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年末年始の最大のイベント、4ヒルズ、ジャンプ週間の4試合が終了。
これは予想した通りにシュリレンツアウナー(オーストリア)とヤコブセン(ノルウェー)が雌雄を決した状況になり、最終的にはシュレリの個人総合優勝となった。
ここで実しやかに語られたのが、ヤコブセンとヒルデの新型ジャンプシューズだった。
飛んでいるときの脚部のシルエットが違う。そして選手控室における行動が目を引いていた。シューズ袋に片足ずつを隠しながらのブーツフィッティングに、他のチーム選手たちから、なぜそうしなければならないかの疑問が抱かれていた。
「ジャンプスーツの下でシューズを固定して、空中でよりスキーをフラットに持っていくことを考えた。どういう仕組みなのかは、まだ言えない」とジャンプ週間中に、プレスサービスをしてくれたシュトックルコーチだったが、それがインナーブーツとアウターシェルの構造にあることを匂わせ、あとは静かに微笑むのみ。地元でシュレリを勝たせたかったオーストリアチームや、報道各社の取材、そしてファンは、けっこうやきもきしていた。
ということでジャンプ週間は、完全にこのノルウェーチームが話題をさらって、進行していったのである。
それにしてもノルウェーは、チームワークがとても良いのが見て取れた。勝利したヤコブセンの周りには祝福に抱きついたバーダル、ヒルデらの姿が必ずみられ、それはときとしてほのぼのとしたシーンになっていた。
「選手みんなで協力し合うこと、一人の喜びはチーム全員の喜び、もちろん私もうれしいし、とにかく全員で喜び合い、またそれを求めながら試合にアタックしていこうと、それをいつも伝えていた。ただ、それだけなんだよ」
シュトックルコーチは第一にチームに和を求め、それが、機が熟すとともに、大きなまとまりに打って変った。
先週土日に行なわれた札幌W杯では、ヤコブセンが大倉山の乱れた風にしてやられ、思わず、スキーを脱いであたりに放り投げてしまう。また強者バーダルも飛距離が伸ばせずに笑顔が見られない。ところがそういうときに、心優しき好青年のヒルデが、しっかりと2本まとめて上位の成績を残した。
その札幌で、風を切り裂くような鋭いジャンプを見せて2連勝したヤン・マトゥーラ(チェコ)。日曜日の試合、飛んでいれば優勝の可能性が高かった伊東大貴(雪印メグミルク)はなぜか集中力にかけた状況になり、スタートバーで手を滑らせ、およそ80mの距離をずり落ちてしまった。これは、まさかのアプローチ転倒だった。
そこでにやにやしていたのが、かつてザコパネの台で同じようにアプローチ転倒をして、ずりずりと滑落していったヴォルフガング・ロイツル(オーストリア)、先に飛び終えたフィニッシュエリアで、どうにもバツの悪そうな顔でいて、少し照れくさいような表情をも見せた。
さて、素晴らしいロングジャンプが期待できるヴィケルスンのフライングW杯。
長距離ジャンパーのコッホにシュレンツアウナーのオーストリア勢、そして先の3人に加えてベルタ、ファンネメルがどんと構えるノルウェー、そこにロモレンや往年のインゲブリクセンがいないのは残念ではあるが、それぞれが一発を秘めている。
さらに、好調クラニエツなどのスロベニアに、ストッホらのポーランド、あるいはヴァシリエフのロシアあたりが上位に食い込むべく、果敢に飛距離を伸ばしてくるはずだ。
巨大フライングヒルのヴィケルスン、とりもなおさず、ここでノルウェーチームはファンの大声援と、風を知る地元の利を十二分に活用して、大いなる飛翔をみせてくれることだろう。
(Text & Photo by 岩瀬孝文)
[写真1]トム・ヒルデ(ノルウェー)がふくらはぎに着用していた円筒形の固定スパッツ。足首までフォローしている可能性がありスキーを安定させていた
[写真2]アンデシュ・ヤコブセン(ノルウェー)はさらにコルク木製のすねあてを装着して、きつく固定させることで飛距離と成功を導いた
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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