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フィギュア スケート コラム 2019年1月16日

~華麗なる舞~ 番外編 田村岳斗に聞く! 其の二

フィギュアスケートーーク by J SPORTS 編集部
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2022年の北京五輪に向けてスタートした2018-19シーズン。例年とは違い、4年後に向けた戦いは早くも熾烈を極めている。その中で、GPファイナル初制覇を果たした紀平梨花選手をはじめ、宮原知子選手、白岩優奈選手らを、濱田美栄先生とともに指導する田村岳斗コーチに、前半戦を振り返ってもらいました。

「2018-19前半戦。GP6戦で3勝。さらにGPファイナル制覇までの軌跡」

― 2018-19年シーズンの前半戦は、オリンピック後の最初のシーズンとしては異例とも言えるハイレベルな戦いが続きました。その要因はなんでしょうか?

田村 女子も男子も平昌五輪の金、銀メダリストが今シーズンも出ているところが大きいと思います。五輪のメダリストが引退したり、ケガの治療で休んだりということが多いのですが、平昌五輪以降も複数のメダリストが質の高い滑りを見せ続けてくれることで試合が盛り上がりました。GPファイナル女子はアリーナ・ザギトワ選手がいたからこそ、他の選手にとっても目標になり、スケートファンもチャンピオンの滑り、他の選手がどう戦うか見たいという気持ちになったでしょう。ザギトワ選手は、身体の変化、国内の下の世代の追い上げもあって大変な面もあると思いますが、彼女が出続けているからこそハイレベルな戦いが続いていると思っています。

― 今回、GPシリーズには、濱田先生・田村コーチのチームから、宮原選手、紀平選手、白岩選手の3人が出場し、GPファイナルでは紀平選手が初優勝を決めました。

田村 GPシリーズ6戦ある中で3勝できたことは、足りない事はまだまだありますが、そんなに大きく間違えていないのかなという自信になりました。GPファイナルの優勝は初めてのことですので、本当に嬉しかったです。6人しか出られないファイナルに紀平、宮原2人の選手が入った事を誇りに思います。ファイナルで宮原は負けたとはいっても選ばれたスケーターだけが出られる世界のトップ6。もちろん反省や悔しさはありますが、成績がちょっと落ちただけで、スケートに取り組む姿勢や人間性が落ちたわけではない。優勝した紀平もノービスの頃からそんな宮原をみて成長してきました。

― 改めて、紀平選手の成長についてどのように見ていますか?

田村 安定しないという感じに映るかもしれませんが、そうは言ってもシニアの1年目です。ジュニアの時代を考えれば、ずいぶん安定してきたと思います。失敗も含めて、いろいろ経験していく時期だと考えています。彼女が本当にすごいなと思ったのはフランス杯フリーの2A+3T。2日間トリプルアクセルなしで勝ちました。自分の状況を理解し、最低限自分のやるべき事、この試合での目的を冷静に判断できた。彼女には、トリプルアクセルだけではなく、全体のバランスが武器だ、他でも得点はとれると何回も言い聞かせてきました。トリプルアクセルにこだわりすぎていれば、悪い状態でもおそらくフリーで2本目に挑んでいたでしょう。決まればいいけれど、不安がある中、まだ気合いだけで乗り切れるようなものではありません。トリプルアクセルを跳びたい思いはもちろんあったでしょうが、ファイナルに進むために、彼女自身が考えてそこを判断できたからこそ、GPファイナル出場、さらにGPファイナルの優勝にまでつながったと思います。今シーズン、トリプルアクセルは試合、練習での成功率も上がった事も大きな成長ですが、シニア1年目16歳での冷静な判断が頼もしい。もし僕が同じ状況だったら? 39歳、まだ冷静な判断はできていません(笑)。

― 宮原選手は、スピードも上がって、調子がいいように見えましたが、

田村 宮原はNHK杯の後に変えたスケート靴がいまいちしっくりこなくて現地でも調整をしたのですが、それが間に合いませんでした。靴だけが原因ではありませんが、今後、試合前の調整をする上で、身体以外の面でも、次からは最善の状況で臨めるようにしたいと思います。

