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案の定、無理やりメイクされた茶褐色の雪がランディングバーンに張り付けられていく。いくらかの降雪があればよいが、そこは中途半端な気温上昇による、巻きまくる風雨ともなれば、前年のようなキャンセルの憂き目にあう。あれは残り2人となり、危険回避のためにシュリーレンツァウアー(オーストリア)とバーダル(ノルウェー)が、スタートハウスからあっさりとエレベーターで降りてしまった。試合運営に対する抗議の意味を込めてだ。
北欧クーサモ・ルカ(フィンランド)も強風に見舞われることしばしばだが、まだ雪があるだけましだろう。なぜ、ドイツでのオープニング? スポンサー対策?
いやはや、地元の熱意というのはあれ、無事に開催されてほしいクリンゲンタール。
考えてみれば、そのどちらにおいても大きな転倒を見せたのが、今季、引退してまったモルゲンシュテルン(オーストリア)。しみじみと…、かつてクーサモで大転倒のモルギ。そのときテストジャンパーを務めていたのが、クオピオにジャンプ留学していた若き竹内択(北野建設)だった。吹き荒れる降雪の中を、涼しい顔をして飛び抜けていった。
「すこし調整不足かも(笑)」
とはいえ葛西は用意周到であった。現場に出ればいやおうなしにボルテージは上がる。
「そこにチャンスが見られれば、ものにしますよ!」
快活明朗な微笑みさえ見せてくれる。だから応援したくなるのさ、ファンの心わしづかみだ。
チームメイトの伊藤有希を指導する監督業もあり、さらに新規に加入が予定される有望高校生ジャンパー小林陵侑(盛岡中央高)に対するコーチングとチームの教えもあった。いいペースで時が流れるフィンランド・クオピオ合宿となりそうだ。
さて今シーズン好調なのはオーストリアか。ポイントナーの勇退後に新ヘッドに就任したクッティンのもとシュリーレンツァウアー、ディートハルト、クラフト、ハイバックそしてベテラン選手のコフラーとロイツル。どこからでも攻め込める強さを持つ。
そして強者ドイツも負けてはいない。とくにヴェリンガーにミルカがメインポンサーについて意気揚々とジャンプする。これはあの名選手マルティン・シュミットの後継にとのドイツ国民の思いを胸に秘めているであろう。また重厚なるフロイント、若さのフライターク、軍人ヴァンク、新鋭クラウスとガイガーらも忘れてはならない。
ノルウェーは夏場に謎のグレイ色のインナーウエアを使用していた。あれには空中で、たいそうエアが入っていた。白馬サマーグランプリで表彰台に入った若手2人はジャンプ終了後に蒸し暑さにやられてジャンプスーツを脱いでしまう。そこで現れたのがこれで、ウエットスーツのごとく巧みにエアがとどまるインナー、実にわかりやすかった。結局、サマー国内選手権ではバーダルなどトップ選手も着用、飛距離を伸ばして、いつの間にかあの若い二人はどこへ?
チームはファンネメルやベルタ、ヒルデもまずまずの仕上がり。
あるいは好調を維持していそうなスロベニア勢の立ち上がりはどうであろう。勇者プレフツ、風を切り裂くクラニエツ、気鋭ダミヤン、安定のテペシュなど個性抜群だ。
もちろんポーランドも良さそう。五輪金メダリストでW杯個人総合優勝ストッフを筆頭にコットにジラなどが上位進出を狙う。あの2本バーのスペシャルビンディングは、さて、どのように進化しているのか興味は尽きない。
新規のルールとしてはわかりやすく言えばジャンプスーツが太くなる。これは身体から3㎝(女子4㎝)の余裕を持つ。そして生地は4~6㎜ということは浮力が得やすくなる。
さらにヘルメットは厚めのパッドで頭部を保護するタイプ。見た目も大きくなった。どちらも安全性を考慮してのルール制定であった。とくに女子選手では空中スピードが出たときに着地における激しい衝撃で膝を故障する選手が続出、それが懸念されていたことを受けての措置でもあった。
日本チームはその新規対応に追われた風だが、まだそこまでシリアスには感じてはいない。
前年の五輪で成功した魅惑のジャンプスーツ、いまやそれは広く欧州に知られ、そこに、これだとぶつけていけばどうなるか、またルール改正が…。いや、それは避けておこう。日本のミズノには素晴らしい技術がある。だからじっくりと時を待つ、そのスタンスだ。
要するに海外有力選手における今季のターゲットは2015ファルン世界選手権で表彰台に上がり、スポンサーからの多額のボーナスを獲得すること、これだった。
五輪ではスポンサーマークの制限がある。露出効果や広告効果における最大なものは、ノルディックスキー世界選手権。各スキーメーカーやヘルメットゴーグル、オーバーウエアなどこぞって斬新なデザインとカラーリングで雪上を飾ってくる。それだけに通常のW杯と世界選手権があれば、五輪は?という感触と懸念が出てくるのである。
ミュンヘンやオスロなど欧州各国の有力五輪開催地候補の軒並みキャンセルは、それに起因するとの話もあるくらいだ。
さあ、風が巻いてきそうなクリンゲンタールの開幕戦、じっくりと楽しみましょう。
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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