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どこまでも遠く、風さわやかに、最後のふた吹きまでも味方につけて! それでなんと246.5mを飛び抜けた地元ノルウェーのエベルセンが歓喜にむせんだのが2011年。これは現在でもフライング世界最長不倒の飛距離だ。 その間はイメージとして5秒いや6秒の空中姿勢となり、それこそ昔のカミカゼカサイのように、にこやかな微笑みを見せながら飛ぶ。そんな好選手がノルウェーにはたくさんいるのだった。
ビケルスンの風、たのしさが過る。伸びるだけ伸びていく、そして空中のガマン比べ。安定した向かい風をとことん身に受けて、その飛距離およそ240m以上。 なんとも迫力あるW杯ビケルスン大会(ノルウェー)。
以前から一発狙いのタフなジャンパーが揃い、魅力あふれるノルウェー選手たちだ。 あの長髪インゲブリクセンや、メタルロッカー風な個性派ロモレン、いつもにこにこ笑顔で心暖かいヒルデらが世界中にその名を轟かして、しかも2本目に失敗するというお決まりのシーンが…。それを打破しようと、これまでの純血主義をあっさりと捨て、指導者に長年のライバルであったフィンランドから名将ミカ・コヨンコスキを呼び寄せ強者の道を走るに至る。
ただ、そのコヨンコスキチーフコーチも、私ひとりでは立て直しは無理だと実は秘蔵っ子の有能なメンタルセラピストをフィンランドから帯同していったのは、あまり公にはならなかったが、その彼の力も充分に加味されてのジャンプ王国復活であった。
さあ内陸部の寒い街はずれにぽつんとそびえるビケルスンは、そんなレッド&深海ブルーに彩られるNORのホームFHシャンツェである。ファンネメル、ヒルデ、ヤコブセン、スティアンセン、ベルタ、若手注目のショーンらで、我、先んじてと飛距離を伸ばしてくるであろう。 大観衆はオスロから2時間以上のバスの旅もなんのその、北欧のビッグヒルは充分にその役目を果たしてくれる。 途中、港湾近くの市内コースで有名なクロカンスプリントW杯開催のドランメンからも回れるが、ほとんどはやはりオスロ近辺から時間をかけてやってくる。それも各国の長距離ジャンパーたちに拍手を送ろうとして。
また、あの世界的に有名な『飛ばせ台』プラニツァ(スロベニア)では約2年の歳月をかけて250mオーバーが記録できそうな世界最長の台が、ようやく完成をみた。 ビケルスンとともに、そこでは地元のプレフツ、クラニエツ、ダミアン、調子を上げてきたテペシュらが果敢にアタックをかける。
安定するドイツは、英雄フロイント、フライタグなどが健闘する。故障明けのベリンガーはまだ慣らしに徹する状況か、ではあるが。
今季はダークホース的な存在になっているポーランドは、リーダーで五輪金メダリストのストッフの復調でいよいよチーム力が持ち直した。そこにコットやジラなどが加わり、着々と体制が整う。
日本はとことん頑張ってほしいところだが、正直に言えばリスクが高いビケルスンよりも今月後半に控える世界選手権に調子の波を持ってくるのが得策か。 しかし、熱きリアルレジェンド葛西紀明(土屋ホーム)や240m超えの伊東大貴(雪印メグミルク)は黙っていられない!? いや、そこは無理せずターゲットを明確に、であろう。 竹内択(北野建設)もタフに伸ばせる、がまん強い作山憲斗(北野建設)も同様、勢いにあふれる飛ばし屋の小林潤志郎(雪印メグミルク)と栃本翔平(雪印メグミルク)は狙いつつもおおらかに飛びたい。
世界選手権の会場ファルンは、オールドスタイルで銅山の街、露天掘りの世界遺産の地。 そこは旧式のケリ上げ台だったのが、改修を施し新型に変えた。だが、いつもながらに風は荒れ、そんな運がつきまとう。 混合団体の連覇を期待したいJPN。そして個人戦での表彰台も。でき得るならば団体戦もポディウムヘ。日本から北欧スウェーデンへ素晴らしき風を送り続けよう。
このファルン世界選手権にはベリンガー(ドイツ)も、バーダル(ノルウェー)も、あのフレンドリーなアマン(スイス)も帰ってくる。
好勝負、まっしぐら。つねに上昇気運で日本チーム!
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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