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スキー コラム 2013年3月22日

世界選手権の混合団体金メダルに沸く日本チームとその勢い

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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前年夏場に行われたサマーグランプリで勝利していた混合団体戦。
「世界選手権でリベンジしたかったんです」
アンカーを務めた竹内択(北野建設)がそう言い放った。
それは冬のW杯開幕戦のリレハンメルで2位に終わったことからだった。

リレハンメルの借りをバルディ・フィエンメ世界選手権(イタリア)で返したい。
この想いで選手全員の心がいっぱいになっていた。

日本チームは伊藤有希(下川商高→土屋ホームに入社内定)、伊東大貴(雪印メグミルク)、高梨沙羅(グレースインターナショナルマウンテンスクール)、竹内の若き4人でミックス団体を組んでいた。

1月中は膝の治療と調整にあたっていた葛西紀明(土屋ホーム)は、後見役のような温かい存在でフィニッシュエリアにすっくと立っていた。それは背中でジャンプ選手の何たるか模範を示すと共に、他強豪チームからの異様なまでの圧力をブロックする役割を担っていた。

対抗するのはオーストリアチームだ。大ベテランのイラシュコがケガで欠場しているが、男子でモルゲンシュテルンとシュリーレンツァウアーのビッグ2が構え、女子のトップクラスに位置するザイフリーズベルガーに小柄な1997年生まれの新鋭ホルツルを擁した優勝候補。

「みんなの足を引っ張ってはいけないと、それだけで飛びました」
悲壮感を帯びて飛んでいた伊藤を元気づけるがごとく伊東、高梨、竹内が見事なまでにプレッシャーをはねのけ100m台を6本揃えての圧勝。
伊藤は感極まりそこに泣き崩れた。それを優しくかばう3選手、その写真が世界を駆け巡った。これこそチームワークで得た金メダルだった。

それでも主役は男子団体戦に勝利したオーストリア勢、続いて好調のドイツ、さらに個人戦を制したポーランド、まとまりがでてきたスロベニア。その構図が見えた2013世界選手権。ただ、ノルウェーはここ一番で詰めの甘さが出て後退、それも国民性から?しかるに納得であった。

この上位5チームに鋭く組み入っていきたい来シーズンのジャパンである。

さて、女子はすでに個人総合優勝を決めていた高梨沙羅とサラ・ヘンドリクソン(アメリカ)が、最終ノルウェーシリーズで熾烈な優勝争いを見せていた。トロンハイムNHと名門オスロ・ホルメンコーレンのラージヒルで、高梨は果敢に挑んだが2位に敗れ去った。というのも日本チームのスキーロストというアクシデントがあり、また世界選手権金メダルと最終のW杯に2連勝というスポンサーへの好アピールが、必要不可欠であったサラの集中力が、ほんの少しだけ勝ったことに他なるまい。

そしてクリスタルトロフィーを獲得した高梨沙羅にはロングジャンプのツケが現れた。抜群の飛距離を打ち出すがゆえの着地、その衝撃の蓄積が膝にきていたのだ。
サラに勝つためには、より飛距離を出してテレマークを決めるであるが、ラージヒルでは膝の負担が異常なまでとなる。そのせめぎ合いに、毎試合、辛さが見え隠れしていた。

さあ、いよいよ男子最終戦プラニツァのフライングW杯。
いつものお祭り騒ぎ、暖かい晴天で汗ばみ、スキーウエアはもうお役御免となる。そういった、うららかな気候にスロベニアビールやワインも進んでくる。

ならば、この期に及んで選手たちへの細部にわたるスーツチェックなど何の意味があろうか。ということで一応よければ、いいんでないかいという風潮にあふれかえる現場だ。
ポーランドやスロベニアの選手の股下が長いかも、ああ、そうかね。まずは安全に飛んでくれや、地元選手も頑張って試合を盛り上げてくれよ。というような状況において、なにをどう厳しくあたりなさいというのか。

正直、シャンツェはそんな、まったり感に包まれている。

優勝記録を50勝までに伸ばすか、もはや達観の域に近づきつつあるシュリーレンツァウアーに、注目の飛ばし屋のコッホは?
そしてカミもジラもコットも、テペシュもロベルトもプレフツも、最後におおらかに飛んでくれ、なのだ。すべからく祭典、ロングジャンプのショーとなり得るフライング。

山に向かって右手にはNHとあの幻のLHが新しく改修され、復活を遂げた。
そこで2015世界選手権に立候補したがファルーン(スウェーデン)に、主にクロスカントリースキーの充実度で敗退したプラニツァだ。

いつも華麗なる飛翔を、ここは、それで良いではないか。
まずは、ゆったりとシーズンエンドを楽しもう。
(Text & Photo by 岩瀬孝文)

[写真1]久々の世界選手権金メダルとなった混合団体戦。左から伊東大貴(雪印メグミルク)、伊藤有希(下川商高)、高梨沙羅(グレースマウンテンインターナショナルスクール)、竹内択(北野建設)。
[写真2]ホルメンコーレンで果敢に飛び出していく小林潤志郎(東海大)は母校のインカレ制覇に大いに貢献していた。

[写真3]W杯後半戦にやや疲労感が出てきた様子にあった竹内択(北野建設)だがこれも良き経験のひとつ。
[写真4]世界有数の名門シャンツェLHオスロ・ホルメンコーレンのランディング上部にきりりと立つノルウェー軍楽隊。

[写真5]つねに温かい眼差しでチーム全体を見つめ続けた葛西紀明(土屋ホーム)その存在はとても大きかった。
[写真6]W杯個人総合優勝のクリスタルトロフィーを手にした高梨沙羅(グレースマウンテンインターナショナルスクール)。

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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