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J SPORTSでラグビーを見ると本当にキリがない(笑)
──J SPORTSはご覧になっていますか。
「もう3年くらいですかね。子供たちがよく見ているんですよ。3人いるのですが、小学4年、小学1年、年中という順番です。一番上はラグビーをしていませんが、僕が早稲田大学卒業なのと、弟がサントリーフーズでプレーしていたので、サントリーと早稲田が大好きなんです。弟2人は、みなとラグビースクールに通っています。ニュージーランド代表が好きで、オールブラックスになりたいって言っていますね(笑)」
──2015年のラグビーワールドカップ(RWC)がきっかけですか。
「そうなりますね。その前からラグビーは好きでしたけど、J SPORTSに入ると、キリがなくなると思って意図的に避けていました。でも日本代表の活躍があり、サンウルブスがスーパーラグビーに参戦して、火がついてしまいました。トップリーグ、大学ラグビーも見てしまうので、もう本当にキリがない。サニックスのワールドラグビーユース交流大会のハイライト番組を見出すと、もう泥沼です(笑)。この選手いいなぁ、なんて。RWCも全部見ちゃうだろうなぁ」
──RWC日本大会のチケットはもうゲットしていますか。
「スコットランド戦以外は日本代表戦すべてチケットをとりました。プール戦の南アフリカ対ニュージーランドは私の父がどうしても見たいと言ったので、申し込んだら当たりました。父はラグビーをしていたわけではないのですが、これだけは見たいと言うのです。弟は準決勝が当たり、決勝は僕も当たって。もう仕事になりませんね(笑)」
高校ラグビー部キャプテン、大学時代のAD経験が今に生きている
──ラグビーとの出会いを聞かせていただけますか。
「高校から始めました。入口はドラマのスクールウォーズです。小学生の頃、再放送で見たんです。野球少年だったのですが、ラグビーは凄いと思うようになりました。僕は千葉県出身です。地元にラグビースクールがなく、すぐにはできなかったのですが、当時、千葉東高校が花園(全国高校大会)に出たことがあって、文武両道でカッコ良いと思いました。千葉東に入学したいと思って中学生活を送りましたね」
──高校でラグビーを始めることに決めて勉強したわけですね。
「千葉県は野球が盛んで、僕の同学年に高橋由伸がいたのです。小学生の頃に試合をしたことがあるのですが、実力がずば抜けていました。その頃から、彼は六大学に行き、プロ野球選手になるだろうと言われていて、その通りになりました。野球は無理だと思いました(笑)」
──ラグビーと勉強を両立したいと考えたのはなぜですか。
「それがカッコ良いと思っていたからです。私の両親は中学の教師で、自分の教え子がスポーツと勉強を両立し、頑張っている話をしてくれるんです。それを聞いてカッコ良いと思っていました」
──千葉東高校に入学し、ラグビー部に入ってみて、いかがでしたか。
「入部の儀式で、先輩がたくさんボールを蹴り、革のボールを奪った選手がレギュラーになれるというのがあったんです。当時はゴムのボールが出始めた頃でゴムと革が混合していました。僕は必死で革のボールを取りました。でも、元々兄が在籍していた同期たちはゴムボールを拾いに行っていた。罠だったんです。革のボールを取った者は、毎日、そのボールを磨かなくてはいけなかったんです(笑)。そんな下積み時代もありましたね。ラグビー未経験者が多かったのですが、全国大会出場を目指し、厳しい部活でした」
──花園に出場することはできたのですか。
「1年生の時は、県立千葉高校が花園に出ました。2年生の時は、流経大柏高校が代表になり、全国ベスト8まで行きました。3年生の春は県の決勝まで勝ち進んだのですが、流経大柏に負けました。関東大会に出場したのはいい思い出です。冬の全国大会予選は打倒・流経大柏で頑張ったのですが、その前に準決勝で市立稲毛高校に負けて終わりましたね」
──ポジションはどこでしたか。
「2番(HO)と6番(FL)でした。身長190cmのLOがいて、彼がラインアウトを取ってひたすらモールを押すラグビーでした」
──進学校によくあるタイプですね。
「そうそう、一点突破でいくタイプですよ」
──3年間のラグビー経験で得たものはどんなことですか。
「キャプテンの経験です。千葉東は1年生のときに指名があるんです。3年生でチームのキャプテンになり学年のリーダーになる。そういうカルチャーがありました。同期が最初は25名くらい。3年生のときは、全部員で50名くらいだったと思います。練習メニューもキャプテンが考えていて、リーダーとしての経験は今に生きていますね。」
──大学では続けなかったのですね。
「早稲田大学のラグビー部にはスター選手も多いですし、自分がここでやる必要はないと思ったんです。高校でラグビーを始めたのも、ラグビーなら高校から始める選手が多いし、千葉東には進学校でも勝てるメソッドがあった。そういうものを学びたいという気持ちがありました。自分の強みをどう生かすかということに興味があったのです。いま思えば、その頃から起業家志向だったのでしょうね。だから、早稲田大学では、リスの会というラグビーサークルに入りました」
──何か印象的なことはありますか。
「先輩にアルバイトを紹介してもらって、NHKのADの仕事を始めました。『ためしてガッテン』(現在はガッテン!)という番組が始まった頃で、そのアルバイトが面白すぎて、リスの会をやめて、バイトに時間を割くようになりました」
──何がそんなに面白かったのですか。