「し烈を極めた全日本選手権。世界トップレベルの争いとなった女子最終組」

― 続いて全日本の結果について、まず女子からお話をおうかがいします。

田村 新チャンピオン坂本花織選手おめでとうございます。今回の全日本は、坂本選手が2日間本当にすばらしい滑りを見せました。フリーの最終滑走であれだけの精神力を見せられたら、参りましたというしかありません。宮原は連覇のプレッシャーもあったでしょうし、紀平も靴の寿命を気にしていたりと、敗因をいろいろ考えますが、それも含めての実力です。どんなに力があっても試合でそれを出しきれるかどうかですから、今回は坂本選手がそれをやりきりました。正真正銘の日本のチャンピオンです。自分に勝てずに相手に勝てるほど全日本は簡単ではない。紀平は2位、宮原は3位。世界選手権代表に選ばれました。今回上手くいかなかった部分を、大舞台でやり直すチャンスを与えてもらえた事に感謝しています。

― そうした中で、細田采花選手がトリプルアクセルをショート、フリー合わせて3本跳びました。これは事件と言ってもいいくらいの出来事でした。

田村 彼女にとっては、全日本でトリプルアクセルを決めるというのが大きな目標でした。僕は3回の挑戦のうち、1発でも跳べたらいいなぐらいの気持ちで見ていました。SPでトリプルアクセルを成功した後に、「目標達成したからフリーをやらないで引退する?」と冗談を言っていたら、ちょうど荒川静香さんが通りかかって、「トリプルアクセルのコンビネーションもみたいからもう少しがんばって」と声を掛けてもらえて。それもいいモチベーションになってフリーの2発のトリプルアクセル成功につながりました。本来なら2年前に引退しているはずの選手が、ここまでやれるというところを見せたという点でも、個人的には大会のMVPでした。細田に関して言えば、すごくトレーニングが好きな選手で、朝早くから陸上トレーニングをしています。そんなところがトリプルアクセルを跳べるようになった要因かもしれません。

― 紀平選手は完璧とはいえない滑りでも、成績はしっかり残しました。

田村 みなさんには紀平のことを褒めていただきますが、浮かれずにやっていきたい。先シーズンから立場が急に変わり嬉しい気持ちもありますし、新しい技に挑戦したいという意欲もあります。「他はどうでもいいから4回転だけは決めてこい」と言えば、すぐにでもそれをできる能力と努力があります。でもその考え方では目指しているところに到底たどり着けないと思っています。紀平はトリプルアクセルだけでなくプログラム全体のバランスがいい選手だと思っています。それを崩してしまうようではどんなに得点の高い技であっても無理をしていれる事は今のところ考えていません。紀平だけでなく、他の選手に関しても同じ考えで先の事も考えながら目の前の試合に対応できる準備はしていくつもりです。4回転やトリプルアクセルは決まれば大きな得点につながりますが、1つのプログラムを完成させる上で色々な面でリスクも増えますから、選手それぞれの成長やタイミングを考えながら取り組んでいく事が大切だと思っています。そして、周囲の盛り上がりに惑わされずに冷静にやっていく事も必要になってきました。彼女もまた練習熱心な努力家で、素直さもあります。

宮原選手

― 宮原選手に関しては、フリーで、フリップのミスが響きました。

田村 プラスに考えれば、宮原にとって切り替えるいい機会かなと思っています。この4年間、日本のチャンピオンとして、自覚はないかもしれないけれど相当重いものを背負っていたと思います。4連覇もしていればベテラン扱いされるのは仕方がないけれど、彼女もまだ20歳。彼女自身、うまく滑れなかった悔しさもあるでしょうし、まだまだ上達できる、やれることがあるという意識は依然として高いです。「連続防衛」や「連覇」もスポーツの楽しみですが、うまくいかない時があるからうまくいった時の喜びも大きい。

「2018-19シーズン後半戦 これからの男子はどうなる?」

― 宇野昌磨選手についておうかがいします。ケガがあって完全な滑りはできなかったのですが、見事に連覇を果たしました。

田村 宇野選手、全日本連覇おめでとうございます。

今回の宇野選手の全日本の滑りに関しては、演技内容ではなく、ケガが悪化しないで欲しいという思いだけで見ていました。今シーズンの最終的な目標は、日本開催の世界選手権でしょう。 これは宇野選手だけでなく、羽生結弦選手にも言える事ですが、どんな状態でも出場した試合は、出し切って勝ちたいという気持ちが強い。その気持ちもわかりますし、尊重したいと思いますが、あの状況ではコーチの立場としてはとても心配だったと思います。

そういう気持ちの強さがあるからこそ世界選手権やオリンピックでメダルを獲れる選手になったと思いますが、今はとにかく世界選手権までにしっかり回復して欲しいと思っています。

― 今シーズン復帰した高橋大輔選手(「高」は本来ははしごたか)についてはどうでしょうか?

