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長距離ジャンプとは美しきもの。
ノルウェー勢が勝利を狙った地元ヴィケルスンのフライングは、適正な飛距離設定がなされ、驚異の250m超えがみられずにいた。
そのなかでも札幌W杯遠征を回避していたグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)が240mオーバーで優勝、好調さをアピールしていた。
続く、フライングW杯ハラホフ(チェコ)は、葛西紀明(土屋ホーム)が大好きなジャンプ台だった。
かつて若き時代の葛西がきれいなロングフライトをみせて優勝した地、懐かしさは当然のようにあり、いまでも飛んだら表彰台とのグッドイメージがある。
今回、優勝したのはシュリーレンツァウアー。素晴らしいことに、W杯優勝新記録の47勝をあげた。それを達成した翌日の試合も、強風で1本勝負となりながら、それこそ勢いの波に乗って連勝を飾り、一気にW杯48勝を達成してしまった。
それまでW杯46勝の記録を保持していたマッティ・ニッカネン(ヌカネン:フィンランド)とフィンランドスキー連盟は、すぐさま祝福のコメントを発表、シュリーを祝った。これには、さすがにジャンプの名門フィンランドとの印象を強くした。また、日本選手は札幌W杯直後のハラホフとあって、試合をキャンセルして、国内試合に集中しつつ調整の期間に置いた。
さて、休養充分の日本勢は北ドイツの巨大シャンツェのビリンゲンに若手中心の5選手を送り込んだ。
右膝が回復しつつある伊東大貴(雪印メグミルク)、気合充分の竹内択(北野建設)、先のジュニア世界選手権で良き経験を積んだ清水礼留飛(雪印メグミルク)、長身選手の渡瀬雄太(雪印メグミルク)、バネのある小林潤志郎(東海大)がこのビッグヒルで果敢なジャンプをみせてくれるはずだ。
このビリンゲンの台はいわゆる面(つら)の長いシャンツェ。
ここも葛西と伊藤らが得意とするジャンプ台で、良き順風にあたれば150m近くまで飛距離を伸ばせることができる。そこまでショーアップするような運営をするかどうかだが、通常において4万人とも5万人ともいえる北ドイツ近隣からの観客が入りきる会場だけに、その皆が縦列に並んで、道を静かにジャンプ台に向かうシーンは壮観この上ない。
[写真1]ビリンゲン大会からのドイツシリーズ中は国内に残り順調に膝の調整を行なっている葛西紀明(土屋ホーム)
[写真2]孤高のロングジャンパーが札幌の表彰台に上った左からクラニエッツ(スロベニア)、優勝したマトゥーラ(チェコ)、ヴァンク(ドイツ)
ビリンゲンのあとには、ドイツシリーズとしてクリンゲンタールそして伝統的なフライング台のオーベルスドルフへと進む。
さらに、先には2013バルディ・フィエンメ世界選手権(イタリア)がどんと控えている。各国チーム選手とも、その代表入りをめざした厳しさのジャンプみられる。
この時期、日本国内では女子ジャンプW杯が開催されている。
先週の札幌大会では、初戦でコリーヌ・マッテル(フランス)が勝利、翌日はジャクリーヌ・ザイフリーズベルガー(オーストリア)がうれしい初優勝を飾った。注目の高梨沙羅(グレースマウンテンインターナショナルスクール)は疲労感もあり失速気味となって、残念ながら12位と5位に終わった。
[写真3]国内でのじっくりとした調整で膝の故障から復帰が待ち望まれる伊藤大貴(雪印メグミルク)
[写真4]表彰台に昇れずに終わった札幌大会から蔵王大会で優勝をめざす高梨沙羅(グレースマウンテンインターナショナルスクール)
高梨にとって、昨年初優勝したゲンのいいジャンプ台が山形蔵王、ここで何としてもと連覇に気持ちが入る。
「応援に来てくださる観客のみなさんに、いいジャンプをみてもらえることができれば…」
いつもながらの謙虚で、ていねいな受け答えに終始する彼女だが、勝負にかける胸に秘めた思いと強さは人一倍。
今週、男子のビリンゲン大会と同様に土日に重なるW杯蔵王大会ではあるが、欧州とは時差がある。ジャンプファンにとっては、手に汗握りどちらも楽しみたいところだ。
(Text & Photo by 岩瀬孝文)
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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