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ラグビー コラム 2020年5月19日

アピール機会を失った高校3年生を救う『#ラグビーを止めるな2020』プロジェクト 発起人・野澤武史さんに聞く

元トップリーガーの今 by 多羅 正崇
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次のステージでもラグビーを続けたい。しかし新型コロナウイルスの影響で各種大会が中止となり、アピールができなくなってしまった――。

そんな高校3年生の進路支援をするインターネット活動『#ラグビーを止めるな2020』が、5月中旬よりスタートしている。

監督らに選手のプレー動画を作成してもらい、「#ラグビーを止めるな2020」のタグ付けをしたSNS投稿を通じ、大学・トップリーグチームのリクルーターの目に止まるようにする。失われていたアピール機会をSNS上に創出した格好だ。

反響は大きく、プロジェクト公表直後から監督・選手による動画投稿が相次いだ。いまツイッターの「#ラグビーを止めるな2020」の投稿は、運命を切り開きたいラガーマンの情熱で溢れている。

プロジェクトの発起人は、J SPORTSのラグビー解説者としてもお馴染みの野澤武史さん。慶應高(神奈川)-慶大-神戸製鋼と歩んだ元日本代表フランカーだ。

現役引退後は日本ラグビー協会のリソースコーチとなり、長らくタレント発掘活動に従事。毎年5月から約2か月半は、全国9ブロックのトレセンを回り地道に才能を発掘してきた。

U17日本代表ではヘッドコーチなども経験した理論派であり、(株)山川出版社 代表取締役副社長という経営者の顔も持つ。

発端は問い合わせの急増だった。高校ラグビーは新型コロナウイルスの影響で春の選抜大会、夏の7人制大会を含めて各種大会が中止となり、リクルーター側も選手を見る機会を失っていた。野澤さんが言う。

「きっかけは大学のリクルーターから『良い選手はいないか』と聞かれることが増えたことです。『もっと困っている人がいるのでは』と考えました」

「すでに知られている強豪校の有名選手はいいですが、花園(全国高校ラグビー大会)に届かない学校の選手などはアピールができず、推薦も決まらない。このままでは日本ラグビー界全体の損失になると思い、高校3年生とリクルーターを繋げるプロジェクトを始めました」

反響の大きさに野澤さんも驚く。プレー動画を投稿した監督から「リクルーターからコンタクトがあった」と吉報も届いているという。

投稿動画の中にはタレント発掘の専門家である野澤さんですら初見の選手もいるという。

「投稿された動画を見て『こんな選手がいたんだ』と驚いています。リクルーターはすべての選手を見られるわけではありません。私も毎年5、6、7月はすべての週末を使って全国を回ってきましたが、それでも見切れないのが実情です」

だからプレー動画の投稿は、タレント発掘の大きな手助けになる。

今回のプロジェクトをきっかけに、今後のスカウト活動に地殻変動が起きるかもしれない。ステップアップしたい選手は自身のプレー動画を持っておくことが常識となり、採用担当者がそのチェックが活動の一環になる可能性もある。

「個人がアピールする時代です。自身でプレー動画を持っておくことは手数が増えることにもなるでしょう。今後はフロントローのスクラム動画であったり、キック動画であったりをアップする人が出てくるかもしれませんね」

今回のプロジェクトはバスケットボール界とも連動している。

野澤さんの人脈で、同様の取り組みを模索していたバスケ関係者との協働が実現。バスケ界は「#バスケを止めるな2020」のハッシュタグでのSNS投稿を募集する。

「苦しい状況は他の競技団体も同じ。最終的には『ラグビーを止めるな』が『スポーツを止めるな』に繋がっていけばいいですね」

まだスタートしたばかりの『#ラグビーを止めるな2020』プロジェクト。高校3年生だけでなくトップリーグ入りを希望する社会人選手なども動画投稿を始めており、今後の展開が見逃せない。

いずれにせよ、ラグビーに懸ける若者の情熱が『#ラグビーを止めるな2020』をきっかけに噴き出し、大きなうねりを生み出そうとしていることは事実だろう。

文・写真 多羅正崇


■日本ラグビー協会リソースコーチ 野澤武史さんが注目する高校3年生


大阪朝鮮/NO8金 勇哲 「突破力はピカイチ」

東海大大阪仰星/WTB大畑 亮太 「抜群のスピード」

東福岡/WTB坂本 公平 「覚醒の感あり」
多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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