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新進のジャンプ台クリンゲンタール(ドイツ)で開催されたW杯で1、2本目ともに130m超の素晴らしいビッグジャンプを揃えた竹内択(北野建設)が、第2位に入ってきた。
それも荒れた強風の中、抜群のコンセントレーションを持ってだ。
「とにかく集中すること、それだけでした」
大きな前進を遂げた竹内だった。
強豪ノルウェーのシュトックルヘッドコーチなどは、このとんでもない風のなかで飛ばせるなんて、どういうことだと運営側を批判していた。
そういえば、かつて、クオピオの高校に留学してトレーニングしていた時分、クーサモのW杯(フィンランド)で、これも荒れ狂う風のなかテストジャンパーとして果敢に飛び出して行った竹内だった。あのときは若きトマス・モルゲンシュテルン(オーストリア)が真っ逆さまの大転倒に見舞われていた。
それはフィンランド流の気の強さと責任感の表れなのであろうか、どこまでもタフなメンタルで飛んでいく竹内択。それに比べれば、クリンゲンタールの風なんて、そんな心境でもあったようだ。
フライングジャンプは、200mオーバーの飛距離が期待されるだけに、その楽しみは大きい。
この名門シャンツェ、南ドイツのオーベルスドルフFHで躍動したジャパンだった。
復調をみせて予選で198.5mを飛び、首位に立った伊東大貴(雪印メグミルク)は6位。
しかも若手の小林、清水、渡瀬、竹内の4人でメンバーを組んだ団体戦は、先に可能性を秘める5位につけた。
バルディ・フィエンメ世界選手権(イタリア)は、2014ソチ五輪の前哨戦となる。ここでメダルを手にした選手は限りなく五輪のメダルに近づく。
日本チームは復調著しい伊東大貴(雪印メグミルク)に、新鋭の清水礼留飛(雪印メグミルク)と長身選手の渡瀬雄太(雪印メグミルク)と、バネのある小林潤志郎(東海大)がいる。
そしてなによりも、大ベテランの葛西紀明(土屋ホーム)が国内で膝に関してじっくりと調整中にあること。この葛西の合流がチームに勇気を与える。
海外有力勢に重圧をかけるにはこの重鎮ジャンパー葛西の存在が必要となる。いまだ若手のみでは、強豪チームから様々なプレッシャーを受けて、飛ぶ以前に、もはやという状況になるケースが出てくる。そこにすっくと立ち、その欧州での名声とともに正面から打破してしまう。もはや葛西とは、そういう存在なのだ。
現在、世界選手権を前に調子を伸ばしてきているのはスロベニア、オーストリア、ドイツ、ノルウェーあたり。
ここにきて、ジャンプスーツについてだがシーズン中でも限りなく進化を続けている。それは女子においても同様にドイツチームの新型イエローモデルのペンギンタッチ、さらにスロベニアの股下ロングなどなど。
では、日本は遅れているのかといえば違う。つねにフィールドにおいてクリーンと潔さがあるジャパン。各国のオリジナルモデルにすぐにチェックを入れて、対応策を取るのだが、どうなるかといえば、素晴らしい飛べるスーツを作る、それに対して「また、日本が…」とすかさず待ったがかかり、結局、使用できなくなる。
概して、これが予想される。けっしてスーツ開発において後手に回っているわけではない。
特に女子選手のサイドカットのティアドロップカットは、日本の開発でオープンに世界中の選手に広まったものだ。日本のメーカーには確かな技術力と実直さがある。
それらは、このクリンゲンタールのラージヒル2位で竹内が見事に証明してくれた。まさしく胸をすく思いにさせられた。
さらに驚異の飛躍力を見せる女子ジャンプ、高梨沙羅(グレースマウンテンインターナショナルスクール)も同様に、輝きのロングジャンプを見せて圧勝を重ね、ついにはW杯個人総合優勝を成し遂げた。しかもメディアには、いつもていねいな受け答えをすることで評価が高い。
さあ、胸を張って2013バルディ・フィエンメ世界選手権そして後半戦のW杯に望んでいこうニッポンジャンパー。まずはミックス団体戦、その表彰台がターゲットだ。
もうひとつ、フィンランドに膝のケガでリハビリにあたる名選手ヤンネ・ハッポネンがいる。彼やクオピオでジャンプする子供達のためにマジック・マンデイというバスケットボールイベントが行なわれる。
それは3月11日の夜、クオピオ市内にて。ジャンプ台プイヨの丘でひとりたたずむ、ハッポネン。その物悲しいモノクロフィルムは秀逸である。
これには、仲間のシュリーレンツァウアーもアマンもコッホも、ノルウェーチームもビデオレタータッチで協力している。
こういうのもW杯ジャンプならではの清々しさ、ほっとさせられる瞬間である。
(Text & Photo by 岩瀬孝文)
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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