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新型コロナウイルスの対応に追われているのはラグビー界も例外ではないが、一方で、未来の日本ラグビーを明るく照らすための計画も進行している。1月28日、日本最高峰のジャパンラグビートップリーグに代わって、2021年秋に開幕予定の新リーグ骨子が発表された。その後、新リーグ法人準備室を軸に準備が進められ、2月28日、各チームへの第2回目の説明会が開催された。新型コロナウイルスに配慮し、スカイプで各チームをつないで行われた説明会の内容について、準備室長の谷口真由美さん、副室長の瓜生靖治さんに話を伺った。取材もスカイプで実施した。
新リーグ設立の目的は、大きくは2つ 国内リーグの発展と日本代表強化
第1回目の説明会では新リーグの骨子が明らかにされた。各チームに求められるのは次の5項目だ。「運営機能、事業機能を持つ」、「チーム名に地域名を入れる」、「ホームエリアを決める」、「15,000人収容のスタジアムを確保する」、「事業運営担当者を各分野に設置する」。第2回説明会では、新リーグの方針、概要、参入要件の具体的な内容がチームに伝えられた。当初、新リーグへの参入要件に同意するかどうかの意思表明期限を3月末としていたが、4月末に変更した。
「新リーグ設立の目的は、大きく2つあります。まずは、【国内リーグを発展させて世界との競争に打ち勝つ事】。国内でチーム数が減っていくのは損失でしかありません。だから、1チームも減らさない。増えるのは歓迎です。トップチームが普及を行うことで、すそ野を広げ、ファンの拡大を図ります。もう一つは、【日本代表との共存共栄】です。公益財団法人日本ラグビーフットボール協会は日本代表をしっかり見ないといけないし、新リーグのための新しい公益法人が新リーグを見る。それぞれの法人が日本ラグビーにおける大きな両輪です。それぞれがより専門性を持った事業を進めていくということです」
難しい問題が起きたときは、必ずこの2つの目的に立ち返ろうということだ。新リーグの概要説明では、日本ラグビーフットボール協会(JRFU)の森重隆会長のメッセージが紹介された。「すべてのホストエリアにラグビースタジアムと、アカデミーからトップの練習施設を持ち、ホストゲームがあるときには、ホストスタジアムがビジターファンと共に埋め尽くされ、試合後には選手もファンもノーサイドの精神で交流を深めていく。(中略)ラグビーはラグビーの方法で、日本に愛され、世界に尊敬される、価値を創造してまいります。 どうぞ我々と一緒に、スクラムを組んで、パスを繋ぎながら、並走してくださいますようお願い申し上げます」という言葉があった。
このメッセージについて瓜生靖治・副室長は説明する。「ラグビー界の言葉として浸透させたいのが、ホーム&アウェイではなく、ホスト&ビジターです。森会長のメッセージのなかにも、ホストエリア、ビジターファンという言葉を使っていただいています。JRFUの計画として、もう一度ラグビーワールドカップを日本に招致すること、そこで優勝できるような日本代表にしていこうという目標があり、これをJRFUと新リーグで一緒にやっていきましょうというのが、ミッションになります」
新リーグはカンパニーからソーシャルへ チームの社会的価値を高め、地域を魅力的に
現在のトップリーグは企業スポーツだが、新リーグは社会のチームに進化させようとしている。「カンパニーからソーシャルへ。チームを企業資産だけではなく、社会資産にしていこうということです」(谷口室長)。そのために、ファン、ホストエリアの住民、自治体、スポンサーなどに支持されるチーム作り、ブランディングが必要になる。「新リーグのチームには、ラグビー領域と非ラグビー領域での取り組みが出てきます。ラグビー領域はホストエリアのスタジアムも満員にすること、ホストエリアでラグビーに携わる人の育成をするなどがあります。非ラグビー領域は、ホストエリアの社会課題の解決にチームが関わるということです。例をあげれば、いじめをなくすためにラグビーに何ができるか、というようなことです。ラグビーチームがあることで、いじめがなくなる、社会課題が解決されるイメージです」
ラグビーチームがあることで、その地域が魅力的になり、誰もが訪れたい場所になる。ホストエリアでのチームの社会的価値を高め、ホストエリアのブランドを向上させる。そうすることで、チームを所有する新たな価値も産まれてくるということだ。参入要件の骨子は、1月28日に発表されたものと変わらないが、今回は競技、施設、組織、法務、財務面で詳細な規定などが示された。細部は各チームの代表者が参加しての小委員会で認識を合わせる。また新リーグを運営する準備として、チケット販売、試合運営、選手育成などの研修会も行っていく。
「1チームでも減ってしまうと普及の観点、日本ラグビーの発展にはマイナスになってしまいます。なんとか、皆さんで一斉に公益法人の会員になっていただいて、スタートできるように模索しているところです」(谷口室長)。現在、準備室が新リーグ加入を想定しているのは、最低25チーム。トップリーグ16チーム、トップチャレンジ8チームに加え、昨季、トップチャレンジの入れ替え戦で清水建設ブルーシャークスに敗れた中国電力レッドレグリオンズも含まれる。加えて、海外のプロチームが参入に手を挙げた場合も、要件が整っていれば可能性はあり、スーパーラグビーを今季限りで除外されるサンウルブズが加入する可能性もゼロではない。
「参入要件をすべて満たすのが難しいチームがでてくる場合を想定して、社会人リーグ(仮称)を設けようかと思っています。そうすることで、どのチームも取りこぼすことなく、進めていきたいです」(谷口室長)。「ラグビーはJリーグやBリーグができた時とは状況が違い、あまりにも各チームの準備期間が少なすぎる。そのための期間を設け、チーム強化は続けながらも、参戦の準備ができたら加入していただくというプロセスをつくりたいのです」(瓜生副室長)。
ディビジョン1、ディビジョン2の下に社会人リーグを置き、この下に、現行のトップイースト、ウェスト、キュウシュウが続く形をイメージしているようだ。各チームの意見を取り入れながら、会社のチームから社会的価値のあるチームへ移行する。日本ラグビーの新たな取り組みが着実に動き始めている。新リーグは2021年秋の開幕を目指す。今年の4月末、参加要件に同意するチームが出そろったところで、より具体的なリーグ像が浮かび上がることになる。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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