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フィギュア スケート コラム 2021年7月15日

町田樹のスポーツアカデミア 【Archive:フィギュアスケート・ザ・マスターピース】 アダム・リッポン「牧神の午後への前奏曲」(2013年スケートアメリカ):物語性とその特徴

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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ヘレニズム

ヘレニズム

ヘレニズム

この言葉は簡単に説明すると、古代ギリシャへの回帰を意味するものです。この当時モダンダンスの祖と言われているイサドラ・ダンカンというダンサーがいました。彼女はこのヘレニズムを標榜しており、踊りのインスピレーションを、古代ギリシャ文化から得ていたとされています。このダンカンの影響をバレエ・リュスのメンバーやバクストは受けているわけです。ゆえにこの《牧神の午後》という作品も、ヘレニズムの系譜にある作品だと言えます。

ここに二つの下図があります。レオンバクストが手掛けた舞台美術の下図と、牧神の衣装デザインの下図になります。

下図

下図

右下に女性たち、つまりニンフが描かれているわけですが、古代ギリシャの女性たちが着ているチュニックのようなものを彼女たちも着ています。そして真ん中の丘の上に寝転がってニンフたちを眺めている人物が牧神になります。牧神は半人半獣、つまり下半身が獣で上半身が人間の神様なんですが、そのデザインが衣装にも落とし込まれています。下半身が牛のようなデザインで、上半身は半裸人間の体。そして頭髪は金髪で、少し角が生えてるような形にデザインされています。青い薄衣が配置されていますが、これはニンフが残していった薄衣だと思われます。このような形で、古代ギリシャ文化からデザインも踏襲しているわけです。

こんな逸話があります。ニジンスキーはある日ルーブル美術館に行って、美術館の中を色々歩き回るんですけども、古代ギリシャの壺やフレスコ画からニジンスキーは《牧神の午後》の振付を着想したと言われています。そのフレスコ画や壺がどのようなものだったかと言うと、全部二次元で描かれています。例えば、エジプトのピラミッドの壁画なんかは二次元で描かれているかと思います。こういう古代文明の壁画から着想を得て舞台の上を二次元の空間にしてしまおうということで、《牧神の午後》を創造しました。

普通、クラシックバレエというのは身体を立体的に見せていきます。例えば、正面を向くのはアンファスという角度です。それからクロワゼという身体をクロスさせて立体的に見せていくような動きもあれば、エファセという斜めに開いていって、身体の美しいラインを作る技法もあります。こうした、身体を立体的に見せていくクラシックバレエのルールを全部無視して、ニジンスキーは、エジプトやギリシャのフレスコ画、それから壁画のように、身体を二次元に見せていく。こういうような形でバレエを創造できないかということで、振付が創作されていたようです。ですので、そういう《牧神の午後》の特徴を捉えて、よく舞踊会では《牧神の午後》を絵画的バレエという風に言います。それはこの作品が全部二次元の空間で構成されているからなのです。

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