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ゲームをコントロールしたSOマンツ(フィジー)
8月23日に開幕した「アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ 2024」(PNC)は9月14日(土)から、トーナメント形式のファイナルシリーズが始まった。
プールBの日本代表(世界ランキング14位)は、15日(日)にサモア代表(13位)と準決勝を戦うが、もう1つの準決勝は、前日の14日(土)に東京・秩父宮ラグビー場で行われ、プールAのフィジー代表(10位)とアメリカ代表(19位)が激突した。
昨年のワールドカップでベスト8に進出し、今大会で最も世界ランキングが上位のフィジー代表。今大会では、プールAに入り、初戦でサモア代表を42-16、トンガ代表(16位)を50-19と退けて、プール首位で準決勝に駒を進めた。
今年から「フライング・フィジアン」を率いるのは、「スーパーラグビー・パシフィック」の「フィジアン・ドゥルア」を指揮していたオーストラリア出身のミック・バーンHC(ヘッドコーチ)だ。日本代表やオールブラックスでもコーチをしていたことで知られる。そんなフィジー代表は、サモア代表戦からFW(フォワード)2名、BK(バックス)1名の先発を入れ替えた。
フィジー代表 vs. アメリカ代表
キャプテンのHO(フッカー)テヴィタ・イカニヴェレ、元7人制フィジー代表で東京オリンピック金メダリストのFL(フランカー)メリ・デレナランギ、BK(バックス)は2019年ワールドカップ出場のSH(スクラムハーフ)フランク・ロマニ、ニュージーランド生まれのSO(スタンドオフ)ケイリブ・マンツのハーフ団、東芝ブレイブルーパス東京のSOリッチー・モーウンガの甥で、20歳のFB(フルバック)アイサイア・アームストロングラヴラらが引き続き先発した。
一方、初戦でカナダ代表に28-15と勝ったものの、先週、2戦目熊谷で日本代表に24-41で敗れ、プールB2位となった「イーグルス」こと、アメリカ代表。スコット・ローレンスHCは日本代表戦からFW3名、BK3名の先発を変更した。
WTBアウグスバーガーがゲームキャプテン
HO(フッカー)ケペリー・ピフェレッティが控えに回り、先週デビューした元アイルランドU20代表のショーン・マクナルティーが先発に上がった。また、キャプテンのLO(ロック)グレッグ・ピーターソンがベンチスタートとなり、45キャップのベテランWTB(ウィング)ネイト・オウグスバーガーが、ゲームキャプテンを務めた。FB(フルバック)は初キャップとなるトビー・フリッカーが入った。
フィジー代表のハカである「シンビ」
3681人のファンが集い、試合はフィジー代表のハカである「シンビ」が披露された後、午後7:05に秩父宮ラグビー場でキックオフされた。試合は準決勝にふさわしい熱戦となった。
先手を取ったのは、世界ランキングでは格下のアメリカ代表だった。ディフェンスでしっかりと前に出てタックル、相手陣に攻め込むと、前半4分、SOクリス・マッティーナが、PG(ペナルティゴール)を決めて3点を先制する。イーグルスは17分にもPGのチャンスを得たが、これを決めることはできなかった。
だが、徐々に自力で勝るフィジー代表がペースを握りはじめる。スクラムで優位に立ち、20分、ゴール前のモールでは仕留め切ることはできなかったが、23分、SOケイリブ・マンツのPGで、3-3の同点に追いついた。
フィジー代表の若きFBアームストロング ラヴラ
さらに26分、FBアームストロングラヴラのキックで相手陣に攻め込むと、ラインアウトは相手に取られたが、ゴールライン上でカウンターラックに成功し、最後はNO8(ナンバーエイト)エリア・カナカイヴァタが押さえてトライ。ゴールも決まり10-3とフィジー代表が勝ち越した。
しかし、その後はアメリカ代表が再びディフェンスで粘りを見せて、10-3で試合を折り返し、後半に入っても、引き続き拮抗した展開が続いた。
オブロードパスでトライをアシストするSHロマニ
それでも地力で上回るフィジー代表は11分、ラインアウトからパスを繋いで前進し、WTBヴアテ・カラワレヴが右サイドをゲインし、最後はSHロマニのオフロードパスを受けたNO8カナカイヴァタが2つ目のトライを挙げ、17-3とリードを広げた。
だが、その直後の14分、キャプテンのHOテヴィタ・イカニヴェレが危険なプレーでシンビンとなり、フィジー代表は数的不利な状態になる。それでも余裕が出てきたフィジー代表は、自陣からボールを大きく動かし、最後はFW(フォワード)、BK(バックス)一体となってつないで、20分にSHロマニが右端にトライを挙げて、22-3と突き放した。
終盤、アメリカは相手ゴール前でチャンスを得たものの、フィジーの激しいディフェンスに阻まれ、試合はそのままノーサイドを迎えた。3トライを挙げたフィジー代表が、22-3でアメリカ代表を下して、決勝に進出。6度目のPNC優勝に王手をかけた。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)は2トライを挙げた、NO8カナカイヴァタが選出された。
パシフィックネーションズカップ 2024 準決勝
【ハイライト動画】フィジー vs. アメリカ|熱戦を制したフィジー代表が決勝進出
善戦したものの決定力不足が響き敗戦したアメリカ代表のスコット・ローレンスHCは「試合中に勢いが出た時があっても、それが止まってしまった。それでも我々の規律には満足している」。
「フィジー代表はエキサイティングな攻撃をするチームだが、ディフェンス面ではプレッシャーをかけ続けることができたと思う。大きなポイントは、自分たちのやるべきこと、セットプレーのスピードを正しくすること、そして一貫して前線で身体を張ることが重要だった」と振り返った。
序盤はアメリカ代表がディフェンスでプレッシャーをかけた
ゲームキャプテンを務めたWTBアウグスバーガーも、「私たちは相手のフィジカルに応えたかった。この試合に臨むにあたって、それは我々の柱のひとつだった。だから、時にはショットを決めたり、ノックオンを誘ったり、相手の攻撃を封じたりすることができたが、後半はそれができなくなってしまった」。
「私たちはベンチがエネルギーを発揮することに重点を置いている。彼らが入って試合のテンポを上げなければならない。だから私は彼らを誇りに思う。これからもハードワークを続けるしかない」と前を向いた。
トライは奪えなかったが善戦したアメリカ代表
決勝に進出したフィジー代表のミック・バーンHCは、「自分たちの立ち上がりは良くなかった。でも、アメリカ代表のプレーは素晴らしかった。彼らはフィジカルで、私たちに大きなプレッシャーをかけ、プレーをさせてくれなかった」。
「テストマッチで、しかもトーナメントの準決勝というものは、このような腕相撲みたいな試合になるのも当然。スーパーラグビーから一貫してベストなスクラムを組もうと言い続けてきたが、そこは見せられた」と胸を張った。
フィジー代表HOイカニヴェレ主将
キャプテンのHOテヴィタ・イカニヴェレは「やはり、セミファイナルの戦いは簡単ではない。私自身がイエローカードをもらってしまったが、チームメイトたちのファイトのおかげで試合に勝つことができた。経験の浅いチームだが、今日の戦いを次の決勝に生かしたい」と先を見据えた。
フィジー代表は9月21日に大阪・花園ラグビー場で、同じく準決勝でサモアを破った日本代表と優勝をかけて戦う。敗れたアメリカ代表も同日、準決勝に敗れたサモアと3位決定戦を行う。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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