田村 西日本(選手権)以降、短期間でフリーに4回転を入れるようにしてきましたから、体力的な面に影響があったと思います。後半はさすがに苦しそうでしたけど、それも含めて競技の場に戻ってきた楽しさを感じている滑りに見えました。今回の復帰は、彼だけでなく、他の選手、ファンのみなさんにも大きな刺激と影響を与えたと思います。高橋選手にはそのつもりは全くなかったと思いますが、「いくら元世界チャンピオンとはいっても、4年も競技から離れていた人間に負けている場合じゃないぞ。」と感じた選手が多いほど日本男子は強くなると思っています。

― 男子ジュニアの活躍も目立ちました。

田村 島田高志郎選手は最終滑走になって少し緊張が大きかったかもしれませんが、SPでは十分力を見せました。鍵山優真選手も内容がよく、壺井達也選手もジュニア王者らしい滑りでした。木科雄登も含め、入賞8人のうち、4人がジュニアからの推薦です。今シーズンのジュニアGPシリーズでは、日本男子の表彰台の数が増えて、着実に男子の若い選手が伸びているのを感じました。

― これから後半戦ですが、全米選手権と欧州選手権が開催されます。それぞれの見どころはどんな点でしょうか?

田村 全米は、ケガなどの問題なければネイサン·チェン選手が優勝でしょう。世界チャンピオンになって、自信が付いてきたと感じさせる滑りをしています。彼の場合、跳べる4回転ジャンプの種類が多いのですが、4回転を5発、6発というよりも、今シーズンはその時点で調子のいいジャンプでプログラムを構成しているように見受けられます。それもいい方向にいっているのかなと思います。全米では彼が頭一つ抜けている存在で、続くのがジェイソン·ブラウン選手かなと思いますが、4回転がまだ跳びきれていませんので、そこが鍵になりそうです。ヴィンセント・ジョウ選手も複数種類の4回転がありますので十分表彰台候補です。アメリカもジュニア選手が成長しているので、そちらも注目でしょう。

― 欧州についてはどうでしょうか?

田村 欧州は、今大会で引退と言われているハビエル·フェルナンデス選手が6連覇中です。7連覇で有終の美を飾るのか? それとも阻止する選手がいるのか? は見どころだと思います。気になるのは、フェルナンデス選手が今シーズンのルールでまだ滑っていません。もちろん実力的には心配ないのですが、どんな滑りになるのか、楽しみです。対抗馬となるのは、ロシアのマキシム・コフトゥン選手。ロシア選手権で久々の復活優勝を果たしました。彼も4回転は2種類持っています。そのほか、チェコのミハル·ブレジナ選手など、ベテラン勢の活躍が目立つ欧州ですが、全米同様、そうしたベテラン選手に対して、若い選手がどのくらいやるか?は期待したいですね。

― 3月にはさいたまスーパーアリーナで世界選手権が開催されます。少し気が早いですが、どのような戦いになると考えていますか?

田村 世界選手権はまずは日本の2人の優勝候補選手のケガの回復具合によっていろんな展開になると思います。2人が健康であれば2人ともメダルを獲る可能性は高いです。もしそうでなければ新しいメダリストの誕生もありえます。羽生選手にとっては、初めて世界選手権で勝ったのも、今回と同じさいたまスーパーアリーナです。同じ場所でもう1度勝つという展開を期待しているファンも多いと思います。そして、宇野選手も世界タイトルまであと一歩まで来ています。2人が最高の滑りをして、そこにネイサン·チェン選手らが絡んで、高いレベルでの優勝争いを期待しています。

宮原のおかげで、ドクターイエローが見られました。

インカレ前。記念乗車してきました。

インカレ後。ポストと撮影してきました。

※掲載写真は、すべて選手の許可を得ています。
J SPORTS編集部

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