人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
雪が少なくなってきた欧州、ほぼジャンプ台のみに雪が張り付けられた状況と、ここでは冷やされたアプローチ『アイストラック』の威力が発揮される。
スロベニアの名門ジャンプ台、プラニツァにはFH、LH、NH、MH、SH、さらに小さな子供達用のものを含めると、なんと8台ものシャンツェがある。
さらに平地部にはクロスカントリースキーコースが増設されて、2019世界選手権に立候補した。そのいちばん左端に聳える伝統のフライング台は、現在、きれいに改修中にあり、世界最大の“飛ばせ台”になる。
直前にハラホフ(チェコ)で行なわれたフライング世界選手権では、2日間4本の合計で勝負が決まるはずだったが、その2日目は強風にてキャンセル。初日トップのフロイント(ドイツ)がそのまま優勝した。そこに上位で安定するプレフツ(スロベニア)、バーダル(ノルウェー)、ストッフ(ポーランド)、葛西紀明(土屋ホーム)の混戦模様で迎える最終戦シリーズだ。
その葛西はまるで開眼したかのように微笑みを持ってスタートを切る。
五輪明けのファルン(スウェーデン)で右ひざを痛め、腰も万全とは言えない状況ながら、一瞬、笑顔を見せてから、アプローチを滑り出す。まるで、懐かしの須田健仁選手(東京美装)のように。
「そうすると力が抜けて、リラックスして飛べるんです」
これまで、よく見られていた必要以上の力みは、もはやそこにはない。
目を引く新規のマテリアルでは、前年12月くらいから取りざたされていた日本チームのジャンプスーツに秘密があるというのは、欧州強豪チームからの話だった。
五輪のメダル獲得により、いよいよその一端が明らかになった。葛西のスーツ展示を要請されてローザンヌ(スイス)にあるIOCオリンピック博物館にそれを寄贈した。これで、当然、ライバルチームからの細やかなチェックと分析が入ることにもなったようだ。
細かく言えば上半身でうまく空気をとらえるということ。そこにひとつのルール内における工夫があるが、日本の勝利のためには、風がどこに入りどのようになるのかという表記は避けたい。日本のメーカーは優秀この上ない。より飛べるものを作ろうものなら、すぐに欧州勢の厳しいチェックが入るのである。そのあたりのせめぎ合いというのも、なかなか難しい部分だ。
それには、もちろん基本技術がしっかりしていなければ何にもならない。根本的にタフに身体を鍛え上げ、アイストラックをしっかりと踏めるパワーを習得し、そこで葛西ら日本チームは、各所で歯切れ良いサッツがみられる。
この新型スーツに関しては、終盤戦においてフロイントが巧みにアレンジ、またコフラー(オーストリア)あたりが器用に着用し始めて調子を戻してきた感さえある。
さて、チームの状態として、強豪オーストリアにやや元気がなく、エースのシュリーレンツァウアーと若きクラフト、ハイベック、ディートハルトが次代の中核となり始める様相。好調フロイントにリードされてベリンガーやヴァンクなどが復活してきそうなドイツ。はたまた一発屋が揃うノルウェーは、その豪快さを取り戻したい。
あるいは浮き沈みはあるが、まとまりの良いスロベニアに、ファンが熱狂するポーランド勢のストッフやコットなどが使うあの2本バーのビンディングは、果たしてスキーの安定をもたらしたのかなど、じっくりと探らなければならない。
日本チームは来季につなげるべく、勢いにあふれる清水礼留飛(雪印メグミルク)に期待を込めたい。また戦力強化のためには10代の若手選手の登場を待ってもいる。
そして膝の故障により終盤戦は欠場した伊東大貴(雪印メグミルク)と、帰国して病気の治療にあたる竹内択(北野建設)の復調も楽しみだ。
女子ジャンプでは高梨沙羅(クラレ)が、五輪明けすぐに個人総合優勝を決めて、最終戦のプラニツァでクリスタルトロフィーを得る。さらに続く伊藤有希(土屋ホーム)はファルンで2位表彰台に立ち、上昇機運をアピールしている。
まだまだドラマがあるW杯ファイナル、雪が少なくうららかな日差しを浴びつつ、シーズンの総仕上げ、笑顔の選手たちにエールを送りたい。
〔写真5〕葛西紀明(土屋ホーム)の持つプラニツァ147.5mのバッケンレコードは旧LHシャンツェでの大記録
〔写真6〕プレフツを筆頭に今シーズン台頭したスロベニアは団体戦においても上位入り濃厚
(クリックで写真拡大)
Photo & Text by 岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
アルペンスキー FIS ワールドカップ 2024/25 男子 スラローム レヴィ/フィンランド(11/17)
11月17日 午後5:45〜
-
アルペンスキー FIS ワールドカップ 2024/25 男子 ジャイアントスラローム ゼルデン/オーストリア(10/27)
10月27日 午後5:45〜
-
10月26日 午前10:20〜
-
世界で躍動SNOW JAPAN!FISワールドカップ2024/25 ~スキー&スノーボード ナビ~
11月12日 午後2:30〜
-
町田樹のスポーツアカデミア 【Forum:今シーズンのルール改正点とISUの中期ビジョン】 #16
10月22日 午後9:00〜
-
フィギュアスケーターのオアシス♪ KENJIの部屋 【宇野昌磨】
9月17日 午後10:00〜
-
スノーボード FIS ワールドカップ 2024/25 男女 ビッグエア クール/スイス(10/19)
10月19日 深夜2:50〜
-
町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 ~現代におけるコーチの存在意義を求めて 日本体育大学 体育学部 佐良土茂樹准教授#15
9月24日 午後12:30〜
【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 ~現代におけるコーチの存在意義を求めて~ 日本体育大学 体育学部 佐良土茂樹准教授
J SPORTSで
スキーを応援しよう!