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昨年度優勝の天理大学、関西の高校出身者が多い
3月下旬は埼玉・熊谷ラグビー場で全国高校選抜大会が開かれていたが、4月に入り、新入生が加わった各大学で新チームが始動している。そこで東西の強豪大学において、どの高校出身者が多いか調べてみた(数字は2020年度を参照)。
まずは2020年度の大学選手権で初優勝を飾った天理大学。選手だけで160人近くと大所帯だが、最も多かったのはやはり、付属の天理高校(奈良)出身者が36人と、全体の約4分の1を占めていた。
2番目に多いのは大阪の強豪、常翔学園が8人、さらに大阪出身の選手も多い石見智翠館(島根)から7人、光泉カトリック(滋賀)出身者が6人だった。
さらに大阪商業大学高校、大阪産業大学附属高校、金光藤蔭高校、日新高校と大阪の高校、そして日本航空高校石川(石川)の5校が4人と続いた。奈良にある大学ということで附属高校出身と近畿の強豪高校出身が多い。
来る者拒まずということで、花園に出場していない高校出身者も多い一方、関東の以東の高校出身者が少ないのが特徴だ。天理高校からは他の大学に進学する選手もおり、選手の自主性に任せているという。
次に京都にある「関西の雄」、同志社大学を見てみよう。選手120名を超える中、同志社香里高校(大阪)出身者が23名、同志社高校(京都)出身者が19名と計42名で3分の1にあたる。付属の両高校とも強豪校だけに大学に多くの選手を輩出している。
また、それに続くのが東海大学付属大阪仰星高校(大阪)の9人、東福岡高校(福岡)の6人、長崎北陽台高校(長崎)の5人、4人が尾道高校(広島)、國學院大學久我山高校(東京)、大阪朝鮮高級学校(大阪)、小倉高校(福岡)。3人には桐蔭学園高校(神奈川)、大分舞鶴高校(大分)、磐城高校(福島)、筑紫高校(福岡)などが続く。
天理大学同様に近畿の強豪校出身も多いが、同志社大学には九州、関東といった他の地区の出身者もおり、ラグビー強豪校であると同時に、進学校出身の選手が多いのが特徴と言えよう。
昨年度の早稲田主将の丸尾は早稲田実業出身
続いて関東の大学、まずは昨年度準優勝で、2019年度の大学王者の早稲田大学が所属する関東大学対抗戦を見てみよう。
早稲田大学には選手は100名以上おり、近年、東京の強豪校となった早稲田実業高校出身者が22人で1位、早稲田大学高等学院(通称:早大学院/東京)出身者が11名、早稲田大学本庄高等学院(埼玉)出身者が10名、さらに早稲田摂陵高校(大阪)出身者も3人おり、系列校出身者だけで46名と全体の4割ほどとなっているのが特徴だ。「高・大連携」で強化が進んでいる証の1つだろう。
また、國學院久我山出身の9人、桐蔭学園出身の6人、東福岡出身の5人、函館ラ・サール高校(北海道)、修猷館高校(福岡)出身が4人となった。東京にある難関大学ということで、関東の高校や進学校が多くなった。また、関西では東海大大阪仰星が3人でトップと、関西出身者が少ないのも特徴の1つであろう。
続いて2018年度に大学選手権で優勝し、昨年度の関東対抗戦で優勝した明治大学だ。選手は100名ほどおり、やはりトップには明治大学付属中野高校(東京)出身者が10人、明治大学付属中野八王子高校(東京)出身者も4人と14人は系列校出身者だが、その割合は15%ほどとさほど多くない。
続いて、桐蔭学園出身者が9人、報徳学園高校(兵庫)と國學院久我山出身者が6人、國學院大學栃木高校(栃木)と東福岡出身者が4人、常翔学園、京都成章高校(京都)、石見智翠館、秋田工業高校(秋田)出身者の3人と続く。
