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好発進を見せるか我らがレジェンド葛西紀明 スキージャンプ FIS ワールドカップ /クリンゲンタール・プレビュー
鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文以前にみられたような荒れまくる風が、あまりにも印象に強く残るクリンゲンタールの台。
オープニングゲームはやはりドイツでということから近年、当地に組み込まれた開幕戦。
ジャンプ人気が高いドイツのこと、大観衆が幾重にもシャンツェを取り囲む。しかし、雪がなく高温ともなれば、容赦なく風が吹き付けて、である。
いわゆるモーターレースF1の裏返しがW杯スキージャンプとの明確な棲み分けがなされるドイツだ。それはかつてのマルティン・シュミットやスヴァン・ハンナバルドの超人気選手の時代から受け継がれる伝統そのもの。ときにブンデスリーガのファンも加わるが、昔でいう東ドイツの山沿いそしてバイエルン地方に代表される南ドイツでは、ジャンプフリークがこぞって各大会会場にやってきては、ドイツ国旗を打ち振るい、美味しいグリュネワインと、カラシ付きのソーセージをかたわらに地元選手に大声援を送るのだった。
さらにはW杯出場500試合がもはや目前に迫る“リアル・レジェンド”葛西紀明(土屋ホーム)への敬意を表するその暖かい拍手が終始鳴りやまず、その中を我らがノリさんは華麗なまでに飛んでいく。それこそ日本の誇りとの、見ていて心に充足感が満ち溢れる。
うれしい、さすが欧州ジャンプファンの目は肥えている。観客の皆さん、ありがとう。
そう言いたくなる異名レジェンド・カサイ発祥の地、ヨーロッパならではの光景である。
さて、クリンゲンタールW杯の団体戦、日本チームは強気なまでに表彰台を狙う。まずはあの乱れまくる風を味方につけてだ。
そこで気になる団体戦メンバーは葛西紀明(土屋ホーム)、伊東大貴(雪印メグミルク)、竹内択(北野建設)に始まり、そこに今夏絶好調の作山憲斗(北野建設)で、それともW杯団体戦で過去に3位表彰台を経験し2015ファルン世界選手権団体戦4位の小林潤志郎(雪印メグミルク)か、昇り調子にある2007札幌世界選手権団体戦銅メダルの栃本翔平(雪印メグミルク)なのか、全日本チーム横川朝治ヘッドコーチ(北野建設)その心の葛藤が聞こえてきそう。
とくに心境著しい雪印メグミルク勢は、技術を含め選手たちのメンタルケアまでも司り、さらに全日本スキー連盟の新理事としての活躍が期待される原田雅彦監督のもと、人望深き岡部孝信コーチの綿密な指導が息づき始め、そこに大きな魅力が感じられる。
海外有力チームでは、ここで勝たねばならぬと圧倒のパフォーマンスがあるドイツ、W杯個人総合を制したフロイントにフライタク、試合復帰で気迫がこもるヴェリンガー、そこにヴァンクなのか、あるいはアイゼンビヒラーら若い選手の登場をみるか。そんなチームスポンサーのチョコレート、ミルカパワーのドイツだ。
伝統のオーストリアは若手クラフトにハインバック、そこに勇者シュリーレンツァウアー、
を加えて、さて、あとのひとりは?
強気なバーダルとヤコブセンは引退したが、上昇気運にまみえるノルウェーはファンネメルにベルタは不動の存在、そしてスキーをチェンジしたベテランのヒルデ、あとはフォルファンあたりか。
またスロベニアはプレフツを軸にダミヤン、テペシュ、ベテランのクラニエツはどうであろう、一気に台頭する若手起用なのか。
ポーランドはエースのストッフ、ジラ、コットなど、そこに新鋭が幾人かいそうな雰囲気いっぱいで表彰台を狙う。
クリンゲンタールW杯の後は、いつものクーサモ・ルカ(フィンランド)でひたすらに冷えて、そこで開幕翌週W杯ジャンプ個人2連戦、11月のオープニングダッシュをみせるカミカゼカサイというのもおおいに予想できる。
葛西選手はフィンランドスキーの一大本拠地ブオカッティへと遠征合宿に乗り込み、そこから雪を求めてサンタクロース村で有名なロバニエミへと移動、その地で入念に雪上ジャンプトレーニングを重ねてきた。帯同した日本女子2トップの伊藤有希、新人の小林陵侑、来春に土屋ホーム入りが決まった伊藤将充が、ひたむきに練習に取り組んでもいた。
続いて12月には1994冬季五輪の開催地リレハンメル(ノルウェー)でのW杯、ここで女子W杯の開幕をみて、おおかた今シーズンのジャパンを占う試合となりそうだ。
団体戦の中継は、この先、1月のビリンゲン(ドイツ)とザコパネ(ポーランド)、2月になるとオスロ(ノルウェー)とラハティ(フィンランド)、最終3月のプラニツァ(スロベニア)フライングへと進んでいく。
レベル高き日本チームの連日の表彰台を願いつつ、熱き応援でJ SPORTS観戦といこう。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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