは一気に大型ジャンパーの伊藤謙司郎(雪印メグミルク)を組み入れるのも吉となろうか。

昔であれば、サッツに交えてあの軍楽隊の奏でるファンファーレが、白肌の台に心地よい響きであった。
いまではその先鋭的な扇形の最新シャンツェ、それもまた見応えありなのだ。
いにしえのときを刻むホルメンコーレン、それをじっくりと味わいたい。

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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