明治大学は全国の強豪校からまんべんなく進学していることがわかる。ただ、東京にある大学ということで、やはり桐蔭学園や國學院久我山、國學院栃木と関東の強豪高校出身者も多い。また、常翔学園、秋田工業は昔から多くの選手を明治大学に輩出しており、報徳学園が6人と多いのは、田中澄憲監督の出身校であることも関係しているだろう。
慶應の副将になったFL山本は塾高出身
昨年度の対抗戦で3位だった慶應義塾大学は選手が110名ほどいるが、慶應義塾高校(神奈川)出身者が58名で最多。慶應義塾ニューヨーク学院(アメリカ)が7人、慶應義塾志木高校(埼玉)が3人で、付属高出身者だけで68名と半数以上と、他の大学と比べても圧倒的に多い数字だ。特に大学の近くにある慶應義塾高校との「高・大連携」で強化を進めている。
2位には大学と同じ神奈川県の強豪である桐蔭学園出身者が8名、國學院久我山出身者が7人、関東の強豪校である茗渓学園高校(茨城)と本郷高校(東京)出身者が3人となった。いずれにせよ系列校と、桐蔭学園、國學院久我山の出身者で計83名と、全体の約4分の3を占めている。
帝京大は関東の大学だが近畿出身者が多い。写真はNO8奥井
昨年度の対抗戦4位で、2017年度まで大学選手権で9連覇を達成した帝京大学は選手が140名ほど。最も多いのは大阪桐蔭高校(大阪)と東京朝鮮中高級学校(東京)出身者で9人だった。
続いて、京都成章出身者が8人、常翔学園出身者が7人、大阪朝鮮出身者は6人、長崎北陽台、御所実業高校(奈良)、京都工学院高校(旧伏見工業高校/京都)の5人と続く。いずれにせよ、近畿の強豪校出身者が多いのが特徴だ。
昨年度の対抗戦5位で、国立大学でもある筑波大学も見てみよう。部員数は80名を超える程度と、強豪大学の中では比較的少ない。最も多いのはOBの元日本代表WTB福岡堅樹の母校でもある進学校の福岡高校(福岡)出身者で10名だった。続いて、桐蔭学園、大分上野丘高校(大分)、中部大学春日丘高校(愛知)、旭野高校(愛知)、浦和高校(埼玉)、明善高校(福岡)出身者の3人とラグビー強豪校以上に、進学校出身者が多いのが特徴だ。
昨年度東海大の吉田主将は仰星出身
続いて関東大学リーグ戦。2020年度、リーグ戦3連覇を達成した東海大学は、選手の人数は最多で160名以上となった。最も多いのは東海大学付属相模高校(神奈川)出身で29名、2位東海大大阪仰星出身が12名、他にも東海大学付属福岡高校(福岡)出身者が4名、東海大学付属甲府高校(山梨)出身者が3人と、系列高だけで約3割を占める。
続くのは東京高校(東京)出身の6人、筑紫出身の5人、東福岡、青森北高校(青森)、仙台育英学園高校(宮城)、京都工学院出身者が4人と続く。神奈川にある東海大学には関東出身者が比較的多いが、東北や北海道、九州と全国の強豪校からまんべんなく進学している。
最後に2020年度のリーグ戦2位だった日本大学だ。選手の人数は110人を超えるが、最も多いのは付属の日本大学高校(神奈川)と、目黒学院高校(東京)出身が8人だった。続くのは東京高校と大阪朝鮮出身の5人、國學院栃木と大分東明高校(大分)出身の4人となった。
関東の高校を中心に全国各地から進学しているが、近年、再び強くなったチームのため、花園常連校出身者はいるものの、高校の優勝常連の強豪校から進学している選手はさほど多くない。ただ、リーグ戦上位で戦っている期間が長くなるにつれて強豪校の出身者も増えていくはずだ。
すでに4月を前に2月、3月頃から各大学は始動している。2020年度も多くの1年生が躍動したが、今年も強豪高校から進学した若い力が、大学ラグビーシーンを盛り上げるはずだ。もちろん低学年時代に力をつけていた3~4年生の活躍にも期待したい。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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