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フィギュア スケート コラム 2021年7月15日

町田樹のスポーツアカデミア 【Archive:フィギュアスケート・ザ・マスターピース】 アダム・リッポン「牧神の午後への前奏曲」(2013年スケートアメリカ):物語性とその特徴

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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モダニズム

モダニズム

モダニズム

これは端的に申し上げますと、クラシックバレエのルールや常識を逸脱した踊りだということです。先ほども言ったように、クラシックバレエは身体を立体的に見せていきます。プラスアルファ、勢いをつけて大きく飛んでいく動きもあれば、あるいはピルエットと言って回転技もあります。そういうクラシックバレエの典型的な踊りの様式だったりルールを全部この作品では破っているわけですね。例えば、クラシックバレエでは常につま先から歩いていきます。しかし、ニジンスキーはそのルールも無視して、かかとからぺたぺたと歩いていくわけですね。振り返る時も180°反転して次の動作に行く。クラシックバレエでは回転技や大きなジャンプが醍醐味ですが、この作品ではそうした動作は一切出てきません。この作品でたった一度だけ牧神は大きくジャンプしますが、その空中も二次元的な動きで作られていることがわかります。普通、男女で組むときも、組んで立体的に動いていきますが、この作品では牧神がニンフを捕まえて、ニンフもそれに驚いて二次元で構成していく絵画的なバレエになっている。絵画的なバレエを作るということは、立体的な世界を作っていくクラシックバレエのルールを逸脱しているということにもつながるので、この作品はモダニズムという性質が備わっていると言われています。

エロティシズムとプリミティヴィズム

エロティシズム / プリミティヴィズム

エロティシズム / プリミティヴィズム

これは読んで字のごとく官能性だったり原子性を表すものです。クラシックバレエの世界では性的な表現をなるべく控えるということがありますが、実はこの作品ではその直接的な性描写を控えるというクラシックバレエのタブーを破っています。ギリシャ神話の中で登場する牧神は色好みな神様として描かれています。つまり女性が大好きということですね。この作品も牧神がニンフに欲情していくという、その様を描いていく作品なんです。

牧神はニンフと遭遇します。そして、出会った途端、牧神はニンフに欲情するわけですね。それに驚いたニンフは逃げていくわけですが、驚いて逃げる時に自分が身にまとっていた薄衣を落としてしまいます。なおも欲情している牧神はそのニンフが残していった薄衣で自慰行為をして、果てて眠りにつく、そのような表現が描かれている作品です。ですから、このクライマックスで牧神は薄衣で自慰行為をするんですけれども、その自慰行為の描写など、露骨な性的な表現が物議を醸した作品です。

絵画的なバレエ、二次元的な空間を作り、そしてバレエのルールも破り、バレエのタブーを破った。クラシックバレエという従来の枠組みでは捉えきれない全く新しい作品がニジンスキーによって生み出されたのです。ですから、この作品はクラシックバレエではなくて、クラシックバレエから新しく生み出されたモダンダンスになるということです。

アダム・リッポンさんの《牧神の午後》もニジンスキーの《牧神の午後》が備える「ヘレニズム」「モダニズム」それから「エロティシズム」や「プリミティヴィズム」といった特性を備えています。

文:J SPORTS編集部

J SPORTS編集部

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