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ペトロキナが歴史的快挙を達成!エストニア人として初の金メダル「まだ何が起こったのか理解できていない。ただただ衝撃」 | ISU欧州フィギュアスケート選手権2025 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部歴史的快挙を達成したペトロキナ
母国エストニアで、故郷タリンで、ニーナ・ペトロキナ(エストニア)が歴史的快挙を成し遂げた。アリーナに鳴り響く大歓声に背中を押され、観客席に掲げられた無数の国旗や応援パネルに勇気をもらい、エストニア人フィギュアスケーターとして史上初めての欧州チャンピオンとなった。
「この場に来てくれた全ての人の応援に感謝しています。でも正直に言えば、まだ何が起こったのか理解できていませんし、自分が今どんな気分なのかさえ、よく分かりません。ただただ衝撃です」(ペトロキナ)
欧州ナンバーワン決定戦にふさわしく、ハイレベルな演技が続いた。特にSPショートプログラムは、トップ3が揃ってノーミスのパフォーマンスを実現。SP1位アナスタシヤ・グバノワ(ジョージア)は質の高いジャンプでGOE出来栄え点を積み重ね、SP2位ペトロキナは、高配点の3回転ルッツ+3回転トーループを危なげなく着氷した。
ペトロキナはPBパーソナルベストも更新。いまだジュニアとの掛け持ちだった一昨季の記録を、約2年ぶりに塗り替えた。対してSP3位キミー・レポンド(スイス)は、なんと今季4度目のPB。昨季は転倒や回転不足に悩まされた3回転ルッツを、成功率の高い3回転ループに入れ替えた効果だった。
しかもレポンドは今回のSPで参加者中唯一、全ジャンプ成功・オールレベル4も達成している。SP4位ニーナ・ピンザローネ(ベルギー)もスピンとステップをすべてレベル4で揃えた。ただ今季ここまで一度もクリーンにこなせていない3Lz+3Tで、またしても回転不足を取られた。
SPを終えてグバノワが68.99点で1位に立つも、SP2位ペトロキナとの差はわずか0.05点。レポンドも首位までたったの0.31点差でしかなく、シーズンベストを出したピンザローネも、表彰台まで2.08点差につけていた。凄まじい接戦だった。
「これほどの好成績が並んだなんて素敵なことですし、大会をより面白くしてくれます。みんなの幸運を祈ります」(グバノワ)
緊張感あふれる戦いだった。「ストレスはそれほど感じなかった」と、FSのレポンドは鮮やかなスピードに乗って、いつも通りゴージャスな演技を披露した。ただジャンプで2つの転倒と回転不足があった。また「疲れが出た」という最終3つのエレメントで、レベルも取りこぼした。FSだけなら5位で終えた。しかし2年前に欧州3位に飛び込みながらも、昨季は腰の故障に長らく苦しんだからこそ、レポンドは「欧州4位は誇るべき成績」と胸を張る。
「もちろん演技には満足できませんが、失敗の原因は分かっています。大会の1週間半前に体調を崩してしまい、十分に体力を回復できていなかったんです。改めて世界選手権へ向けて集中します。もちろん次は体調を崩さないように」(レポンド)
ピンザローネは「考えないようにしていたが、考えすぎた」と、FSでは重いプレシャーに苦しんだ。氷上ではすべてのジャンプをよどみなく飛んだが、しかしスコア表には、「q(4分の1回転不足)」が3つ、「<(2分の1回転不足)」が2つ、「!(踏切エッジが不明瞭)」が1つ並んだ。一方で繊細かつ端正な滑りは、プログラム終盤になればなるほど輝いた。レポンドとは逆に最終3つのエレメント――スピンとコレオシークエンス――で、レベルもGOEも、誰よりも高い評価を勝ち取った。見事に逆転を成功させ、2年連続の欧州銅メダルを持ち帰った。
「技術面でミスがあったことは理解しています。ただ、今季は、芸術的な面で大きく成長しました。今後は両面を上手く融合していきたいと思っていますし、練習へのモチベーションをさらに高めてくれます」(ピンザローネ)
