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いよいよ欧州4ヒルズトーナメント(日本での愛称:ジャンプ週間)が開幕する。
これはドイツとオーストリアの4つのジャンプ台を年末年始の約1週間に渡り、移動しながら試合する伝統的なW杯。このシリーズで個人総合優勝が決まり、高額の賞金に加え、高級新車1台の副賞がつく盛大な連戦になる。
開幕はドイツの2試合で12月28日(日)のオーベルスドルフと1月1日(月)のガルミッシュ・パルテンキルヘン、そしてオーストリアでの1月4日(木)インスブルックに1月6日(土)の最終戦ビショフスホーフェンになる。 この4つのジャンプ台に最大で4~5万人もの大観衆が集まっていた時代もあり、いまではその安全面から考慮されて2万5千人から3万人くら いに入場が制限されている。それだけ人気あふれるビッグイベントになっている。
シャンツェには近年においてアイストラックの導入などの改修がなされている。しかし、最終戦のビショフスホーフェンはアプローチの角度が浅く、しかもだらだらと長くなり、踏み切りのタイミングがとりづらい日本選手泣かせのシャンツェ。 かつて3連勝して、ここで史上初の4ヒルズ4連勝を狙った船木和喜選手は、湿雪にも悩まされ8位に終わり個人総合優勝を逃してしまった。ただ、現在のチームスタッフ、宮平秀治コーチはこの地で表彰台に昇るなど、めっぽう得意にしていたのだから素晴らしい。
各々の会場では観客が美味しそうにグリュネーワイン(ホットワイン)を飲み、パンにはさんだ美味なソー セージを食べつつ熱狂的に地元選手を応援する。そのなかでも葛西紀明選手には、分け隔てなく会場全体からの暖かい拍手が鳴り響いて、カミカゼ・カサイから受け継がれるレジェンド(伝説の名選手)として敬意を払われている。
さて、今季4ヒルズ(ジャンプ週間)における注目選手をあげてみよう。
伝統ある強豪オーストリアチームでは、ハイバックとクラフトの若手が一押し、勇者シュリレンツァウナーはマイペース調整を続行中、前年好成績をあげたディートハルトはまだ本調子にはあらず、とはいえ風に乗れば一発もある。
まとまりがよいドイツチームでは、もはやリーダーの予感すらあるフロイントが虎視眈々と優勝を狙う。そしてクリスマス休暇前のエンゲルベルグ(スイス)で優勝して 、ようやく調子の波に乗れそうなフライタクに、実力者“ミルカ”のヴェリンガー、新鋭のアイゼンビヒラーが控える。
ファンネメルが急成長してきたノルウェーは、もはやベテランのバーダルとヒルデに、中堅のベルタ、そして夏場に名をあげた若手のショーンがどのようなジャンプを見せてくるかによってチームの浮沈がかかわる。
つねにシャープなジャンプを見せるプレフツ、安定のダミヤン、長距離ジャンパーのクラニエツにテペシュなど個性あふれる好選手が揃うスロベニアチームは、団体戦での活躍も期待できそうだ。
また今季すでに優勝しているコウデルカ(チェコ)は新コーチの就任による的確な指導によるものが大きい。
五輪メダリストではクーサモ・ルカ(フィンランド)で葛西選 手と優勝を分け合ったアマン(スイス)が有力。その熟練のテクニックで、いつでも魅せてくれる。
もうしばらく強化の時間が必要なフィンランドチームでは、アホネンにあの名将の呼び声高い優勝請負人ハンヌ・レピストがコーチについて上位復活をめざすことになった。
気になるのはここまで泣かず飛ばすにいるポーランドチーム。前年のW杯個人総合優勝でソチ五輪金メダリストのストッフがよもやの故障、そこからの現場復帰に苦慮しているが、一説によれば4ヒルズでの出場も見えてきているようだ。
充分に昇り調子にきている日本はついに選手代表6枠になった。
コンディション調整を優先させてのトップチームの一時帰国に変わり、中堅若手の4試合派遣で、新たに1枠を確保、そこ に作山憲斗(北野建設)が入った。
つかの間のクリスマス休暇には、夏場から秋にかけてジャンプ練習不足となっていた葛西選手に心のゆとりを生み出し、そこで国内開幕戦名寄ピアシリにおける愛弟子の伊藤有希を優勝(高梨沙羅2位)させるに至るという好循環を生み出した。
その名寄において、男子で優勝したのは右膝が好ましい状況になってきた伊東大貴(雪印メグミルク)、また同点優勝の竹内択(北野建設)は雪のアプローチ感触の違いから、ようやく脱却をみせた。
良き勢いが出てきた岩手八幡平出身の小林潤志郎(雪印メグミルク)は抜群の飛距離ながら着地転倒などの苦い経験がこの先に生きてきそう。ちなみに期待の高校生で、弟の小林陵侑(盛岡中央高)は葛西監督ひきいる土屋ホ ームへの就職が内定した。
ドイツの軍人選手ヴァンクと仲がよい清水礼留飛(雪印メグミルク)は、12月の国内調整中に岡部孝信コーチの指導に熱心に聞き入りジャンプを改良、実力アップに余念がない。
まずは全員が限りなく2本目に残りたい日本チーム。そしてそのパワーを欧州中に響かせたいところだ。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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