「バイトだったのですが、決定権を持つ仕事だったのです。キャストを集める仕事もあって、大学の後輩や仲間をリクルーティングして、ロケの手伝いや出演もしてもらった。バイトの組織を作りました。いまだにそれは続いているようです。僕も屋久島に一週間ロケに行ったり、唾液の実験で胃カメラを飲んだり、いろいろやりました。その時期にメディアの視点を理解することができたのは大きかったです。テレビ映えする商材の作り方など、テレビが何を欲しているか、どういう画を撮らなければいけないのか、それが分かるようになりました。今の仕事を始めることは想定していなくて、目の前のことをやっているうちに、すべてがつながっていたということなのですが」
──早稲田大学の法学部で学ばれたのはなぜですか。
「弁護士になりたいと思っていたからです。でも周囲を見ていると、自分が弁護士に向いていないと感じました。僕は事件の判例を読み込むと、なぜこの犯人はそんなことをしたのかという裏側が気になるのです。方向転換し、メディア系に行くことにしました。当時は超就職氷河期でした。僕が一番行きたかったのはNHKエンタープライズだったのですが、最終面接で落ちて、最終的にはNTT東日本に就職しました」
アンストラクチャーの状況を秩序化していくことに意味がある
──そこから転職も経験されたようですが、起業を考えたのは、いつ頃なのですか。
「フォトクリエイトという社員10名くらいの会社に転職し、IPO(新規上場)をしたときに自分の役割はひとつ終わったと思いました。いろんな新規事業を立ち上げたので、自分でも何かできるのではないかと思いはじめたのです」
──起業ありきで、何をするか考えたということですか。
「そうです。ちょうど6年前のことです。いろんなビジネスを研究しました。自分の強みを生かせて、大企業はなかなかできなくて、海外に成功モデルがある、そんなジャンルがないかと考えました。いろんな考えが浮かんでは、それを自分がやる意味があるのかと自問しました。そんなとき、空きスペースを活用するのはどうかと、ふと思い浮かんだんです」
──具体的にはどういうことですか。
「自分たちの会社の空いている会議室など、スペースを貸すのです。人口減少でこれから空きスペースはたくさん出てくる。これは面白いと思いました」
──重松さんの強みは何ですか。
「物件の開拓は営業力が必要です。僕はB to B(会社対会社)の営業が強かった。テクノロジーだけでできるビジネスであれば僕は必要ありません。リアルとテクノロジーの掛け合わせがあることが一点。もう一つはメディア映えするビジネスだと思ったのです。たとえば、空いている古民家で会議をする、お化け屋敷、結婚式場、映画館、野球場も借りることができる。これは画になると思いました。C to C(個人対個人)のビジネスは時間がかかりますが、PRで盛り上げることができると感じました。これは自分に向いているし、使命感に燃えました。メディアでは話題にもなりました。しかし、リアルに借りてくれるまでは時間がかかりました。ようやく回り始めて形になってきた感じですね」
──ラグビー場を貸すこともあるのですか。
「まだ、ありませんが、ラグビーワールドカップで釜石にスタジアムができますよね。そこをその後貸し出すのはどうかと。大会のレガシーにもなりますから。バスケットボールコートはすごく多くて、借り手もたくさんいます。ラグビー場も早くやりたいですね」
──ラグビーというスポーツを経験したことが、今に生きているところはありますか。
「ラグビーでは、監督、コーチはグラウンドには降りられないのですが、私も基本的には選手に任せるマネージメントをしています。細かく指示を出すことはあまりしません。いろんなタイプの人が適材適所で活躍できるよう、目標設定をする。そこに美学を感じるところはありますね」
──ラグビーはアンストラクチャー(組織化されていない状況)が多いですからね。
「J SPORTSで解説をしている野澤武史さんの名言で、アンストラクチャーをストラクチャー化する、というものがありますが、アンストラクチャーの状況を秩序化していくことに意味があると思っています。僕は、アンストラクチャーなものがあればあるほど嬉しい。そこをストラクチャー化して行くのがスタートアップであり、まさに僕の人生だと、この言葉にはグっと来ました」
──まさに、コーチですね。
「ゆくゆくは、自分がいなくても組織が動くのが理想です」
──今後の目標を聞かせてください。
「水道、電話、インターネットなどように、使っていることも忘れるくらい、当たり前のサービス、インフラにしていきたいです」
──ラグビーへのかかわり方での目標はありますか。
「いろいろ言いたいこともありますが(笑)、自分でできる範囲でお手伝いしたいです。個人的には、いつかラグビーのスポンサーもできるようになりたいですね」
株式会社スペースマーケット 代表取締役CEO 重松 大輔
1976年生まれ。千葉東高校、早稲田大学卒。
NTT東日本入社後、株式会社フォトクリエイトに参画し、マザーズ上場を経験。
2014年、株式会社スペースマーケットを創業。その後一般社団法人シェアリングエコノミー協会も設立し代表理事に就任。
株式会社スペースマーケット
あらゆる場所を1時間単位で貸し借りできるサービスを運営。掲載スペース数は現在11,000件を超え、時間貸しプラットフォームサービスの中では日本最大。レンタルスペースのジャンルや利用目的は多岐にわたる。
https://www.spacemarket.com/
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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