2年前のユーロ女王、グバノワもまた「いつも以上の緊張感」の中で、凛として戦った。エフォートレスで、ノーブルな滑りはいつにも増して研ぎ澄まされ、天の川を模したドレスをまとい、壮大な空間の広がりをも感じさせた。「q」と「<」が1つずつついた以外、ジャンプで大きなミスは犯さなかった。ただ首位の座を守り切るには、十分ではなかった。最終盤で息切れが目立ち、レベルをいくつも取りこぼした。それでも今季ここまで不振にあえいできたグバノワにとっては、シーズン最高の出来。総合でもシーズンベストを出した。
「浮き沈みの激しいシーズンでしたから、第一の目標は、これまで取り組んできた成果を発揮することでした。それが上手くいったことを嬉しく思います。試合はいつだって新しい経験で、私たちにとっては、決して簡単なことではありません。だから最大限の力やベストを発揮できた時には、素晴らしい気持ちになるんです」(グバノワ)
欧州表彰台経験者たちが、それぞれ小さなミスに苦しんだのに対して、初めてのISUチャンピオンシップ表彰台をかけた大一番で、ペトロキナは人生最高のスケートを披露した。
今季のフィギュアスケート界を席巻する「デューン」の、エキゾチックな音色に乗って、冒頭から、ペトロキナは次々とジャンプを成功させていく。力強い踏切に、流れるような着氷。今大会の女子としては最難関コンビネーション、3Lz+1Eu+3Sも完璧にまとめた。
最終盤になっても勢いは衰えなかった。あらゆるスピンもステップも、レベル4で評価された。女子FSでは唯一の全ジャンプ成功・オールレベル4。TES技術点の74.53点は、今季シニアで5番目に高い得点で、PCS演技構成点では、人生で初めて3項目すべてが8点台に乗った。
……ほぼパーフェクトだった。1点を除いては。3本目のジャンプを難なく終えた直後に、突然、前のめりに氷へと倒れ込んだのだ。不幸中の幸いだったのは、エレメント中の転倒ではなかったこと。GOEに影響はなく、純粋なる「減点1」だけで済んだ。しかもペトロキナにとっては、これが大いなる発奮材料になったという。
「あの小さな転倒のおかげで、『リカバリーしよう』とすべてのジャンプで頑張れたし、残りをクリーンに滑り切ることが出来たんです」(ペトロキナ)
最後まで集中力は切らさなかった。演技後は感動に飲み込まれそうになったが、ぐっと我慢した。それでも、これまでのPBを一気に10点近くも更新する139.24点という高得点がアナウンスされると、もはや溢れ出る涙を止めることなどできなかった。
「私が泣き虫と呼ばれているのは知っています。どうすることもできないんです。演技のたびに自分のすべてを出し尽くしてしまって、涙を抑えるのが難しいんです。もしかしたら、私は、少し子供っぽいのかもしれません」(ペトロキナ)
SP、FSともにPBを大幅に更新し、当然、総合の208.18点もPBだった。2023年秋にエストニア人として初めてGP大会の表彰台に乗ったアメリカ大会の得点を13.63点も上回る、とてつもない成果だった。
過去10年で6度のISUチャンピオンシップを開催し、コロナ禍には四大陸選手権さえ引き受け、さらに今年はクロアチアの開催返上で半年前に急遽ユーロを迎え入れたエストニアにとってもまた、これ以上ないほどの朗報だった。1年前は男子のアレクサンドル・セレフコが、エストニア人シニアとして史上初めてISUチャンピオンシップの表彰台に乗り、今年は史上初めての金メダリストの誕生。ちなみに来年2026年には、またしてもエストニアのタリンが、世界ジュニアの会場となる!
「エストニアのフィギュアスケートのレベルは大きく上がりました。小さな子どもたちは、以前よりも高い希望を胸に大会に臨めるようになりましたし、私に負けないくらいみんな生懸命スケートに励んでいます。だからこそ今大会の結果が嬉しいんです。私にとっても、エストニアにとっても」(ペトロキナ)
5位には初出場アンナ・ペッツェッタ(イタリア)が食い込んだ。来年オリンピックの開催地となるイタリアにとっては、欧州優勝5回+表彰台6回を誇るカロリーナ・コストナー以来の好成績であり、しかも6位にはララ・ナキ・グットマン(イタリア)が続いた。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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