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スキー コラム 2016年1月21日

ジャパン若手選手の上昇を!スキージャンプFISワールドカップ/ザコパネ・プレビュー

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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葛西紀明は耐えていた。
オーストリアで、ある想いにかられていた。
『いま、ここで、飛んでいて良いのだろうか』
メンタルを強く、いまひとつ自分を見つめ返していた。

でも、飛んだ。
それもあのクルムの改修された新型フライングシャンツェで。
しかも240.5mを飛び抜けてだ。それを贈りたかった、可愛い妹に。
そう、ひたすらに想いを込めて飛んだ。

世界を相手にしてのバドミッテンドルフFH世界選手権、第5位は素晴らしい成績だった。
しかも2014にW杯で優勝した台とはいえ、アイストラックを導入、アプローチの形状が微妙に変わってしまったにもかかわらず、抜群に飛距離を伸ばしていた。
そのメーターは、ひとえに日本選手の最高飛距離となった。
ジャンプ週間でひとケタ入りを繰り返し、その後に急きょ帰国、国内3連戦で2勝を記録して、すぐさまオーストリアへと旅立った葛西。その欧州移動からして、体力の消耗が激しいまま、それでも飛んだ。
ジャンプしながら、それは心の中で見ていてくれているだろう妹の久美子さんへ向けて。

欧州のファンは歓喜した。ノリアキ・カザーイに声援を送ることができると、純粋に。
そうしてオーストリアや自国の国旗を高らかに振り上げた。

さて、続くはザコパネ(ポーランド)での2試合だ。
ここは昔から葛西選手が得意とする台ではあるが、それはキャンセルして帰国。彼は想いを雪中へと収めて、静かに週末の国内試合と来週の札幌W杯へと道を進める。
葛西はそこで表彰台に昇る、きっと昇る、それが供養となるからだ。
必ず、やってくれる地元札幌の台で。

このザコパネW杯にはFLから居残る作山憲斗(北野建設)に加えて日本チームは、清水礼留飛(雪印メグミルクスキー部)、伊藤謙司郎(雪印グミルクスキー部)、原田侑武(雪印メグミルクスキー部)、小林陵侑(土屋ホームスキー部)の若手選手4名を投入した。
ザコパネでは強風をものともせずに、味方につけての大らかな飛びを見せたいところ。
それが若手選手たちには良き経験となってくる。

勢いにあふれて、月末に控える札幌W杯で表彰台を狙うべく日本チームは準備万端。
国内3連戦のあとにじっくりと調整を続ける伊東大貴(雪印メグミルク)は、万全の体調で大倉山を迎える。さらには、いよいよ復調してきた竹内択(北野建設)も同様、ともに飛び慣れているシャンツェで表彰台へとの願いは強い。
そして果てはノルウェー、オスロの名門シャンツェで開催されるホルメンコーレンW杯へ、フィンランドのラハティW杯プレ世界選手権へと勝負は続いていく。

海外有力選手では個人総合を走るプレフツ(スロベニア)と、ザコパネW杯は持病ヘルニア治療のために欠場するフロイント(ドイツ)のTOP2に加え、ここにきてフォルファン(ノルウェー)の台頭がめざましく、クルムのフライングにおいて着地で転倒しながらも、すっくと起き上がり、台に向かって雄叫びをあげていた。
このラージヒル団体戦は、いまのところパワーあふれるFH団体戦を制したノルウェーが一歩先をゆくのか。他にはドイツが有力で、陽気なフライタクにヴェリンガーとクールなヴァンクなどと鉄壁な布陣をひく。そしてオーストリアはクラフトとハインバックがリードして、ひげが格好いいフェットナーとポッピンガーで突き進むのか。
またスロベニアは、プレフツと弟ドメンの伸びに期待、相変わらずそのジャンプスーツに浮力がありそう。ポーランドはいまだに鳴かず飛ばずの今季だがストッフやジラ、コットらが地元の大声援を背に受けての意地がみられそう。

今シーズン、強豪各国ともにLH団体戦に基軸を置くのは、チーム力を上げるがため。
これは日本チームも当然ながら、ところがフライングヒルは安全面から回避しておいて、あくまで実直ながらラージヒルにおける経験値を積み重ねる意味合いが大きい。
日本はチームリーダーの葛西に、好調の波に乗ってきた伊東と竹内、フライングを経験した作山憲斗(北野建設)、名選手であった岡部孝信コーチの教えを胸に秘める小林潤志郎(雪印メグミルク)と栃本翔平(雪印メグミルク)、長身からのダイナミックなジャンプが魅力の伊藤や若手新鋭の小林陵、国内W杯枠を含めると五輪金メダリスト船木和喜の指導を受けて伸び盛り山田勇也(スポーツアカデミー北海道)、海外遠征トレーニングを積み重ねた伊藤将充(下川商高)、前年にインターハイチャンピオンとなった栗田力樹(白馬高)など、それぞれに目的を有して、より良きものを得るべくW杯出場や海外遠征の場を施す。
いまや、その道に抜かりはないはずだ。

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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