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新日鉄釜石はなぜ負けなかったのか。結論。貫いたからだ。
かつての取材をもとに解説したい。発言はすべて筆者が直接、当事者に聞いた内容である。
最初に釜石ラグビーの黄金期へ至る歩みについて。1995年、市口順亮(敬称略、以下同)に教えてもらった。往時の京都大学ナンバー8で製鐵所へは技術職で入社、練習理論構築や高校生獲得など現役引退後も長くラグビー部を支えた。
強化を始めた1965年度~社会人大会初制覇の1970年度までの「第1期」は「最後までパスで抜く」展開重視のチームを志した。「高校卒が主体。リーダーの大学卒は年に2名強採用」の大方針に「走る」は合致した。当時の社会人ラグビーでは異質である。
しかし70年度の日本選手権、学生王者の早稲田大学に16―30で敗れる。もっと軽量でもっと集散のよい相手に長所をそがれた。
「このままでは限界がある」。盛んな議論が部内で交わされて「大型化」の方針を打ち立てる。合言葉は「8―8艦隊」。当時は巨漢のサイズ、FWの平均180cm、85kgを目標とした。
すると何が起こるか。1974年ごろに押せず、走れもしないチームができた。もういっぺん議論。「元に戻すか」。やはり「続けよう」。これがよかった。
2シーズン後に貫徹は芽を吹く。76年度の日本選手権、早稲田をこんどは27―12で破る。FWの平均サイズは「180cm・84kg」に達していた。
「(70年度に)早稲田に負けていなかったら7連覇はなかった。スクラムは支えるだけという展開重視を続けたでしょう」(市口)
連覇のチームの日常の練習はフィールド30周のランで始まる。V5当時の岩手日報の担当記者、湯田保道は「夕方5時半からの練習。2時間半のうち2時間はグラウンドのまわりをクルックルッ走ってばかり。でも見ていて退屈しないんです」と話してくれた。
高く重くなっても低く軽いころのレベルで走り込む。そのうえでウエイトトレーニングに励み、パスのキャッチに特化するようなスキル分解のドリル、ポジションの隔たりのない抜き合いなど、中央を離れた土地だからこその「凝り固まらない」独自の練習を創造した。タックルなしでスペースを攻略し合う「タッチフットボール」は市口によれば「1967年には始めていた」。釜石の選手はみなタイミングをずらしてのパスや転がるボールをすくい上げるのが上手だった。
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