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J SPORTSスペシャル 田村岳斗インタビュー
1998長野から20年。2018平昌、そして2022北京へ
フィギュアスケートーーク by J SPORTS 編集部
● VOL.4 2018平昌オリンピック~その先の未来へ
毎シーズンJ SPORTSウインターブログ「田村岳斗-華麗なる舞-」で、男子を中心にフィギュアスケートについて熱く語ってくれている田村岳斗コーチ。オリンピックイヤーの今シーズン、特別にインタビューという形で登場してくれました。平昌オリンピック、世界フィギュアに出場する宮原知子選手、世界ジュニアに出場する紀平梨花選手。初めてシニアでのシーズンとなった本田真凜選手、白岩優奈選手等、平昌オリンピックフィギュアスケート男子シングルの動向についてもおうかがいしました。
【田村岳斗】
1979年5月28日生まれ。現在、スケートコーチとして活躍する。高校3年時(1998年)に長野五輪出場。全日本選手権優勝2度の実績を持つ。現在は、関西を拠点にして、濱田美栄コーチとともにメダリスト育成に務める。
VOL.4
2018平昌オリンピック
~その先の未来へ
―一旦コーチの立場を離れていただいて、オリンピック男子シングルについておうかがいします。
今大会は、どれだけ4回転を跳ぶかがカギになりますが、どのような戦いになると思いますか?
いつもオリンピックの予想をしますが、僕はほぼ当たりません(笑)僕の予想はかなりの確率で外れています。それほどオリンピックでは本番がどうなるかわかりません。常識で考えれば、前回のオリンピックチャンピオンの羽生結弦選手、全日本チャンピオンとして臨む宇野昌磨選手、ヨーロッパ6連覇チャンピオンのハビエル・フェルナンデス選手、4回転ルッツを跳ぶ全米チャンピオンのネイサン·チェン選手、四大陸チャンピオンのボーヤン·ジン選手。彼らの名前が挙げられますし、おそらくそのなかから金メダリストも出るとは思います。ただ、本当になにが起こるかわからない。僕が注目しているのは、田中刑事選手です。
―田中選手は、全日本のフリーで見事な4回転トウループを成功させました。
田中選手が試合で4回転トウループを跳んでいた記憶が僕にはありませんでした。オリンピック代表争いをしている全日本で、公式練習では跳んでいましたが、あの戦況でそれを入れてきた事に驚きました。結果によって勇気なのか、無謀だったのか、みんなそこから言いたい事を言います。
あの場面で完璧なジャンプを決めた田中選手、僕の中で今シーズンの男子でもっともしびれたシーンでした。これで彼も4回転を2種類持っているということになります。もちろん、フィギュアスケートはジャンプ以外の要素もありますが、先に挙げた選手のなかに田中選手が割って入っていくのに十分な可能性を見ました。
―フェルナンデス選手のように4回転2種類でも勝てる選手はいます。
みんながみんなパーフェクトな滑りができたら、4回転の種類が多くて回数を多く跳べる選手が上位になりやすいですが、オリンピックの戦いは必ずしもそうはなるとはいえない。やったからといって必ず決まるほど簡単ではないですし、どの選手も4回転の回数を減らしてくる可能性も十分にあります。もちろんこれは体調、試合の展開、得点差、滑走順によっても変わってくると思います。
これまで多くの選手が4回転に挑戦して人類は5種類の4回転に成功してますが、それは複数の試合にわけての話です。今名前をあげた選手たちにとってはオリンピックとはメダルを取るためで、技に挑戦するためではないのでは?と僕は思っています。勝つために4回転の回数を抑えてくる戦略。そうなると、最初から2種類の選手が安定した滑りを見せるということもあるわけです。
―先ほどの田中選手の話にもつながるわけですね。種類を多く持っている選手の方が、回数を減らすことで、逆によけいなプレッシャーやストレスを受けるかもしれません。
例えば、羽生選手の足の状態がどのくらいかわかりませんが、種類を増やして足に負担をかけるよりも、種類、回数を減らした方がもしかしたらいい結果になる可能性もあるわけです。こればかりはやってみないとわかりません。彼の場合は4回転の種類や回数に頼らなくてもそれ以外の部分で他の選手を上回れます。
一番わかりやすいのはトリプルアクセル。今では4回転の影に隠れていて地味な技かもしれませんが、彼のトリプルアクセルの質であれば、4回転の基礎点を超えられる。どちらにしろ僕たち外野は戦略も含めて楽しみにしていればいいんです。選手、コーチで最善のプログラムを考えているでしょう。結果も気になりますが、それと同じぐらいに彼らがどんな作戦でくるのかに僕は興味があります。さっきも言いましたけど、僕のオリンピックの予想はほぼ外れますから、勝つためにとんでもない数の4回転の跳び合いになる可能性もあります。
羽生選手、宇野選手、田中選手がベストの滑りをして、これから先の日本男子の未来につながる滑りをしてもらうことを願っています。
―平昌後の北京、さらにその先まで見据えていると思いますが、最後に、これからの日本のフィギュアスケートの今後について、ご意見をお願いします。
今はオリンピックでも団体戦があり、男女シングルだけでなく、ペア、アイスダンスの力も重要です。リンクが増えて、多くの選手たちがいい環境で練習に取り組めるようになるといいなと思います。日本全体で考えると、圧倒的にリンクが足りないですし、その環境は決していいとは言えません。普及はもちろん、競技として練習できる環境のリンクが増えていけばと思っています。
男子に関しては、羽生選手、宇野選手の2人がここまで日本男子のフィギュアスケートを世界レベルで引っ張ってきました。この2人との差を縮めようとしている田中選手を見て、同じような気持ちを持った選手が現れてくれると思いたい。女子に関しては、ロシアに勝つ。それを目標に、平昌だけでなく、北京、その先も見据えてやっていきたいと思っています。
(終わり)
J SPORTS 編集部
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